咲妃みゆインタビュー ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』「何倍にもしてお届けするくらいの覚悟で挑みたい」(後編)
2024年3月7日より東京・日生劇場を皮切りに、ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』が上演されます。
本作は、12人の出演者のみで100人近くの役を次々に演じドラマが交錯し、開演と同時に一気に展開されていく濃密な100分間。トニー賞、ローレンス・オリヴィエ賞、ニューヨーク・タイムズ紙の批評家賞をはじめ、数々の演劇賞を受賞し、2001年9月11日の同時多発テロの裏で、カナダにある小さな町・ニューファンドランドで起きた驚くべき実話を基にしています。
出演者には、安蘭けいさん、石川 禅さん、浦井健治さん、加藤和樹さん、咲妃みゆさん、シルビア・グラブさん、田代万里生さん、橋本さとしさん、濱田めぐみさん、森 公美子さん、柚希礼音さん、吉原光夫さんら、ミュージカル界を代表する豪華キャストが大集結しました。
THEATER GIRLは、本作でジャニス役などを演じる咲妃みゆさんにインタビュー。後編では、本作のストーリーや楽曲の印象、本作のキャッチフレーズにちなみ、咲妃さんの「忘れられない体験」などについてお話しいただきました。
並々ならぬ思いを胸に今ここにおります
――本作は、実際にあったお話を基にされていますが、ストーリーの印象についてはいかがでしょうか?
劇場に足を運んでくださるお客様は、 2001年9月11日に起きた出来事についての知識の度合いも様々だと思いますが、あまりよく知らないという方にもスッと理解していただけるような構成になっていると思います。
よくご存知な方にも新しい発見をしていただけるのではないでしょうか。当時私は小学生だったのですが、朝のテレビ番組で衝撃的な映像を見た時の記憶が今でも脳裏に焼きついています。当時、世界情勢について深くは理解できていませんでしたが、とても悲しいことが起きたということは容易に理解できたので。母が傍にいたのですが、絶句してテレビを凝視している姿もとても覚えています。
あの事件以来、当時何が起きたのか、どういう状況下で人々は心を痛めたのか、悲惨な事件の根源は何なのかと、この出来事について調べようとしてきた自分がいたんです。
そして今回、このお話をいただいた時に、ずっと気になり続けていたのはこの作品に全力で挑むためだったのかもしれないと、本当に勝手にですがご縁を感じています。日本初演に向けて、並々ならぬ思いを胸に、今ここにおります。
軽快な音楽が「重々しい題材」を緩和してくれる
――本作は楽曲も素晴らしいですが、楽曲の印象や実際に歌ってみていかがでしょうか?
ケルティックな曲が多いので、独特のリズムにまだ体がなかなか追いつけていなくて。 それがしっかり入らないと島民の力強い歌声は表現できないと思うので、歌詞やメロディーをお届けするだけではなく、その根底にある生き様まで表現できたらなと。実際に歌わせていただくと、まるでその時の生活音や島の空気が伝わってくるようで不思議です。
重々しい題材ではありますが、軽快な音楽がそれを少し緩和してくれるというか。壮絶な事実から目を背けずに、でも確かな希望を感じるのが、 この『カム フロム アウェイ』というミュージカルが誕生した鍵なのではと思っています。
――楽曲を聞いていると、民族系の楽器も多く入ってくる印象ですね。
今はピアノだけでお稽古を進めていますが、ここに楽器がたくさん加わっていくと思うとワクワクします。生演奏も見どころの一つですのでお楽しみいただきたいです。
咲妃さんにとって「忘れられない体験」とは……?
――今回、「この100分間はあなたにとって忘れられない体験となる」というキャッチフレーズがついていますが、咲妃さんにとって「2023年忘れられない体験」を挙げるとしたらどんなことでしょうか?
いくつかありますが、やっぱりWBCですね。ありがたいことに一試合だけ東京ドームで観戦することができたんです。ただのミーハーみたいで申し訳ないのですが、あの球場の熱気と、この目で大谷翔平さんを拝見できたことは、自分の「頑張ろう」という気持ちに拍車をかけてくれた気がして。もちろん大谷さんだけでなく、WBCの全てにおいてあの数週間は忘れられないです。
――そういった他の分野のプロフェッショナルの方を見ると、役者として感化されたりする部分もあるのでしょうか?
そうですね。一瞬一瞬にすべてをかける、一度たりとも同じ瞬間がないというところは、野球選手と演技者の共通項だと思うので、勝手にいろいろと勉強させていただいていますし、励まされています。
「役がしっくりくる場所を探す」作業が自分には必要
――咲妃さんの歌声はとても芯が強く真っすぐで胸に届いてくる印象です。普段の生活でのケアであったり、歌う際に気を付けていることはありますか?
ちょっとシリアスな話をさせていただくと、数年前に声帯を痛めたことがあるんです。いろいろな要因が重なって長期間痛めてしまったのですが、その根本はなんだろうと考えた時に、心と体が一致していなかったということに行きついたんです。
少し話が逸れるかもしれませんが、赤ちゃんって大声で泣きますよね。感情を鳴き声に全て乗せて私たちに伝えてくれますが、 どんなに大声を出しても声帯を痛めることは一切ないと思うんです。それって心と声と体が全て一体化しているからで、それが大人になるにつれて感情一直線では生きられなくなってしまう。人それぞれかもしれませんが、心が元気ではない時って、私は声に真っ先に出てしまうんです。 そこをケアできるのは自分でしかないので、どんなにいいお薬をいただいても、根底の自分がエネルギーを失ったら治るものも治らない。
これまでいろいろな境遇、感情、性格のお役と向き合わせていただきましたが、「役がしっくりくる場所を探す」という作業が自分にはすごく必要で。もちろん自分がどう演じたいかということも大事ですが、自分に寄せるのではなく、その作品の世界にポンッと飛び込んでみると、体を壊すことはなくなりました。もちろん、よっぽど叫んだりしたらケアは必要ですが。
そこに気づけた時から、どんなに喉を酷使してもきちんと睡眠を取れれば回復するようになりました。大谷翔平さんもおっしゃっていますが睡眠は本当に大事です(笑)。心と体が一致することに加えて良質な睡眠が健康への近道だと思うので。健康の話になってしまいましたが(笑)、今はそれがコンディションを保つ秘訣だと思っています。
――貴重なお話をありがとうございます。では最後に本作を楽しみにされている方にメッセージをいただけますでしょうか。
この作品を一から生み出された方々の覚悟と情熱と希望を、日本初演に携わらせていただく一人として、何倍にもしてお届けできるよう挑みたいと思います。この作品に対して抱かれるお気持ちは人それぞれ異なると思うので。湧き上がる気持ちに耳を傾けてみていただけたら嬉しいです。 劇場でお待ちしております。
取材・文:THEATER GIRL編集部
Photo:野田涼
ヘアメイク:本名和美
スタイリスト:國本幸江
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公演概要
ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』
2024年3月7日(木)~29日(金)
日生劇場
脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイヴィッド・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
出演:
安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫
スタンバイ:
上條 駿
栗山絵美
湊 陽奈
安福 毅
(五十音順)
チケット:
S席:平日15,000円/土日祝16,000円
A席:平日10,000円/土日祝11,000円
ファーストクラス:共通 20,000円