鈴木拡樹インタビュー 舞台『アルキメデスの大戦』「今後への希望になるような作品になったら」(後編)
2022年10月1日よりシアタークリエにて、舞台『アルキメデスの大戦』の幕が開き、その後全国を巡ります。
一度は2020年6月に上演が予定されていたものの、コロナ禍の影響により、稽古が始まることもなく全公演が上演中止に。この度キャスト陣が再集結し、2年ぶりの再始動が叶うこととなりました。
原作は『ドラゴン桜』や『インベスターZ』などユニークな作品で鋭く時代に斬り込む漫画家・三田紀房氏による、数学者の視点から第二次世界大戦を描いた漫画『アルキメデスの大戦』。そのかつてない切り口が話題を呼び、2019年の夏には映画監督・山崎貴氏によって映画化もされました。
舞台化にあたって脚本と演出を手掛けるのは、いま演劇界が最も注目する劇団のひとつ、劇団チョコレートケーキのクリエイター陣。独自の視点で史実に隠されたドラマを紡ぐ古川健さんが脚本を手掛け、骨太な作品の中に人間の心情を丁寧に描く日澤雄介さんが演出を務めます。
主人公の天才数学者・櫂直(かい ただし)役を務めるのは、多くの舞台に出演し、近年では映像にも活躍の場を広げている鈴木拡樹さん。彼を取り巻く海軍将校たちには、巨大戦艦の建造に反対し、櫂に大和建造を阻止させようとする海軍少将・山本五十六役に神保悟志さん、巨大戦艦の建造を推し進める海軍少将・嶋田繁太郎役に小須田康人さん、そして櫂が真っ向から戦うことになる嶋田派の造船中将・平山忠道に岡田浩暉さんと、ベテラン勢が揃いました。
また、櫂を補佐する海軍少尉・田中正二郎役には宮崎秋人さん、田中と共に櫂に協力する尾崎財閥令嬢の尾崎鏡子役に福本莉子さん、嶋田派の海軍中尉・高任久仁彦役には近藤頌利さんと、若手も名を連ねます。
今回THEATER GIRLは、主演・櫂直役の鈴木拡樹さんにインタビュー。後編ではカンパニーの印象や、多様な舞台表現の面白さ、多彩な活動を通じて実感した舞台の魅力について語っていただきました。
インタビュー前編はこちら
カンパニーをまとめるキーマン、鈴木さんが思う適役とは?
――共演者陣には宮﨑さん、近藤さんといった若手から、並みいる海軍将校にはベテラン勢までが揃っていて、熱い会話劇を繰り広げることになります。稽古場での空気も熱のこもったものになりそうですが、カンパニーの雰囲気はどうなっていきそうな予感がしていますか?
物語の中では対立する関係があるので、その部分ではヒートアップしていくだろうなとは思うんですけど。普段はひとつの作品を作り上げている仲間ですから。そうですねぇ……みんなで他愛のない話もできるような、そんなカンパニーになっていくと嬉しいんですけど。年齢差もあるにはありますが、近藤頌利くんって、年齢問わずに場を上手くまとめられる子なんですよ。なので、彼がわりと場作りのキーマンになるんじゃないかなと思っています。
――同じ関西出身チームとして(笑)。
そうですね。で、また秋人くんもそういうところ、上手いですから。年齢が離れていたり、キャリアもバラバラだったりはしますけど、うまく繋ぎ合わせられるんじゃないかなと思っています。なので、そんなに不安視はしてないですね。
今作の肝になるのは「置き去りのテンポ感の心地良さ」
――先ほどもあったように今作は会話劇ということで。客席も置いていかないよう巻き込んでいきつつ、同時に魅せていくという、役者としては技量を試される作品になるのではと思うのですが、いかがでしょうか?
テンポは変えるべきだと思っています。そのためにも、これは全体意識としてになると思いますが、ここはしっかりと(客席が)付いてこられるペースを敢えて作っておいて、ここは置いていくという認識を、しっかりと明確に持っておいたほうがいいと思うんです。この作品のいちばんの肝になってくるのは多分、置いていくテンポで。熱に当てられた客席を置いていく、そういった熱の当て方をどのくらいするのか。それが多分刺激になるポイントだと思うので。置いていくにしても、置いていき過ぎたらもう、なんのこっちゃになっちゃいますから(笑)。そういうメリハリが大事になってくるだろうなと思います。
――なるほど。「よくは分からないけど、すごい人たちがギリギリでしのぎを削ってるのは十分分かる」みたいな状況って確かに引き込まれますよね。
置き去りのテンポ感の心地良さというのを、共通認識として持っておきたいなと考えています。それ自体がおそらく作品の色になっていくと思うので。その上で、会話の温度感や距離感だけで色を出していくというか、そういう作業になっていくんだろうなと。