松岡 充インタビュー ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』 「自分たちにしか創れないものをきちんと観客に手渡ししたい」(前編)
ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』が、2021年11月3日(水)のプレビュー・埼玉公演から始まり、名古屋・山口・香川・大阪・神奈川での公演を経て、11月25日(木)から東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されます。
本作は、童話「シンデレラ」を下敷きに創作された現代版シンデレラストーリー。楽曲を手がけるのは、ミュージカル『メリー・ポピンズ』の追加楽曲や、ミュージカル『ホンク!』などで知られる作曲家ジョージ・スタイルズと作詞家アンソニー・ドリューのコンビです。魅力的な音楽と共に、青年・ロビーと、彼の恋人でロンドン市長選の候補者・ジェイムズのチャーミングなカップルによる恋物語が爽やかに描かれています。
2019年3月に日本初演として公演された本作。初演に続き、演出は元吉庸泰さん、ロビー役を林 翔太さん、ジェイムズ役を松岡 充さんが務めます。そのほか、東山光明さん、綿引さやかさん、西川大貴さん、豊原江理佳さん、菜々香さん、青野紗穂さん、水 夏希さん、松村雄基さんといった豪華な顔ぶれがそろいました。
今回THEATER GIRL編集部は、松岡 充さんにインタビューを敢行。前編となる今回は、再演が決まったときの気持ちから、相手役を演じる林 翔太さんの印象、カンパニーの雰囲気などをたっぷり語っていただきました。
苦しい時間が過ぎる中で「それでもこの作品を再演しよう」
――まずは、再演が決まったときのお気持ちからうかがえますでしょうか?
2019年の初演の全公演が終わったあと、カンパニーだけではなく制作スタッフやプロデューサーの方々と「またこの作品を絶対やりたいよね」と話していまして。僕もそのときからずっと、なるべく早くできたらいいなと思っていました。
コロナ禍になって、エンターテインメント業界にとって苦しい時間が過ぎる中で「それでもこの作品を再演しよう」と、この『ソーホー・シンダーズ』を選んでくださったことは、通常時の再演オファーの何十倍も嬉しかったです。
エンタメ業界もだんだんと復活していく中で、その中の一つとして、『ソーホー・シンダーズ』がやれるということは本当に喜びも大きいです。
自分たちにしか創れないものをきちんと観客に手渡ししたい
――このご時世だからこそ、より嬉しさが増したのですね。本作で、松岡さんはロンドン市長選の立候補者であるジェイムズ・プリンス役を演じられますが、2019年版と比較して役ヘの取り組み方に違いはありますか?
ジェイムズ・プリンスはロンドン市長を目指している元水泳選手なのですが、そんなジェイムズがロンドン市長になって何を成し遂げようとしているのか。そこにはパートナーであるマリリンの存在であったり、愛しているロビーの存在であったりが関係しています。
たとえば、ロンドン市民の中にも自分のことを肯定できずに否定していかなければいけない人生を送っている人たちがいるんですよね。そういう人たちに対して、「僕が、誰もが自分の人生を肯定できるような世の中にするんだ」といった意味での立候補を彼はしているのではないかなと思っています。
初演のときは正直そこまで理解できていなかったですし、突き詰められていませんでした。もちろん台本に書かれていることを忠実に表現していったつもりですが、今回の再演では台本のさらに奥、行間どころではなくその奥にあるもの。作者がどういうつもりでこの台詞を書いたのか、役を描いたのかというところまで深掘りしていきたいなと思っています。
そしてもう一つ僕がずっと心に決めていることがあって。ロンドンのウエストエンドで生まれたミュージカルではありますが、僕らは日本人だし、観客もほとんどが日本人です。やはり日本人だからこそ伝えられる表現があると思うんですね。だからウエストエンドの作品をそのままコピーするのは違うなと。我々が2021年のコロナ禍の真っ只中にこの作品をやることで、それでも「この人たちが発信するものを見てみたい」という方たちがいるのであれば、その方たちにきちんと手渡しできるメッセージやパワーを込めなくてはいけないなと思っています。そこは心に刻んでおきたいですね。コピーはせず、いいところはいただいて我々にしか創れないものを届けていかなければいけないなと感じています。
――初演から少し時間を経て、今回はさらに深いところを読み解いて、取り入れているような感覚なのですね。
そうですね。それを読み解いて、ただ深堀りして、研究していくだけではなく、それが今の僕らに対して必要なメッセージであるか、今来てくださる観客の方々に対して、届けるべきメッセージであるか、もちろん精査はしていかなければいけません。