咲妃みゆインタビューブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』「何倍にもしてお届けするくらいの覚悟で挑みたい」（前編）

2024.01.22

INTERVIEW

2024年3月7日より東京・日生劇場を皮切りに、ブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』が上演されます。

本作は、12人の出演者のみで100人近くの役を次々に演じドラマが交錯し、開演と同時に一気に展開されていく濃密な100分間。トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞し、2001年9月11日の同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた驚くべき実話を基にしています。

出演者には、安蘭けいさん、石川禅さん、浦井健治さん、加藤和樹さん、咲妃みゆさん、シルビア・グラブさん、田代万里生さん、橋本さとしさん、濱田めぐみさん、森公美子さん、柚希礼音さん、吉原光夫さんら、ミュージカル界を代表する豪華キャストが大集結しました。

THEATER GIRLは、本作でジャニス役などを演じる咲妃みゆさんにインタビュー。前編では、本作に魅力を感じた部分、ジャニス役を始め複数の役柄を演じることについて、共演するキャストの方々の印象など、たっぷりとうかがいました。

インタビュー後編はこちら

この物語を後世に残そうと奮闘された方々の熱意に、一番突き動かされた

――本作は待望の日本初演となります。出演オファーをいただいたときに即決でお返事されたとのことですが、どんなところに魅力を感じられたのでしょうか？

オファーをいただけることは本当にありがたいことですし、この作品に必要と思っていただけたことが何よりも嬉しかったので即決でお返事させていただきました。この作品を劇場で拝見したことはないのですが、一番心を動かされたのは、この作品を0から作り上げた方々の熱意が全て伝わってきたことです。この物語を後世に残そうと奮闘された方々の熱意に、一番突き動かされました。

実際にあったお話をミュージカルにするということは、並大抵の作業ではなかったと思いますが、きっとたくさんのトライを積み重ねて今の形に辿り着かれたと思うので、敬意を胸に挑みたいです。

伝えたいメッセージは全世界共通だと感じるので、おこがましいかもしれないですが、当事者であるという気持ちを持って挑ませていただこうと思っています。有難さももちろんですが、今は責任感を感じています。

――前回出演されていたミュージカル『マチルダ』もそうですが、今回のブロードウェイミュージカル『カムフロムアウェイ』も日本初演ということで、取り組むにあたって、プレッシャーなどもあったりするのでしょうか？

プレッシャーというよりは、この作品を日本でお届けする一員になれた喜びの方が大きいです。ただ、土台となる実際に起こった出来事が重々しいので、オファーをいただけた喜びもありますが、同時に2001年から今に至るまで、さほど世の中の状況は変わっていない悲しさも感じます。ましてや世界中でいつ何が起こるか分からないヒリヒリした状況ですし。きっとどのタイミングでも意味があると思いますが、2024年のこの時期にお届けすることに、すごく意味を感じています。

あたふたしている感じがジャニスと重なる

――本作では地元テレビ局の新人リポーターのジャニスを始め、客室乗務員、ブリトニー、パーティーガールなど、数々の役柄を演じられます。ご自身の演じられる役柄についての印象はいかがでしょうか？

本稽古に入る前に事前稽古を重ねて、このシーンではどういう役で、どこで歌ってということを、細かく確認する時間を丁寧に取っていただいたので、とても有難かったです。新人リポーターとしては、かなり荷が重い仕事を任されることになったジャニスの不安や緊張感がセリフからすごく伝わってきました。

この作品は音楽で紡がれていくので、「セリフをこの間尺で言う」など全て決まっています。英語のセリフを日本語にするとどうしても言葉数が多くなってしまうので、なかなかに苦戦しています。今は事前稽古であたふたしている感じがジャニスと重なっています（笑）。

登場人物を島の人と島に降り立つ人の二つに分けるとジャニスは島の人側で。客室乗務員や他にも様々な役をやらせていただくのですが、衣裳が大きく変化することなく演じ分ける必要があるので、どうやって役の違いを明確にお届けできるのか、まだ未知の世界です。

――衣裳もあまり変化のない状態で、役柄を演じ分けるのは大変そうですね。ここまで複数の役柄を一つの作品で演じることは今までになかったのでは？

今、何の役を演じているかその都度名乗らないので、お客様を置いてけぼりにしないように演じ分けられるのか、大きな挑戦になると思います。今まで一つの作品で、2～3役ということはあったのですが、今回は、もう少し多いので気を引き締めて頑張ります。

ワクワクドキドキしながら皆様と一緒に旅ができるのでは

――本作では、ミュージカル界の第一線で活躍されている豪華なキャストの方々が揃っていますが、共演者の皆さんやカンパニーの印象はいかがでしょうか？

良い作品をお届けできる予感がしてならないです。錚々たるお顔ぶれで、再共演したかった方やいつかご一緒してみたいと思っていた方が勢ぞろいしていて、いち役者としても大変ありがたいことです。ビジュアル撮影の時は「久しぶり」という声が飛び交っていて、同窓会みたいな雰囲気の中で楽しく撮影ができました。

さらに事前稽古が始まると、素晴らしい歌声が響き渡る中に、膨大な楽曲と複雑な作品構造を前に普段なかなかお見かけできないようなあたふたなさる姿（私も含め）が垣間見えたりして、笑いの絶えない現場で、多くの刺激をいただいています。きっと本稽古中、そして本番中もずっとワクワクドキドキしながら皆様と一緒に旅ができるのではと思うので楽しみです。