翼和希インタビュー『レビュー夏のおどり』「その時にしか生まれないエネルギーをOSKで感じていただきたい」（前編）

2024.08.06

INTERVIEW

2024年8月7日（水）より東京・新橋演舞場にてOSK 日本歌劇団『レビュー夏のおどり』が上演されます。

1922年に大阪で誕生したOSK日本歌劇団。日本のレビュー文化を牽引し、今年で劇団創立102周年を迎えました。1928年には東京進出を果たし、2014年には新橋演舞場で初めての公演を行うなど東京でも多くの観客から愛され続けています。

そしてこの度、本公演でトップスターの楊琳さんと娘役トップスターの舞美りらさんがラストステージを迎えることとなりました。2人の門出となる本公演は、“ダンスのOSK”の呼び名に相応しい和と洋の二本立てのレビューが届けられます。連続テレビ小説『ブギウギ』で、趣里さん演じる主人公・スズ子の先輩である橘アオイ役としてお茶の間を魅了し、蒼井優さんとの共演も評判を呼んだ翼和希さんをはじめ、多才な劇団員が揃い公演を盛り上げます。

今回、THEATER GIRLは翼和希さんにインタビュー。前編では、本公演でラストステージを迎える楊琳さんと舞美りらさんへの思いを語っていただきました。

インタビュー後編はこちら

楊琳さんと舞美りらさんは「休憩している姿を見ない」

――今回の公演で楊琳さんと舞美りらさんがラストステージとなります。今のお気持ちを聞かせていただけますでしょうか。

一つの舞台に対しての気持ちは変わらないのですが、最初はまだまだ先の話だと思っていたのが、松竹座と南座公演を経て気がついたらもう7月末（※もしくは８月）で、本当に卒業されるということを実感し始めています。

OSKの芸事だけではなく、OSKに対する気持ちと支えてくださっている方々やお客様への気持ち、志という点でも、最後の最後まで盗めるものは盗んでいきたいという思いです。お二人の芸に対するストイックさを取り入れて、自分の限界にも挑戦できるように頑張りたいです。そうやって自分のマックスをこの舞台にぶつけることで、また何かの力になれるのかなと思います。

――稽古場でもお二人から刺激を受けることが多いですか？

お二人は舞台に出ていらっしゃらないときも、端の方でお稽古されている姿が常に視界に入っていました。稽古が始まってからずっと踊っていらっしゃって、休憩している姿を見たことがありません。製作発表記者会見では「もがいてる」とおっしゃっていましたが、全くそんなふうに見えなくて。

いつも通りのストイックな姿に見えますし、それを続けているのがすごいと思いました。常に自分で重箱の隅をつついている感じで、人に意見を求めることはもちろん、自分に対しても妥協を許さずに、小さい埃ですらも見つけるくらいの勢いでお稽古されています。その姿を見て自分も鼓舞されますし、とても刺激を受けますね。

生のエネルギーは生でしか感じ取れない

――今回は和と洋の2部構成でそれぞれのテイストも異なっていますが、それぞれどんなところが見どころになりそうでしょうか。

楊さんが最後にお一人で歌って踊られるところは、歌詞も楊さんが考えられたお歌になっているので、メッセージ性や楊さんの人柄がすごく出ているあたたかいシーンとなっています。その前の舞美さんたちの蝶々もすてきで……。まぁ、全部ですよね（笑）。1部はそれくらい見どころが詰まっています。

2部は題名の通り、踊りまくりです。楊さんと舞美さんが様々な種類のダンスを踊るので、歌劇というものを知ってもらえると思います。楊さんが裸足で踊られる姿を目に焼き付けていただきたいです。これは映像では伝わらないですし「生で見て、まばたきしないで」と思うくらい！　生のエネルギーは生でしか感じ取れないし、そういうところが舞台の醍醐味だと思います。

102年の歴史からも「舞台に立てることが当たり前じゃない」と実感

――今回の公演で楊琳さんと舞美さんがラストステージとなりますが、今後のOSKにどんなことを期待されますか。

お二人はとても謙虚な方だから、「私たちが残せたものは……」とおっしゃりますが、芸に対するストイックさや自分をどれだけ鼓舞するか、お二人は全て背中で見せるタイプだったと思っています。「背中にはその人自身が表れるもので、自身が輝けば舞台は輝く」と楊さんもおっしゃっていました。そんなお二人の姿を間近で見られる機会は今しかないですし、ずっと追いかけてきた背中だったので穴があくまで見ようと思っています。

劇団が歩んできた歴史としては紆余曲折あって、その中で学んだことはとても大きいです。102年の歴史の中で私は12年しかいないけれど、当時戦ってくださった先輩方がいて、支えてくださっている方々がいたからこそ「舞台に立てることは当たり前ではない」という気持ちです。その気持ちを常に持ち続けないと舞台人として失格だと思いますし、感謝の気持ちを忘れずに、貪欲にやり続けられるのがOSKだとも思っています。そういう志や気持ちみたいな目に見えないものを、最後の最後まで学んで、それを自分も伝えていかないといけないと思っています。