キムラ緑子インタビュー 舞台『有頂天作家』「改めて声に出して台詞を読んだとき、以前の感じとは違うものになっていました」(後編)
1月15日(土)より京都・ 南座にて、2月1日(火)より東京・新橋演舞場にて、《喜劇名作劇場》 恋ぶみ屋一葉『有頂天作家』が開幕します。
渡辺えりさんとキムラ緑子さんがタッグを組み、大好評を博している 『有頂天シリーズ』。第4弾となる今回は、名優・杉村春子さんに書き下ろされ、読売演劇大賞・最優秀作品賞を受賞した『恋ぶみ屋一葉』がタイトルを改め、『有頂天作家』として上演されます。
本作は2020年3月・4月に上演予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、公演が中止に。このたび約2年の時間を経て、改めて上演が決定しました。
舞台は明治43年。花街で働く女性たちの手紙の代筆屋を営むキムラ緑子さん演じる前田奈津と、渡辺徹さん演じる人気作家・加賀美涼月は、若いころに小説家を目指して切磋琢磨した仲。現在でも相談相手として関係が続いていました。そこに21年前に死んだと思われていた、渡辺えりさん演じる親友・小菊が現れ、思わぬ方向へ物語は動き出します。涼月をめぐる二人の恋模様。コミカルに、そして繊細に描かれる大人の恋物語に期待が寄せられます。
そのほか、キャストには芸者の桃太郎に大和田美帆さん、弟子入りを志願する羽生草助に影山拓也さん(IMPACTors / ジャニーズJr.) 、編集者の谷初子に春本由香さん、花魁の此花 に瀬戸摩純さん、涼月の弟子・片桐清次郎に長谷川純さん、編集者の田熊に宇梶剛士さんという豪華な布陣がそろいました。
THEATER GIRLでは、前田奈津役を演じるキムラ緑子さんにインタビューを敢行。インタビュー後編となる今回は、カンパニーへの印象、キムラさんが舞台のお仕事をしているときにやりがいを感じる瞬間、本作に対する意気込みなど、たっぷりと語っていただきました。
「素晴らしい方々と一緒にやれていることを忘れずに」たくさん勉強したい
――4回ゲネプロを重ねた本作は、カンパニーの皆さんにとってかなり特殊な舞台だと思います。今回初めて公演するものの、初めてではないような感覚もあると思いますが、改めてカンパニーの皆さんの印象はいかがですか。
演出家の齋藤雅文さんは劇団新派の方なので、周りも新派の方が多くて。いろいろと助けていただいています。こないだ新派さんのお芝居を観に行ったのですが、本当に素晴らしくて感動したんですよ。この日本のイメージ、明治大正の時代をやるにおいて、あの劇団はピカイチです。というのも、やっぱりその時代に近い人たちがいて、その技術を持っている熟練者の方たちがたくさんいらっしゃるから。
お琴、三味線、立ち居振る舞い、着物の所作から、皆さん本当に素晴らしくて、こういう題材をやるときにこの方たちがいなかったら、もう語り継いでいけないのかなと思って。そういう方々と今一緒にやれているからこそ、教えてもらえることがもっともっとたくさんある。前回私は自分のことで精一杯で「こうですか?」と聞くこともできなかったのですが、今回は絶対に教えてもらおうと思っています。自分のことだけにかまけていないで、素晴らしい方々と一緒にやれていることを忘れずに、そのことにもっと目を向けて、いっぱい助けていただきたいなと。
匂いを知らないからこそ、その時代のことを知ろうとする気持ちは大切
――劇団新派さんの技術に圧倒されていらっしゃるのですね。今回ご一緒するキャストの方々は、キャリアがまた全然違いますよね。その点はいかがでしょうか。
今回本当にいろいろですよね。ジャニーズの方がいらっしゃったり、私みたいな小劇場出身の人もいたり、まぜこぜの状態。そんなメンバーでお芝居を作れるなんて、つまり相当面白いことになるはずなんですよ。そのことをもっと実感しながら楽しまないといけないなと思います。
今の人たちにとって、明治時代を身近に感じるのは難しいじゃないですか。だからその当時の映画とか、ドラマをたくさん観てほしいなと思います。時代の匂いを知らないからこそ、お芝居をするうえで知ろうとする気持ちは大切ですよね。
ジャニーズの長谷川くんや影山くんの若々しさがこの芝居の華になる。とても素敵なお二人です。これからこのお芝居を、彼らにとって遠い時代をどう生きるのか、 期待の気持ちを込めて見ていますね。 自分も頑張らないとと思います 。私たちと遠い世界だからこそ、みんなで頑張って想像して埋めていかないとですね。
――令和とは全く違う時代だからこそ、丁寧に紐解いていかないといけないですよね。
やっぱり現代のお話ではないので、堅いんですよね。真面目といいますか、あの時代の純情な話だから。 先生が好きでついていきたい一心で、そこに座り込みして弟子にしてもらうじゃないですか。今はそんなことほぼないですよね。アルバイトの子が挨拶しないで辞めていくこともあるような時代。だからこそ、当時のことをどう想像するかですね。先生のことをどれほど慕っていたか、死ぬほど人を愛する気持ち、21年前に死んだと思っていた人に再会する気持ち、身売りされることがどういうことなのか、現代ではなかなか想像しにくい状況を、役者個人の経験と想像力で埋めていくことが大事になっていくと思います。