キムラ緑子インタビュー　舞台『有頂天作家』「改めて声に出して台詞を読んだとき、以前の感じとは違うものになっていました」（前編）

2022.01.25

INTERVIEW

1月15日（土）より京都・南座にて、2月1日（火）より東京・新橋演舞場にて、《喜劇名作劇場》恋ぶみ屋一葉『有頂天作家』が開幕します。

渡辺えりさんとキムラ緑子さんがタッグを組み、大好評を博している『有頂天シリーズ』。第4弾となる今回は、名優・杉村春子さんに書き下ろされ、読売演劇大賞・最優秀作品賞を受賞した『恋ぶみ屋一葉』がタイトルを改め、『有頂天作家』として上演されます。

本作は2020年3月・4月に上演予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、公演が中止に。このたび約2年の時間を経て、改めて上演が決定しました。

舞台は明治43年。花街で働く女性たちの手紙の代筆屋を営むキムラ緑子さん演じる前田奈津と、渡辺徹さん演じる人気作家・加賀美涼月は、若いころに小説家を目指して切磋琢磨した仲。現在でも相談相手として関係が続いていました。そこに21年前に死んだと思われていた、渡辺えりさん演じる親友・小菊が現れ、思わぬ方向へ物語は動き出します。涼月をめぐる二人の恋模様。コミカルに、そして繊細に描かれる大人の恋物語に期待が寄せられます。

そのほか、キャストには芸者の桃太郎に大和田美帆さん、弟子入りを志願する羽生草助に影山拓也さん(IMPACTors ／ジャニーズJr.) 、編集者の谷初子に春本由香さん、花魁の此花に瀬戸摩純さん、涼月の弟子・片桐清次郎に長谷川純さん、編集者の田熊に宇梶剛士さんという豪華な布陣がそろいました。

THEATER GIRLでは、前田奈津役を演じるキムラ緑子さんにインタビューを敢行。インタビュー前編となる今回は、改めて公演が決まった現在のお気持ち、役に対する印象、共演の渡辺えりさんについて、たっぷりと語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

「絶対に皆さんに楽しんでもらいたい」そんな気持ちが強く心の中で湧き上がっている

――一度コロナ禍で中止になってしまった本作ですが、改めて公演が決まり、現在はどんなお気持ちですか？

とても不思議な気持ちです。2年近く前にこの作品のことを取材していただいて、いろいろと語ったのを思い出して、「こんな不思議なことがあるんだな」と思いました。お稽古したものの、お客さまに共有することはなく、このお芝居を2年近く寝かせて、それでやっと皆さんの前でお芝居ができる。改めて公演できることがただ嬉しくて、絶対に皆さんに楽しんでもらいたい。そんな気持ちが強く心の中で湧き上がってくるのを今感じています。

前回中止になってから、えりさんが八嶋智人さんや高畑淳子さんと舞台をやられていてちょっとジェラシーみたいなものを感じちゃって（笑）。改めてまたえりさんと一緒にお芝居できること、齋藤さんの演出を受けられること、また前回と同じメンバーでできることが嬉しいです。この人たちともう一度新しく、さらに深くこのお芝居にかかわれるように、本番までの一ヶ月は使いたいなという気持ちでいっぱいです。

お芝居を寝かせたからこそ、身体の深いところに台詞が入っていった感覚

――以前ゲネプロまでやられている本作ということで、久しぶりといえど稽古はやりやすいものなのでしょうか？

先日本読みをしたのですが、この2年弱で確実に年を取っているなと感じました。でもそれはいい意味として私は捉えていて。先ほどお芝居を寝かせたと言いましたけれども、やっぱり寝かせるって面白い作業なんですよ。脳や身体の深いところに台詞が眠っていて、起きあがったというか、忘れてはいるのですが、奥の深いところに入っていった感じがあるんです。

前にやっていたときとは全く違う感覚になりました。なので、とても面白かったですね。表面的なものではなく、もっと真髄に入っていった実感がありました。他の皆さんの台詞を聞いていてもそう感じましたね。寝かせるなんてちょっとワインみたいですけど（笑）、きっとそういうことも身体の中であるんだろうなと。人間って面白いなと思いました。

渡辺えりさんは「遠いところの目指す存在」、一緒にお芝居できるこの時間を大事に

――今回『有頂天シリーズ』第4弾ということで、改めてキムラさんにとって渡辺さんはどんな存在ですか？

えりさんとは本当にいろんなことがあって、すごい役者だなと思います。いつも刺激を受けていますね。いつも厳しく、いつも明るく、いつもたくましくて。そんなえりさんと丁々発止でお芝居させていただけることもあまりないので、私の人生の中でも貴重で、大切なところに今いるんだなという感じです。えりさんからもらったものが本当にたくさんあります。一緒にお芝居できるこの時間を大事にしたいですね。