井上芳雄、奈緒、上白石萌歌ら豪華キャストが集結。『大地の子』製作発表レポート!
2026年2月26日(木)より明治座にて『大地の子』が上演される。
原作は 1987 年から「月刊文藝春秋」にて連載され、「白い巨塔」や「沈まぬ太陽」など数々の大作を世に出してきた山崎豊子による同名小説。山崎豊子が現代いまに問う-魂の感動巨編が豪華スタッフ・キャストによって遂に舞台化。
脚本は小劇場から大劇場まで幅広く担うマキノノゾミ、演出は数多の作品を世に産み出しきた、日本を代表する演出家・栗山民也という強力タッグで届けられる。主人公となる陸一心役は、数々の東宝ミュージカル作品での高い歌唱力と演技力で当代一の人気を誇る井上芳雄。
主人公の妹である張玉花(あつ子)役には、NHK 連続テレビ小説「半分、青い。」の好演で脚光を浴び、繊細かつ丁寧な演技で、映像や舞台で高く評価される奈緒。主人公の妻となる江月梅(チャン・ユエメイ)役には、第7回「東宝シンデレラ」オーディションにてグランプリに選ばれ、その後の映像での活躍はもちろん、演出家・栗山民也も舞台での演技を認める上白石萌歌。
路頭に迷う主人公を引き取る中国人教師・陸徳志(ルー・トウチ)役は、長く舞台で活躍し、昨年第31回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した山西惇。そして、中国に残した家族に自責の念を抱え続ける松本耕次役には、出演するだけで物語にリアリティをあたえ、独特の存在感が高く評価される益岡徹が務める。
今回は、井上芳雄、奈緒、上白石萌歌、山西惇、益岡徹が登壇した製作発表でのコメントをお届けする。
井上芳雄が演出・栗山民也の挨拶を代読

演出:栗山民也 ご挨拶
戦争によってかけがえのない命を奪われた人々に、もう一度言葉を送り、全身を与える。これが演劇の一つの仕事だと、ある劇作家の強靭な姿勢から教えられたことがある。生者と死者は、いつも重なり合う。そのことが私の中に「記憶」という大切な言葉となって強くへばり付き、稽古場でのあらゆる事象と出会うたびに、それが今を映し出す「記憶の再生装置」なのだと考えるようになった。」
この山崎豊子さんの「大地の子」を随分と前に読んだとき、広く限りなく拡がる黄色の大地の上を、幾万人もの人たちが並んで歩む姿が、生まれては消える影のような運命の残像に見えた。その歴史をどこまでも深掘りした文章の奥には、その時代の陰惨ないくつもの光景が刻まれている。満蒙開拓団のリアルな歴史が、一人の青年を通して明らかにされていくのだが、お国のためという大義のもと、それは国を上げて推し進められた開拓という占領政策であった。そして、棄てられていった。
写真と文章で綴る江成常夫さんの「シャオハイの満州」という、旧満州の姿を写し出した記録の本が、わたしの机の上にある。この物語を考える中で、何度もページを開き、そこに写された残留孤児たちの顔を見つめる。今、何を語り掛けようとしているのか。そのぼんやりとどこか漂うような目の奥から、こちらに向かって厳しく無数の感情で問いかけてくる。
―誰も置き去りにしてはいけない。誰もが世界から必要とされているのだから―
そんな死者たちの無数の声が聞こえてくる。
この「シャオハイ」という言葉は、中国語で子供のことである。
稽古に入る時、いつもこんなことから始める。物語に描かれた時代を見つめるため、その時代のその場所の真ん中に自分を立たせてみる。そこで見えてくるもの、聞こえてくるもの、肌で感じるものすべてを、全身で受け止める。時の記憶、場所の記憶を自ら体験してみることから始める。
素敵な俳優たちが、揃った。みんなで、この物語をしっかりと丁寧に力を込めて、嘘のない舞台にしたいと思う。
本作のオファーがあった時の気持ち、原作や台本を読んだ感想について
井上芳雄

原作もドラマも観ていたので、お話をいただいた時は本当に驚きました。好きというレベルを超えて、「すごい小説だ」と思っていた物語を初めて舞台化する際に、自分がそこに参加できるなんて信じられませんでした。ドラマをリアルタイムで毎週家族と観ていて、子供ながらに「こんなことがあったんだ」と驚きながら涙していた記憶があります。
出演が決まり、「大地の子をやることになったよ」とまず両親に知らせました。両親もとても喜んでくれて、「大地の子までは元気でいなきゃね」と話していたので、できれば何度も再演を重ねて、ずっと元気でいてほしいと思っています。
奈緒

今日こうして皆さんにお会いして一緒にお話しできていることが、とても心強いです。オファーをいただいた際、「本当に私にこの話が来ているのだろうか」と実感が湧かないほど大きな出来事でした。その後、栗山さんとお会いして「『大地の子』を舞台でやるけど、奈緒どうなの? 一緒にできるの?」と言われた時に、ようやく実感が湧きました。「本当にこの舞台に立つんだ」と思った瞬間、少し震えましたが、それ以上に心強さを感じています。
舞台化については、今の時代だからこそ届ける意味があると感じています。栗山さんには“秘密のノート”があって、やりたい演劇がずらっと書かれているとお聞きしたことがあります。その中から今届けるべき作品として『大地の子』を選び、正しく届けることに強い思いを持っていらっしゃる演出家の方だと感じています。
台本を拝見して、この作品は自由に受け取ってもらうだけではなく、私たちが一種の“正しさ”を強く持って届けなければならない作品だと心から思いました。稽古場で皆さんと一緒にそれを探していきたいと思っています。
上白石萌歌

オファーをいただいた時は、山崎豊子さんの壮大な世界に飛び込むのだと思うと「私に務まるだろうか」という気持ちがありました。でも何より、また栗山さんとご一緒できることが本当に楽しみで。私にとって栗山さんは演劇の神様のような存在で、その言葉を受けながら稽古ができることを心から楽しみにしています。
井上さんは、姉が何度もご一緒させていただいていて、私自身も10代の頃に『星の王子さま』でご一緒させていただきました。勝手ながら親戚のような親しみを感じていて、再びご一緒できるのはとても心強いです。緊張で身が震えつつも、早く稽古に入りたい気持ちでいっぱいです。
原作、本、ドラマ、漫画も拝見しましたが、読みながら心が痛くなりながらも読み終えると温かさが広がるような清々しい気持ちになる作品でした。一心の過酷な運命に翻弄されながらも、差し伸べられる手をしっかり握り、自分の人生をひたむきに歩む姿がとても印象的で、深く感銘を受けました。
私もその“一心に手を差し伸べる一人”という役割を与えられていますので、稽古に入る前も原作を何度も読み返し、稽古中は栗山さんの言葉を丁寧に咀嚼しながら、最後まで向き合っていきたいと思っています。
山西惇

お話をいただいた時は「できるのかな」というのが最初の印象でした。ただ、栗山さんとは十年以上一緒に作品を作らせていただいていて、僕の俳優人生を年表にしたら“栗山さんと出会う前”と“出会った後”で時代が変わるくらい、絶大な信頼を寄せている演出家さんです。ですので、栗山さんがやると聞いた時点で「絶対大丈夫だ」と思いました。
原作を読んで、役柄に対しても「できるかな」と思う部分はありますが、中国人役ではあるものの、僕は中国語を話さなくて良いと伺い、まずは安心しました。栗山さんのマジックで「できるの?」と思うようなものの方が燃えてくるというか、素晴らしい作品になる予感しかありません。早く稽古が始まらないかと、今はそればかり考えています。
益岡徹

ドラマ版では上川隆也さんが素晴らしい演技をされていて、稽古場ではまたそれを再現することになるのではと思っています。台本を読んで感じたのは「なんて見事な台本なのだろう」ということ。自分が演じるかどうかとは別に、純粋にそう思いました。原作はさらに膨大な世界が描かれていて、それを今の時代に舞台として届けることには何重もの意味があるはずです。
そして、今は戦後80年という時代。陸一心という役は、私の父とほぼ重なる人生を歩いてきたという設定です。私は戦後が終わった頃の昭和31年生まれ。残留孤児の問題がまだクローズアップされていない時代でした。
満洲の開拓団にいた人々が取り残され、悲しい最期を迎えたというイメージがありましたが、その中で温かい親に出会い生きる子供たちがいることを知った時は胸を打たれました。それを稽古で真実として積み重ねていきたいと思っています。


文・撮影:THEATER GIRL編集部
公演概要

『大地の子』
原作:山崎豊子『大地の子』(文春文庫)
脚本:マキノノゾミ
演出: 栗山民也
【キャスト】
陸一心(勝男):井上芳雄
張玉花(あつ子):奈緒
江月梅:上白石萌歌
陸徳志:山西惇
松本耕次:益岡徹
袁力本:飯田洋輔
黄書海:浅野雅博
増子倭文江
天野はな
山下裕子
みやなおこ
石田圭祐
櫻井章喜
木津誠之
武岡淳一
薄平広樹 岡本敏明 加藤大祐 越塚学 西原やすあき
咲花莉帆 清水優譲 武市佳久 田嶋佳子 常住富大
角田萌果 内藤裕志 松尾樹 松村朋子 丸川敬之 (五十音順)
松坂岳樹 本宮在真 藤田緋万里 森 葵 (子役)
公演日程:2026年2月26日(木)~3月17日(火)
会場: 明治座 (東京都中央区日本橋浜町2-31-1)
主催・製作:明治座・東宝
お問合せ:東宝テレザーブ 0570‐00‐7777(ナビダイヤル/11:00~17:00)
