鈴木拡樹インタビュー　舞台『アルキメデスの大戦』「今後への希望になるような作品になったら」（前編）

2022.07.28

INTERVIEW

2022年10月1日よりシアタークリエにて、舞台『アルキメデスの大戦』の幕が開き、その後全国を巡ります。

一度は2020年6月に上演が予定されていたものの、コロナ禍の影響により、稽古が始まることもなく全公演が上演中止に。この度ほとんどのキャスト陣が再集結し、2年ぶりの再始動が叶うこととなりました。

原作は『ドラゴン桜』や『インベスターZ』などユニークな作品で鋭く時代に斬り込む漫画家・三田紀房氏による、数学者の視点から第二次世界大戦を描いた漫画『アルキメデスの大戦』。そのかつてない切り口が話題を呼び、2019年の夏には映画監督・山崎貴氏によって映画化もされました。

舞台化にあたって脚本と演出を手掛けるのは、いま演劇界が最も注目する劇団のひとつ、劇団チョコレートケーキのクリエイター陣。独自の視点で史実に隠されたドラマを紡ぐ古川健さんが脚本を手掛け、骨太な作品の中に人間の心情を丁寧に描く日澤雄介さんが演出を務めます。

主人公の天才数学者・櫂直（かいただし）役を務めるのは、多くの舞台に出演し、近年では映像にも活躍の場を広げている鈴木拡樹さん。彼を取り巻く海軍将校たちには、巨大戦艦の建造に反対し、櫂に大和建造を阻止させようとする海軍少将・山本五十六役に神保悟志さん、巨大戦艦の建造を推し進める海軍少将・嶋田繁太郎役に小須田康人さん、そして櫂が真っ向から戦うことになる嶋田派の造船中将・平山忠道に岡田浩暉さんと、ベテラン勢が揃いました。

また、櫂を補佐する海軍少尉・田中正二郎役には宮崎秋人さん、田中と共に櫂に協力する尾崎財閥令嬢の尾崎鏡子役に福本莉子さん、嶋田派の海軍中尉・高任久仁彦役には近藤頌利さんと、若手も名を連ねます。

今回THEATER GIRLは、主演・櫂直役の鈴木拡樹さんにインタビュー。前編では再始動が決まった時の心境や、舞台版ならではの見どころ、役柄の印象やご自身との共通点・相違点などについて語っていただきました。

インタビュー後編はこちら

裏テーマは「今後への希望になるような作品に」

――当初は2020年6月に上演予定だった今作ですが。全公演中止を経て、2年越しの公演が決定しました。再始動の知らせを受けた時の気持ちはいかがでしたか？

2020年の時には稽古をすることもなく終わってしまったので、今回またキャストがほぼ変わることなく集まることができたのは、リベンジをするという意味ではきちんと意味のある公演になりそうだなと受け止めています。コロナが始まった時期に予定していたこの作品が、改めて２年の時を経て今年10月から公演をスタートして、きちんと最後まで問題なく終えることによって、本作が今後への希望になるような作品になればいいなと思いますね。

舞台版の見どころはダイレクトに伝わる熱量

――原作となるコミックスは映画化もされていますが、舞台版での見どころはどんなところになると思われますか？

映画は僕も拝見したのですが、大きな（戦艦）大和が出てきて、大興奮しました。舞台でより特化できるところとなると、やはりナマの熱量だと思います。特に口論となるシーンや、櫂が数式を黒板に書きながら数学を武器に論破していくようなシーンは、その熱量がダイレクトに伝わる良さがあるのではないかなと思うので。舞台化するのにとても向いている作品だと感じます。

櫂は変わった人「でも、変わってる人って魅力的なんですよね」

――ご自身が演じられる櫂直という役柄について、どんな人物だという印象を受けたかや、自分と近い部分あるいは遠い部分について聞かせてください。

自分とはかなり遠いなぁと思います。やはり、天才っていうのは理解しがたいとはいいますけど、変わってますね！（笑）　もうちょっと言葉を選んだほうがいいのかもしれませんが、第一印象はそれでした。でも、変わってる人って魅力的なんですよね。だから僕も櫂直という人物のことをもっと知りたくなりましたし、役として演じることで、より深く知ることができるチャンスなのではと思います。稽古中だけではなく、毎公演その魅力に気付いていけそうな気がしますね。それから、ひとつ全く僕とちがうのは、櫂さんは同時進行でいろいろなことを考えらえられるところ。その能力が僕にもあったらいいなとすごく思います。