• HOME
  • topic
  • INTERVIEW
  • 太田基裕インタビュー 『ライムライト』 「不器用でも愛おしいと思ってもらえたら嬉しい」(前編)

太田基裕インタビュー 『ライムライト』 「不器用でも愛おしいと思ってもらえたら嬉しい」(前編)

INTERVIEW

2024年8月3日(土)より日比谷 シアタークリエにて、音楽劇『ライムライト』が上演されます。

舞台人の儚い宿命と、残酷なまでに美しい愛の物語を、ノスタルジックに描いた映画『ライムライト』。この不朽の名作を「チャップリン映画の“マイ・ベストワン”」と語る石丸幹二さんが、老芸人・カルヴェロ役で三度目の出演を果たします。そして、カルヴェロを献身的に支えるヒロインのバレリーナ・テリー役を朝月希和さんが、テリーに想いを寄せる作曲家・ネヴィル役を太田基裕さんが演じます。アカデミー作曲賞を受賞した名曲「テリーのテーマ」(“エターナリー”)にのせて、再び感動の幕が上がります。

THEATER GIRLは、ネヴィルを演じる太田基裕さんにインタビュー。前編では、約8年ぶりとなる石丸幹二さんとの共演への思いや役柄の印象などをうかがいました。

インタビュー後編はこちら

穏やかさがカルヴェロと重なって見える

――今回石丸幹二さんとは、ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』以来、約8年ぶりの共演となりますが、どのようなお気持ちでしょうか。

時が経つのは早いなと感じています。だけど、幹二さんは若々しくて、いい意味でマイペースさや、ゆるさや余白もあって、相変わらず素敵な方だなと思いながら稽古をさせてもらっています。また共演することができて嬉しいです。

――現場で石丸さんの姿から教わったことはありますか。

以前から変わらないのですが、「穏やかさ」ですね。そこに、どすっと笑顔でいてくれるというか。自分も頑張ろうと思えますし、すごく支えになります。それがカルヴェロとも重なって見えるし、この作品のあたたかさに繋がっているのではないかと。

もちろん人間だから怒ったりすることもあるとは思うのですが、それでもあの穏やかさはすごいと思いますし、とても癒されます。先輩ですが「幹二さん、可愛いですね」とつい言葉が漏れてしまうこともありますね(笑)。

――カンパニー全体としての雰囲気はいかがでしょうか。

カンパニー全体としてもとても穏やかです。穏やかだけど緊張感もありつつ、変なぶつかり方をしないんですよね。きっと皆さんの余裕というか佇まいがそうさせているのかなと思います。

先日まで出演していたミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の現場では、自分より年下の俳優さんからいろいろな刺激をもらいましたが、この現場は、俳優としての信念みたいなものを持っていらっしゃる方ばかりで、そういうものが垣間見える瞬間が面白いです。先輩の「良い」と思ったものを学びとして取り入れたいですね。それはどこの現場でも同じではありますが。

――カルヴェロの生き方を通して、表現者としてのあり方を考えることもありましたか?

このお話をいただいてから映画を観たのですが、役者としてとても刺さる部分が多かったです。自分に置き換えて見てしまい、なかなか傷つくこともありましたが。この先自分がどうなっていくか、自分の未来を寂しく感じるような瞬間もありました。でもそれと同時に、自分を見つめ直すいい時間にもなったと思います。

おそらくチャップリンも自身を重ねて映画にしたのかなと思いますし、いつの時代もこんな風に考えながら表現し続けているんだなと思いました。

不器用で一つのことに集中したいタイプ

――現在、絶賛稽古中とのことですが(取材時)、稽古での手応えはいかがでしょうか。

演出の荻田(浩一)さんが的確に指導してくださるので、スムーズというか自然に向き合えていると思います。深く思い悩むこともなく、お稽古ができている気がしています。

――ネヴィルという役は、すんなり掴めましたか?

稽古をしていくうちにどんどん積み重なっていくとは思うのですが、他の役者さんが余裕や余韻を感じながらやってくださるのでチャレンジもしやすいし、やりやすさを感じています。変な窮屈さもなく、自然とやれているのかなと。

一幕から二幕を通すとまた変わってくると思いますし、ネヴィル以外にも様々な役柄をやらせてもらうので、どのように差をつけるのか、バランスを整えていく必要があると思っています。二幕からはネヴィルがメインですが、特に一幕では様々な役柄を演じるので、どこに登場するか見つけていただけたら(笑)。

――先ほども少し名前が出ていましたが、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」の本番と本作の稽古が並行していたかと思いますが、大変な部分もありましたか?

「ロミオ&ジュリエット」は後半で慣れてきてもいましたし、ザ・エンタメという感じなので割り切ってやれていました。どちらも「人間とはなにか」ということを考える作品ではありますが世界観としては対極なので、自分の中で整理がつけられていたかなと思っています。

ただ、「ロミオ&ジュリエット」で演じていたティボルトに戻るときはかなりエンジンをかけないといけなかったので、そこはしんどかったです。僕はすごく不器用で一つのことに集中したいタイプなのですが、なんとか乗り越えることができました。

――太田さんご自身は、ネヴィルとティボルトのどちらに近いですか?

見え方としてはネヴィルの方が近いかもしれないですね。でも、ティボルトみたいな、ワイルドさというか反骨精神のようなものは持っておかないと、仕事の面ではきついと思っているので、どこかにそういう部分はあると思います。とは言え、売れない作曲家からのスタートとなると、きっとネヴィルの中にも作曲家としての燃えたぎる思いはあると思っています。

――近年ますます力強さとしなやかさが増していると感じるのですが、太田さんが歌うときに意識していることや気をつけていること、さらに今回に生かそうと思っていることはありますか?

メロディーというよりは、なるべく言葉の強さを感じながら発することができたらと思っています。作品を重ねるたびに、言葉の力ってすごく強いなと実感しているので。なぜその言葉をセレクトしたのか、役として感じながら発することができたら、もっとその人物の気持ちの共有ができるのではないかと思います。

――本作の楽曲の印象はいかがでしょうか。

とてもきれいな曲ばかりですね。今回音楽と編曲を務める荻野(清子)さんとご一緒するのは初めてなのですが、作られた曲への愛を感じるものばかりです。とても繊細でありながら、ロンドンの憂鬱な感じや景色が見えるようなメロディーばかりで、とても素敵だなと思いながら聴いています。すごく派手なわけではないのですが、内情を音にしているイメージでとても上品なメロディーだと感じます。

スムーズにお芝居から歌に入れるようなメロディーラインになっている印象もあるので、音楽劇であってミュージカルではないからこそ、いろいろなことを精査しながら作られたのかなと想像しながら歌っています。

取材・文:THEATER GIRL編集部
Photo:梁瀬玉実

インタビュー後編はこちら

音楽劇「ライムライト」公開稽古レポートはこちら

公演概要

音楽劇『ライムライト』

2024年8月3日(土)~2024年8月18日(日)
シアタークリエ

スタッフ:
原作・音楽:チャールズ・チャップリン
上演台本:大野裕之
音楽・編曲:荻野清子
演出:荻田浩一

出演:
石丸幹二 / 朝月希和 / 太田基裕 / 植本純米 / 吉野圭吾 / 保坂知寿 / 中川賢 / 舞城のどか
ヴァイオリン:岸 倫仔 リード:坂川 諄 アコーディオン:佐藤史朗 ピアノ:荻野清子

公式サイト:https://www.tohostage.com/limelight/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

プロフィール

PICK UP

関連記事一覧