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咲妃みゆ×松岡広大インタビュー 『空中ブランコのりのキキ』「それぞれの価値観で命や自分の人生について、柔らかく目を向けていただけたら」(後編)

INTERVIEW

2024年8月6日(火)、世田谷パブリックシアターにて音楽劇『空中ブランコのりのキキ』が開幕します。

本作は、劇作家・童話作家として数々の名作を生み出してきた別役 実氏の傑作童話数作品を原作に、構成・演出の野上絹代氏1本の音楽劇として再構築し、北川陽子氏が脚本を、ジャンルを逸脱した特異なセンスを持ち、多くのアーティストやメディアに楽曲提供しているオオルタイチ氏が音楽を手がけた音楽劇。現代サーカス集団「ながめくらしつ」主宰の目黒陽介氏がサーカス演出監修を担当し、劇中で本格的なサーカスパフォーマンスが行われることでも注目を集めています。

今回、THEATER GIRLは、主人公・キキを演じる咲妃みゆさんと、ロロと象を演じる松岡広大さんにインタビュー。後編では、役者としてのお互いの印象のほか、タイトルにちなんだ質問を投げかけてみたところ、意外な告白も……!?

インタビュー前編はこちら

お互いに役者として尊敬している部分とは

――お二人は2021年のブロードウェイミュージカル『ニュージーズ』でも共演されていますが、お互いに役者として尊敬している部分を教えてください。

松岡:いっぱいありますね。

咲妃:追究する力は並外れたものがあるなと、3年前も、そして今回も思いました。稽古場でいろいろトライするために、しっかりと準備していらっしゃるように感じます。時には、必要に応じてそれをふっと手放す勇気も持っているんだろうなって。準備を怠らないからこそできるんですよね、きっと。ちゃんと役の核を捉えているから、どういうお芝居の返しがきたとしてもその人物でいられる。難しいことですが、松岡広大さんはできる役者さんなんだなと改めて感じました。

松岡:えっ、すごくうれしいです。

咲妃:あとは、もちろんお芝居ではあるんだけど、実際にそこに存在する人物同士として会話できているかどうかって……うーん、言葉で説明するのは難しいのですが……すごくわかるんですよ。

あー、自分は今“用意されたセリフ”を言ってしまっているな、と思うときと。ちゃんと目の前にいる人と心を通わせて、湧き上がる気持ちで言葉を届けられているな、というときでは、舞台上にいながら感じるものが全然違うんですね。

松岡さんはちゃんと相手の目を見て、相手の全身から放たれるものをキャッチしてお芝居をしていると感じるから。一緒にお芝居できることで、きっと私自身もグッと引き上げてもらえていると思うので……感謝してます! 以上です(笑)!

松岡:光栄です。このお話は絶対忘れません(笑)。

咲妃:あははは!

松岡:今のお話にあった、“ここに存在しているあなたにしゃべっているんだ”というのは、僕は咲妃さんからビシビシ感じます。それはつまり何かというと、言葉が通り抜けないってことなんです。ちゃんと、その言葉を言われた人のなかでとどまる、とどめさせる。それは、集中力と相手に対する信頼がないとできないと思います。

咲妃:そうだね。

松岡:見ていて自然っていうとすごくありきたりな言い方になってしまいますが、ノッキングを起こすことがないんです。お芝居だけではなく、普段から実感を伴って言葉を発されているんだなと感じています。それは、疑問だったり興味だったり、あるいはちょっと腑に落ちないことも(笑)。

咲妃:全部出てる?

松岡:はい(笑)。でも、その言語化のしかたも僕はいいなと思います。

咲妃:ホントに?

松岡:思っていることが態度に出るのって悪いことじゃないと思います。もしかすると、ご本人的には自制しなきゃと思う瞬間があるのかもしれないですが、見ていてホントに気持ちがいいんです(笑)。

咲妃:そうなんだ?

松岡:咲妃さんのなかに疑問や質問があって、それに対して深く考えていらっしゃるから、僕も自然と素直な芝居になるし、熱量や憂いも生まれます。きっと、ご自身のなかの感情をすごく使っていらっしゃるのかなと。

僕が好きな言葉の1つに、「俳優の特権は、自分のなかにある傷や悩みも使えることだ」というのがあって。たしか、イギリスの演技コーチの方の言葉だと思うんですが、彼女を見ていると本当にその通りだなと。ウソがなく、正直で、自分が何をしたいかがハッキリしているから、ついていきたいと思いますし、一緒に芝居をしたいと思うんです。それは他愛のない話も含めて、稽古場での居方も、人との向き合い方や距離の保ち方全部に対してそうで。それは悪い意味ではなくて、人の心に土足で入らずに対等に接してくださるので、僕も同じ目線で物事を見られたらいいなと思っています。

自身のアイデンティティを「○○の○○」で表すと……!?

――本作のタイトルはキキのアイデンティティを表しているように思うのですが、それぞれご自身のアイデンティティを「○○の○○」で表していただきたいなと。

咲妃:うわー、スゴい質問だ!私がパッと浮かんだのは、何故かあらゆる占いで最初に「相当頑固ですね」って、いっつも言われるんです。だから「頑固者の咲妃みゆ」だなと思うけど。頑固者という言葉が、ひと昔前の私はすごくイヤだったんです。そういうふうに見られたくないなとか、頑固者と言われないように協調性を持ってとか。自分の意見はまず後回しにしたり、どういう言い方をしたら当たり障りがないかを考えて過ごしていた時代もあるんですけど。

でもある時から自分に正直になってみたんです。そうしたら呼吸がしやすくなったし、周りの方との向き合い方もわかってきて。頑固者だと認めるのに時間はかかりましたけど、今は認めているし、それが私だって思えています。

――松岡さんは、いかがですか?

松岡:うーん……。パッと思い浮かんだのは、「我慢の松岡広大」ですかね。これまでの自分は、すごく我慢が多かった気がします。

――それは、お仕事で?

松岡:何か意見を通すときとか、どっちかというと今までは言われるがままだったことが多いなと思っていて。僕は自分のことを過小評価するクセがあるので、僕がここで議論することで時間をとらせるわけにはいかないとか、そういうふうに考えてしまって。でも、人に意思決定を委ねすぎるとまったく幸せになれないと気がついたので、だいぶ我慢することは少なくなりました。「雄弁は銀、沈黙は金」という言葉がありますが、場によってはそれを大切にしているところはあります。

――“周りファースト”ということですよね。

松岡:自分の時間は後で作ればいいから、まずは周りの人たちを、と考えてしまうところはありますね。

――とてもステキですが、役者という仕事をしていくうえでは、我を通さなければいけないときもあると。

松岡:我を通すというか、やっぱり俳優という仕事は自己暴露の芸術だと思うので、全部を我慢していたら、何も生まれないと思うんです。そういった意味では我慢はいらないのかなと思いますが、今回の稽古場では忌憚なく意見を言ってみなさんと共有できているので、とてもありがたい環境だなと思います。

咲妃:確実に松岡さんのなかには“こうありたい、こうしたい”という意志がある気がするので……って、どの立場で言ってるんだろうって感じですけど。自分で自分にYESと言える力を持つことができたら、彼はさらに強い魅力を放つんだろうなと思います。

松岡:ありがとうございます。

咲妃:今の、ちゃんと周りを大切にする松岡広大さんはそのままでいいんじゃないかと。いや、もう何の話?(苦笑)。

松岡:今の言葉を聞いて、頑固になってみたいと思いました(笑)。

咲妃:おっ! じゃあ、頑固者コンビで(笑)。

松岡:あははは!

咲妃:こんなふうに自分のあれこれを紐解く時間をいただけると思っていなかったので。ありがたい時間でした。

松岡:そうですね。

――では改めて、本作の上演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

松岡:まず、劇場にサーカス小屋が建つということが稀有ですよね。この役者さんを知っているからとか、行ったことのある劇場だからもう1回行ってみよう、とかどんなきっかけでも気軽に劇場に来ていただけたら、きっと騙されると思います(笑)。でも、その裏切りもまたこの作品の楽しみだと思いますし、何かを感じて持って帰っていただけると思います。

咲妃:この舞台に出会ってくださるみなさまが、それぞれの価値観で命について、そして、ご自分の人生について、柔らかく目を向けていただけたらうれしいです。芸術には様々なジャンルがありますが、そのすべてが実はどこかで交わっている気がします。多様な芸術に出会える時間をお届けできたらうれしいです。

取材・文:林桃
Photo:野村雄治

【咲妃みゆ】
ヘアメイク:千葉万理子
スタイリスト:國本幸江

【松岡広大】
ヘアメイク:堤紗也香
スタイリスト:九(Yolken)

インタビュー前編はこちら

公演概要

せたがやアートファーム2024
音楽劇『空中ブランコのりのキキ』

【原作】 別役実 (童話「空中ブランコのりのキキ」「山猫理髪店」「丘の上の人殺しの家」より)
【構成・演出】 野上絹代
【音楽】 オオルタイチ
【脚本】 北川陽子
【サーカス演出監修】 目黒陽介

【出演】
咲妃みゆ 松岡広大/玉置孝匡 永島敬三 田中美希恵/
谷本充弘 馬場亮成 山下麗奈/瀬奈じゅん
サーカスアーティスト : 吉田亜希 サカトモコ 長谷川愛実 吉川健斗 目黒宏次郎

【日程】2024年8月6日(火)~8月18日(日)
【会場】 世田谷パブリックシアター

【チケット料金】 (全席指定・税込)
一般 8,000円/18歳以下 無料 */ペア(一般1名+18歳以下1名) 4,000円

※未就学のお子様はご入場いただけません
※18歳以下は当日受付にて年齢およびご本人確認あり

要予約、劇場チケットセンターおよびオンラインチケットのみ取扱い、発券手数料あり
【お問合せ】 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 https://setagaya-pt.jp/
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】 世田谷パブリックシアター 【後援】 世田谷区
<ツアー公演>
【日程】 8月31日(土)13:30
【会場】 アクリエひめじ 中ホール
【お問合せ】 公益財団法人姫路市文化国際交流財団 制作チーム(姫路キャスパホール) 079-284-5806
【主催】 公益財団法人姫路市文化国際交流財団 【企画制作】 世田谷パブリックシアター 【共催】 姫路市

【『空中ブランコのりのキキ』 公式X(旧twitter)】 ユーザー名 : @kiki2024_sept
【『空中ブランコのりのキキ』 公式Instagram】 ユーザーネーム: kiki2024_setagaya
【世田谷パブリックシアター公式twitter】 @SetagayaTheatre
【『空中ブランコのりのキキ』公式ホームページ】 https://setagaya-pt.jp/stage/15937/

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観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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