田中圭インタビュー 『陽気な幽霊』 「9年前より成長しているところを見せたい」（後編）
2025年5月にシアタークリエにて『陽気な幽霊』が上演されます。
1941年7月にロンドンのピカデリー劇場にてウエストエンド初演された本作は、5年間で1997回という驚異的な連続上演記録を達成し、その熱も冷めやらぬまま、1945年には名匠デヴィッド・リーン監督により映画化されました。その後も今日に至るまで、ブロードウェイを始め世界各地の劇場で繰り返し上演され、再び2020年に映画化されるなど、カワードの喜劇の最高傑作と言われています。
この傑作コメディに挑むのは、『おそるべき親たち』で毎日芸術賞千田是也賞を受賞した演出家 熊林弘高氏。
主演の作家チャールズ役を演じるのは、数々の映像作品や舞台で主演を務め、シリアスな役から軽妙な役まで硬軟自在に演じ、さらにバラエティ番組やCM出演など幅広く第一線で活躍を続けている田中圭さん。
共演には、チャールズの元妻であり幽霊となって姿を現すエルビラ役の若村麻由美さん。チャールズの二番目の妻ルースを演じるのは門脇麦さん。さらに、高畑淳子さんが、霊媒師アーカティ夫人を演じます。その他、天野はなさん、佐藤B作さん、あめくみちこさんと多彩なキャストが揃いました。
THEATER GIRLは、主演の作家チャールズ役の田中圭さんにインタビュー。後編では、共演者の方々の印象や今後舞台で挑戦したいジャンルや役柄などについてお聞きしました。
絶対に楽しくなる予感しかない
――共演には、若村麻由美さん、門脇麦さん、高畑淳子さんなど、多彩なメンバーが揃っていますが、皆さんの印象はいかがでしょうか。
「熊林さんらしい」という印象です。個性豊かで安心感もあって、思いきりお芝居に集中できる環境になりそうだなと思います。脚本を読んでからこのキャストを見ると、みんなキャラクターにハマっていると感じるので、絶対に楽しくなる予感しかありません。
――元妻となるエルビラを演じる若村麻由美さんと二番目の妻ルースを演じる門脇麦さんとは、共演シーンも多くなるかと思いますが、お二人の印象はいかがでしょうか。
麻由美さんは同じ事務所で、今まで同じ作品に出たことはありますが、がっつりお芝居をするのは初めてです。すごく真面目でストイックな印象があります。門脇さんとは共演も多いですし、出演が決まってから「舞台、すごく楽しみにしています」と連絡をもらって。すでに「絶対にダメ出ししないでくださいね」と言われました（笑）。お二人との共演もとても楽しみです。
――お二人とは元妻と現在の妻という役柄で、作品では奇妙な三角関係が描かれます。ご自身がチャールズだったら、この三角関係をどう乗り切りますか？
……難しいですね。幽霊だから普通に怖いですし。僕なら「ちょっとごめん」と言って、病院に入院します。でも、劇中で幽霊が物を動かしてくれたりするので、「手足のように動いてほしい」とお願いするかもしれません（笑）。
――ちなみに、本作のビジュアル撮影はいかがでしたか？
「体幹が強いですね」と褒められました（笑）。なので「ありがとうございます」と言いながら撮影させていただきました。このビジュアルも僕の知っている熊林さんのイメージとは違うので、ますます楽しみになりました。
シアタークリエは、“奥”のようなイメージ
――本作は、シアタークリエでの上演になりますが、劇場の印象はいかがでしょうか？
クリエに立たせていただくのは、『幻蝶』以来になります。僕の感覚的な話になりますが、今までは密集した箱で上演するイメージが多かったのですが、クリエは、“奥”のようなイメージがあって。最初は、そういうところに立つのは難しいと思っていましたが、実際、『幻蝶』の頃に立ってみると、とてもやりやすくていい劇場だと思いました。
――今回の舞台に向けて目標やテーマはありますか？
目標とは少し違いますが、熊林さんと9年ぶりにご一緒するので、9年前より成長しているところを見せたいなとは思います。
――田中さんご自身は、9年前とどんなところが変わったと思われますか？
何から何まで違うと思います。30代はお仕事以外にもいろいろなことをやらせていただいて、様々な経験を積んだと思います。だからこそ、芝居と役のことだけは絶対に間違えないように考え続けてきた10年でした。それで成長していなかったらさすがに問題ですよね（笑）。
でも年齢も上がって、今回演じるチャールズも同じ年代なので、ちょうどいいタイミングで素敵な演出とキャストと面白そうな役に出会えたなと思います。
――逆に20代から30代にかけて3年連続で熊林さんの演出を受けられて、ご自身の中でどんな変化や成長があったのでしょうか。
舞台は、「蓄積されるものが大きい」という感覚が自分の中でどうしてもあって。もちろん映像作品でもありますが、舞台はそれが大きいです。内容もそうですが、やはり演出家からもらうものもすごく大きいと思います。
熊林さんとは何度もご一緒させてもらっていますが、毎回違ったものをもらえる感覚があります。あの時一緒にやれてよかったなといつも思いますし、今このタイミングで9年ぶりにご一緒できるので、また素敵なものをもらう時期なのだろうと自分的には思っています。
死ぬまでに一度くらいは経験したい
――シリアスな内容から今回のようなコメディまで、様々な作品に出演されていますが、今後舞台で挑戦したいジャンルや役柄はありますか？
シェイクスピアはまだやったことがないので、死ぬまでに一度くらいは経験したいです。セリフの分量に関しては、以前鈴木おさむさんの舞台で、シェイクスピアに負けず劣らずの長台詞を入れてきたので問題ないと思います（笑）。やはり言い回しや発声の仕方が独特の世界観だと思うので、一度は経験してみたいです。
――ファンの方もきっと観たいと思っていると思います。本作が上演されるのは5月になりますが、今年新しく始めたいことやチャレンジしてみたいことはありますか？
40歳になって、時間も頭もお金も自分に使ってみたいと感じています。自己投資ではないですが、経験として使っていきたいなと。単純に今まで仕事を全力で駆け抜けてきたので、一度やり方を変えて、自分のために時間を取ってその時間で何ができるのか考えていきたいです。
――最後に、本作を楽しみにされている皆様へメッセージをお願いします。
熊林さんの演出で、このキャストと脚本で絶対に面白くなるだろうというのは分かっているので、ただただ楽しい時間を過ごしてもらえたらなと。本当に面白い作品になる予感しかないので、ぜひ劇場にお越しください。
取材・文：THEATER GIRL編集部
撮影：Jumpei Yamada
スタイリスト：荒木大輔
ヘアメイク：花村枝美〔MARVEE〕
公演概要
『陽気な幽霊』
キャスト：
チャールズ・コンドマイン 田中圭
エルビラ 若村麻由美
ルース 門脇麦
エディス 天野はな
ブラッドマン夫人 あめくみちこ
ブラッドマン博士 佐藤Ｂ作
アーカティ夫人 高畑淳子
スタッフ：
作 ノエル・カワード
翻訳 早船歌江子
演出 熊林弘高
製作 東宝
2025年5月3日（土・祝）～5月29日（木）
東京 シアタークリエ
【追加公演決定】
5月12日(月) 18:00公演
2025年6月2日（月）～6月8日（日）
大阪 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2025年6月11日（水）～6月15日（日）
福岡 福岡市民ホール 中ホール
