福士誠治インタビュー 舞台『セールスマンの死』 「誰が見ても共感できる家族のお話」(前編)
2022年4月4日(月)より、東京・PARCO劇場にて舞台『セールスマンの死』が上演されます。
本作は、アーサー・ミラーの代表作で、世界中の名優が演じており、トニー賞、ニューヨーク劇評家賞、ピューリッツア賞を受賞しています。
主人公となる敏腕セールスマンのウィリー・ローマンが帰宅した月曜日の深夜から自ら命を絶つ火曜日の深夜までの24時間が描かれており、主人公のウィリー・ローマンを演じるのは、段田安則さん。そして、その妻リンダを鈴木保奈美さん、長男のビフを福士誠治さん、次男のハッピーを林遣都さん、兄のベンを高橋克実さん、友人のチャーリーを鶴見辰吾さんが演じます。
THEATER GIRLは、長男ビフを演じる福士誠治さんにインタビューを敢行。前編では、本作への思いや登場人物、ご自身の役についての印象を語っていただきました。
現代に通じる部分がある作品
――本作への出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたでしょうか。
僕は、本作のこともアーサー・ミラーさんのこともあまり知らなかったのですが、逆に事前のイメージがないからこそ、PARCOさんのプロデュース作品として、真正面から戯曲に挑戦できるのではと思いました。初めて触れる世界観なので楽しみです。
今まではコメディーやエンターテインメントなど、さまざまなジャンルの作品をやらせていただいてきましたが、今回は改めてガッツリとしたお芝居での作品作りになると思います。深いと一言で言うと逆に浅く聞こえてしまいますが、一人の人間の物語として1950年代頃にできあがった戯曲でありながらも、その時代背景にあるコンプレックスやプレッシャーなどの思いは、現代にも通じる部分があると思うので、そういうことも意識しながら演じたいです。
30歳を超えた役はイメージしやすい
――本作では、主人公の長男ビフを演じられますが、役柄の印象はいかがでしょうか?
何十年も前の家族のお話ですが、今と重なる部分がたくさんあると思います。僕の演じるビフという男の弱さや父親に対する裏切り、父親の期待に応えられない自分に対する失望といった現実を目の当たりにしていくところは、とても人間臭いと感じました。
彼の弱さでもありますが、すごく自信に満ちていた時代もあり、その両極端を回想シーンなどで演じる際には人間性を見せられたらいいなと思っています。人間は誰もが弱いものだと思うので 、その部分が家族の前では少し露見してしまう部分があるのかなと。
後半で父親に想いを吐露するビフを思うと、あながち弱いだけではなく、勇気を持っている人物であるとも思います。そういう部分も自分に投影しつつ、演じられたらと思います。
――実際、役作りをしていてご自身と似ている部分はありましたでしょうか。
30代を超えたという設定ですかね。自分が30歳を過ぎて社会に溶け込めずに家に戻ってきた上に父からの期待に応えられないという状態だとしたら、父親の仕事っぷりや若い頃からの家族内でのギクシャク感も加わって、切ないというかもどかしいというか。
20代前半なら「まだまだ俺はこれからだ!」と思えますが、30歳過ぎでこの状況は嫌だなということはイメージしやすかったです。似ているかというよりは、自分ならどう感じるかを探していきたいと思っています。