吉柳咲良インタビュー 『ロマンティックス・アノニマス』「チョコレートのように甘さがありながら、そこにあるほろ苦さも大切にしている作品」(前編)
2026年3月1日(日)より、池袋・東京建物Brillia HALLにて、ミュージカル『ロマンティックス・アノニマス』が上演されます。
本作品は、ジャン=ピエール・アメリスとフィリップ・ブラスバンド脚本による2010年のベルギー・フランス合作映画「Les Émotifs Anonymes」を原作とした、繊細でシャイな男女の恋を描いたロマンティック・コメディ。
2017年、この映画を原作として、翻案・脚本エマ・ライス、歌詞クリストファー・ダイモンド、音楽マイケル・クーマンという布陣でミュージカル化。『Romantics Anonymous』はロンドンで初演され、大絶賛されました。
そして、2026年、初めて日本版ミュージカルの上演が決定。演出に、日本でも『ノートルダムの鐘』や『ゴースト&レディ』など数々の大作を担当するスコット・シュワルツ氏を迎え、新たな『ロマンティックス・アノニマス』が生み出されます。
主演のジャン=ルネ役を務めるのは、STARTO ENTERTAINMENT 所属ジュニアグループKEY TO LITで活動しながら、近年ミュージカルでの活躍も光る、岩﨑大昇さん。2024年に主演を務めた『ニュージーズ』での好演が記憶に新しく、強みである歌唱力を活かし、着実に実力をつけています。本作では人とのコミュニケーションが苦手で内向的な青年を繊細に演じます。
ヒロインのアンジェリーク役には、舞台や映画、ドラマなどさまざまな作品で経験を積んでいる吉柳咲良さん。2017年に『ピーター・パン』に抜擢されて以降、俳優業のほか、声優、歌手としても挑戦を続けている彼女が、本作では内気な天才チョコレート職人を演じます。
THEATER GIRLは、アンジェリーク役の吉柳咲良さんにインタビュー。前編では、日本初演となる本作に挑む心境や役柄に共感できる部分、さらにジャン=ルネ役の岩﨑大昇さんの印象や稽古場で感じている創作の手応えなど、たっぷりとうかがいました。
いい意味で「小さな世界」を大切に描いている作品だと感じた
――本作に出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。
出演が決まった際に、ロンドンで上演されていた公演映像を拝見しました。台本にも目を通しながら観ていたのですが、いい意味で「小さな世界」を大切に描いている作品だと感じました。
壮大な物語というよりも、人間の小さな欠片のような感情を大切に扱っている印象で、日本人にこそ刺さる作品なのではないかと思いました。
さらに掘り下げていくほど、自分と似ている部分もたくさん見つけられたので、「これは自分がやるべき作品だ」と自然に思えたのを覚えています。

――本作は、今回が日本初演になりますが、その点についてはいかがでしょうか?
そこまで重く捉えていたわけではありませんが、この先もずっと続いていってほしい作品だとも思いました。もちろん初演には初演にしかない難しさや葛藤があるはずで、それはキャストだけでなく、スタッフの皆さんにとっても同じだと思います。 ほとんどゼロからイチを生み出すような感覚がありますし、海外で上演されていた作品とはいえ、日本版としては新しいものを作る作業になるので。その“最初の一歩”に携われることは、とても光栄なことだと感じています。
――これまで歴史のある作品にも出演されていらっしゃいますが、日本初演作品とはどのような違いを感じていらっしゃいますか?
どちらにもまったく違う良さがあると思います。歴史ある作品に携われることも、本当に光栄なことですし、積み重ねられてきたものを感じながら演じられるのは大きな喜びです。ただ、だからこそ「なぞるだけではない世界を自分が作りたい」という思いもありました。
一方で初演は、何もかも自分たちの力で生み出さなければならない大変さがあります。そのぶん苦しさもありますが、自由度が高く、挑戦できる幅が広いのも初演ならではの魅力です。

「弱さの中に強さがある」ところがアンジェリークの魅力
――本作では、内気な天才チョコレート職人のアンジェリーク役を演じられますが、役柄の印象や共感できる部分などはありますか?
アンジェリークは、根っこがとても強い女性です。これまでさまざまな経験をしてきたからこそ、人に見られることが苦手になっているのですが、それでもチョコレートへの愛情や情熱はとても強い。「自分を評価してほしい」というよりも、「自分の作ったものを評価してほしい」という気持ちのほうが強い人だと感じています。
常に立ち向かおうとする強さを持っていて。その打たれ強さやタフさは、自分と重なる部分があります。
私自身もとても気にしいな性格なので、心の中がパニックになることがよくありますが、やるべきことを放棄しないようにと自分に言い聞かせています。なので、傷ついた経験や苦しかった出来事があっても、自分を諦めなかったという点は、アンジェリークと重なる部分だと思います。弱さの中に強さがある。そこが彼女の素敵なところだと感じます。
私は、人の目を見て話すことには今でも苦手意識があります。目を見るという行為は、心の奥を覗かれているような感覚になりますし、同時に相手の何かが見えてしまう気もするんです。だからこそ、頑張って見ようとしても、つい逸らしてしまうことがあって。そのあたりもアンジェリークと似ているかもしれません。

こんなにジャン=ルネ役が似合う人は、他にはいない
――現在、絶賛稽古中とのことですが(取材時)、ジャン=ルネ役の岩﨑大昇さんの印象や稽古を重ねて“化学反応”を感じられている部分はありますか?
こんなにジャン=ルネ役が似合う人は、他にはいないだろうなと思います。 細かい部分にまったく嘘がなくて、それはきっとご本人が持っているものなのだろうと感じています。計算しているようには見えず、ただそこに存在しているだけで、今この瞬間の“事実”が起きているような感覚があるんです。
歌声も本当に素敵なのですが、まるで話しているかのように歌われるんです。ジャン=ルネを他の方が演じる姿が想像できないほどぴったりで、稽古場でも「本当にハマり役だ」と皆が口にしています。 嘘なくお芝居をされるので、私も自然と嘘のない相づちが打てますし、リアリティを強く感じながらやり取りができています。
稽古では、演出のスコットさんともディスカッションを重ねながら進めています。ロジックをきちんとたどる作業も大切にしてくださいますが、その一方で、理屈を超えて素直に出てきたものが勝る瞬間も何度も目にしてきました。それを見るたびに、負けていられないという気持ちになります。 全体を計算して組み立てる作業ももちろんありますが、それだけではない魅力を持った方だという印象です。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:遥南 碧
公演概要

ミュージカル『ロマンティックス・アノニマス』
2026年3月1日(日)~3月24日(火) 東京・池袋 東京建物Brillia HALL
2026年4月1日(水)~4月5日(日) 大阪・東京建物Brillia HALL 箕面 大ホール
キャスト:
岩﨑大昇
吉柳咲良
朴 璐美
勝矢
花乃まりあ
上野哲也
ダンドイ舞莉花
こがけん
大谷亮介
スタッフ:
脚本 : エマ・ライス(英国グローブ座元芸術監督)
歌詞 : クリストファー・ダイモンド
音楽 : マイケル・クーマン
原作映画 : 「Les Émotifs Anonymes」(ジャン=ピエール・アメリスおよびフィリップ・ブラスバンド脚本)
演出 : スコット・シュワルツ
振付 : アディ・チャン
製作 : 東宝/STARTO ENTERTAINMENT
公式ホームページ:https://www.tohostage.com/romantics/
