• HOME
  • topic
  • REPORT
  • ミュージカルの醍醐味がギュッと詰まったノンストップ100分間。悲劇の歴史の裏にあった愛と希望と真実の物語『カム フロム アウェイ』がいよいよ開幕!

ミュージカルの醍醐味がギュッと詰まったノンストップ100分間。悲劇の歴史の裏にあった愛と希望と真実の物語『カム フロム アウェイ』がいよいよ開幕!

REPORT

ミュージカル『カム フロム アウェイ』が2024年3月7日(水)より東京・日生劇場にて開幕する。

同作は、2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件で行き場を失った飛行機のうち、38機がカナダのニューファンドランド島にある小さな町・ガンダーに不時着したという実話から、人種、国、宗教、すべてを越えて繋がる人と人との心の物語をミュージカル化したもの。トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞し、この度日本初演を迎えることとなる。

囲み取材には、安蘭けい、石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、吉原光夫と演出のクリストファー・アシュリーが登壇。初日向けての意気込みなどを語った。

まず最初に、演出のクリストファー・アシュリーは「この作品を作ってから9年間、世界には大きな分断、たくさんの紛争が起こっています。戦争やパンデミックがある中で、優しさ、他人に対して寛容になることがテーマの作品手がけることができて幸せな思いです。しかもこの作品は実在の人間、今も生きている方々をモデルにしている作品で、そういう作品を手がけるのは僕も初めてでした。作品のメイキングの段階からとても協力してくださって、今ではこの作品のファンとして世界中追っかけ回してくれています」とコメント。

日本人キャストの印象について「この作品について何もかも知り尽くしていたつもりでしたが、このキャストから作品や人物についてたくさんのことを学んでいます。この人たちが好き過ぎて、今後キャリアの中でこの人たち以外とは仕事をしないと決めたところです」と発言すると、シルビアが「絶対ですね?」と笑顔でツッコミを入れ一気に場が和んだ。

安蘭は「足かけ約6カ月稽古で準備してきました。今振り返ってもあっという間すぎて明日が初日なんて信じられなくて……。すごく密度の高いお稽古をさせてもらってきたので、明日は素晴らしい初日になるだろうと思っています。日本キャストにしか出せない“味”をお届けできたら」と自信を覗かせる。

石川は「半年間、いくつもの高いハードルをみんなで乗り越えてきました。実在の人物を演じることは今までもありましたが、今も実在している人物を演じるのは初めて。限りなくドキュメントに近づけたフィクションで、嘘をつかないで気持ちになり変わって演技するというハードルを飛び越えて行こうと、楽しいキャストと共に毎日爆笑しながらやっています」と笑顔を見せた。

「昨日の稽古中、安蘭さんとちえちゃん(=柚希)が、始まるってことは終わっちゃうんだね、寂しいねと話していたんです」と語るのは浦井。「約6カ月間、毎日8時間くらい一緒にいて、スウィングキャスト(※)の4名も加えた16人で最後まで完走することを目標に、この作品から人の温かさを感じ、大切にしていきたいと思っています」と引き締まった表情を見せていた。

(※出演キャストに急なアクシデントがあった場合に代わりに出演するキャストのこと。複数の役の動きと歌のパートを覚えるなど非常に高いスキルを持つ)

「稽古が始まる間から“ミュージカル界のアベンジャーズ”たちと共演するということでドキドキしていました」と興奮気味に語る加藤は、「稽古を重ねていく中でみんなが同じ時間を共有し、失敗も笑いに変えながら前に進んでいく感覚が、カンパニーというよりファミリーの感じがすごくします。不安もありますが、長い稽古期間で培ってきたものを舞台上で出して、日比谷界隈で1番エネルギーのある作品に仕上がっていると思います!」と熱く語った。

柔らかい空気をまとう咲妃は「稽古場は壮絶でしたが本当に愛おしい日々でした。1人の人間として今後の人生で持っておきたい大切な考え方などを、この作品からたくさん学ばせていただきとても感謝しています。モデルとなった方々への敬意を胸に、一回一回お届けしたいと思います」と、緊張しつつも笑顔を見せる。

シルビア・グラブは「先ほど舞台上で照明とセットと全部合わせて初めて通しをしたのですが、『Somewhere in the Middle of Nowher』という曲で全員が1列になって上を向いた瞬間に涙が出てきてめっちゃ感動しました。これで最後のピースのお客様が入った時に、どれだけ冷静でいられるのか分からないくらい最高でした」とコメント。

また、会見には全員がステージで着用する衣装を身にまとっていたのだが、

「普段着なのか衣装なのかわからないくらいナチュラルというかカラフルな衣装です(笑)。男性陣は全くメイクをしていませんし、女性もナチュラルメイクで……。僕は帽子をかぶるので整髪料すら付けていません。こんなに日常と非日常のカテゴライズがない作品は初めてです。全部で50公演以上、約100分の上演時間なので5,000分くらいこれから僕らは一緒に歩んでいきます。ぜひたくさんの方にこの作品を届けていきたいと思っております!」と田代が意気込みを語った。

橋本は「役者のキャリアは中くらいですが、最も過酷な稽古だった気がします。僕、そんなにミスらないんですが、めちゃくちゃミスってました(苦笑)。でもミスをしてもみんなが笑い飛ばしてくれるので、稽古は恥のかき捨てと、いっぱいミスをしながらやっとここまで辿り着きました。北東の果てのニューファンドランド人になりました!」とお茶目なコメントで場を盛り上げた。

浜田は「稽古場にいる時からメンバーとは1m以上離れず、1日8時間くらい一緒にいたんですよ。他人じゃなくもうファミリー(笑)。親族の寄り集まりみたいなニュアンスそのままステージに上がってお芝居していて、ふっと不安に思って周囲を見回すと家族がいる。半年間、稽古で積み上げてきたチームワークが垣間見えると思いますし、観客の皆様もファミリーの一員になってくださるのかなと楽しみで仕方ないです」と語る。

本作では「メガネをかけた時はハンナで、メガネを取った時は島民。これで皆さんにも今は〇〇役だというのがわかると思います」と説明する森。「膝が死ぬんじゃないかというようなハードな稽古をして7キロ痩せました。『カムフロムアウェイダイエット』というくらい頑張りました(笑)」と驚きの発言があったが、稽古場でのエピソードを聞かれると「誰かが稽古中、必ず何か差し入れをしてくれていたんです。普通はおせんべいとかお菓子ですけど、ケンタッキーフライドチキンやマック、肉まんもあって、食べるものが豊富でビックリするほど全然痩せなかった(笑)。そろそろ食べるのをやめようかなと思ったら痩せ始めました」と取材陣の笑いを誘う。

柚希は「全く演じずにやることがテーマで、稽古中から何度も「演じない!」と言われめちゃめちゃ難しかった。その度に「こうしたらいいんじゃない」「ああしたらいいんじゃない」と自分のことのようにみなさんが教えてくれて、作品の温かさもそうですがキャストの温かさでどうにかなるんじゃないかというくらいポカポカとした気持ちになりながら、お客様にもこの温かい物語を心から届けたいと思っています」とコメント。

吉原は「この穏やかで誇り高い作品がどう日本の客さんに届くのか……。ミュージカル界のポンコツスターたちが、どう穏やかに優しく人に穏やかに思いを寄せてお客さんに向けるかは、初日まで気持ちを緩めずに頑張りたいと思います。3.11がある日本、最近も大きな地震が起きまだまだ不安な状態ですが、人が人を傷つけあう時代に穏やかな風を与えるこの作品を劇場で楽しんでください」と語った。

続いて稽古場でのエピソードを尋ねられ、咲妃が「スタンバイキャストの皆様の通し稽古を見たのですが、本当にすごいものを目撃させていただきました。そんなスタンバイキャストの方たちの底力に支えていただいていて、お届けできることが大変心強いです」と言うと、シルビアが「位置関係がパズルのようで他の作品と比べても役として入り込むことが難しい作品なんです。覚えただけで入れるわけでないので感動しました」と続け、ほかのメンバーも「すごかったね!」と大きく頷いていたのが印象的だった。

最後に町長役の橋本が「今悩んでいる方、壁にぶつかっている方、前に進もうと思って不安になっている方々にエールを送りたいと思います」と挨拶し、「三三七拍子!」の掛け声でキャストと共に手拍子。しかし最後に「Welcome to the Rock!」コールがグダグダで締まらず、テイク2に挑戦することに(笑)。2回目はバッチリ決まり、集まった取材陣から大きな拍手が起こっていた。

その後公開されたゲネプロでは、冒頭から圧巻の歌声で物語の中に引き込まれていく。

12名のキャストが緊急着陸した飛行機の乗客や彼らを受け入れるニューファンドランド島の島民など100人近くの役を演じ分ける。

大がかりなセットの変化はなく小道具の椅子を並べて飛行機内を表現したり、衣装も小物やジャケットを着替えるくらいなのだが、声色や姿勢など確かな演技力と歌声でガラッと印象が変わる。最初こそ警戒し合っていた見ず知らずの人々が、共に数日を過ごすうちに次第に心を通わせ、愛情や友情を育んでいく様子や人々の心情を、わずか100分という時間の中で丁寧に描いていく様は、さすがミュージカル界のアベンジャーズ!

2001年当時、ニュース番組で繰り返されるハイジャックされた飛行機が超高層ビルに突っ込むというショッキングな映像の裏では、こんなにも心温まる物語があったとは……。

歴史の悲劇を元に描かれた物語ではあるが、コメディ要素も随所に出て来て、そこに人の強さ、優しさ、癒えることのない悲しみを感じとることが出来た。

ミュージカル『カム フロム アウェイ』東京公演は、3月29日(金)まで日生劇場にて上演。その後、大阪公演が4月4日(木)~4月14日(日)SkyシアターMBS、愛知公演が4月19日(金)~4月21日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、福岡公演が4月26日(金)~4月28日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール、熊本公演が5月3日(金・祝)~5月4日(土)熊本城ホール メインホール、そして群馬公演の5月11日(土)~5月12日(日)高崎芸術劇場 大劇場で千秋楽を迎える。

文:近藤明子
フォトセッション撮影:田中亜紀
舞台写真撮影:THEATER GIRL編集部

咲妃みゆさんのインタビューはこちら

公演概要

ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』

2024年3月7日(木)~29日(金)
日生劇場

脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイヴィッド・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子

出演:
安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫

スタンバイ:
上條 駿
栗山絵美
湊 陽奈
安福 毅

(五十音順)

チケット:
S席:平日15,000円/土日祝16,000円
A席:平日10,000円/土日祝11,000円

ファーストクラス:共通 20,000円

公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/comefromaway2024/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

プロフィール

PICK UP

関連記事一覧