橋本さとしインタビュー 『キオスク』 「自分自身そこに携わる人間として“エンターテインメント”というものを信じている」
2021年1月22日から兵庫公演を皮切りに、東京、静岡、愛知、広島にて、舞台『キオスク』が上演されます。昨年12月から今年1月に小説を基にリーディング上演された本作が、今回は戯曲版でストレートプレイとして日本初上演されます。
今回お話をうかがったのは、ストレートプレイからミュージカルまで様々な舞台に出演するほか、「新解釈・三國志」など映像作品や「プロフェッショナル 仕事の流儀」のナレーションなど、幅広い分野で活躍している橋本さとしさん。今作への意気込みや役作りで準備をしていること、共演者の印象まで、たっぷり語っていただきました。
この年代になったからこそできる役柄
――では、まず『キオスク』への出演が決まった際のお気持ちを聞かせてください。
最初に『キオスク』というタイトルを聞いたときは、「駅にある売店の話?」と思ったんですけど、台本を読み始めたら、まあ夢中になりまして。「ウイーンのキオスク(タバコ店)はこういう場所なんだ」と、今まで自分の持っていたキオスクへのイメージが遠いところにいきました。ナチスドイツが台頭する激動の時代の中で、人々がどのように強くもがきながら生きてきたのか、とてもリアルに描写されている作品で夢中になって読みましたね。読み終わったときには「えっ、キオスク?」と思っていた気持ちがどこかに吹っ飛んで、すぐにプロデューサーに「出たいです」と連絡をしました。
――タイトルから連想するイメージと、台本をお読みになってからでは、作品のイメージがかなり変わられたんですね。
駅のホームのキオスクに、人々が買い物に来るといった、さりげない日常の話なのかと勝手にイメージしていたんですけど、もっと人間物語というか、一人の青年の人生を変えてしまうお話で。僕が演じるのは、その青年の人生観を変えるキーパーソンの一人で、キオスクの店主のオットーです。
オットーという人物の魅力的なところは、あのような時代でユダヤ人が虐げられたりする中、人種や宗教、哲学を超えたところでの人類愛を深く持っている部分。それを、意識して前面に押し出すのではなく、さりげなく生活の中に取り入れているところに、とても魅力を感じました。
抗うとか戦うのではなく、自然と色々な状況の人を受け入れるとても器の大きな男で。僕は、器がそんなに大きくないので(笑)、余計に「こういう男って格好いいな」と思いました。そこに、一人の男の人生が見えましたし、自分が今、この年代になったからこそできる役柄なのではという気がすごくしています。