溝端淳平インタビュー 『毛皮のヴィーナス』 「舞台は毎日“生きている”って感覚が一番ある場所」（前編）
2022年8月20日（土）よりシアタートラムにて、『毛皮のヴィーナス』が上演されます。
本作は、「トラム、二人芝居」と称し、新進の演出家を起用し、実力派キャストによる二人芝居を上演する企画のうちの一作。
『毛皮のヴィーナス』は、“マゾヒズム”の語源にもなったオーストリアの小説家Ｌ・ザッヘル＝マゾッホの小説から想を得て、米劇作家デヴィッド・アイヴズが舞台用に戯曲を執筆し、2010 年にオフ・ブロードウェイにて初演された作品。オーディションを受けに来た女優と演出家、さらに戯曲の登場人物も交錯するという二重構造を駆使しつつ、人間が持つ根源的な性的欲望をスリリングに描き出していく、ライブ感あふれる舞台です。
演出を手掛けるのは文学座所属の五戸真理枝さん。女優ヴァンダ役を高岡早紀さんが演じ、ヴァンダに翻弄されながらも惹かれていく演出家・トーマス役を溝端淳平さんが演じます。
THEATER GIRLは、演出家・トーマス役を演じる溝端淳平さんにインタビュー。前編では、舞台では3度目の共演となる高岡早紀さんの印象や作品の見どころについてたっぷりと語っていただきました。
インタビュー後編はこちら
お話をいただいたときは「プレッシャーと喜びが半々な感じ」
――本作に出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか？
以前、森新太郎さん演出の『管理人』という作品でシアタートラムの舞台に立たせていただいたときも、ものすごく光栄なことだったんですが、今回はさらに一人減って二人芝居なので、一つハードルの高いオファーをいただけたという感じで嬉しかったですね。
もしかしたら次は一人芝居かも……いや、分からないですけど（笑）。でも、ものすごく緻密に計算されている戯曲で主従関係がどんどん変わっていく。人に属すること、属されることの真意とは何なのか？といった深いテーマが盛り込まれていてとても面白い企画だなと感じました。それと同時にすごくハードルが高く感じて、プレッシャーと喜びが半々でしたね。
――今回、舞台では3度目の共演となる高岡早紀さんとの二人芝居になりますが、改めて高岡さんの印象はいかがですか？
周りに気を遣わせない佇まいで、非常にナチュラルな方です。キャリアのある方なので最初は緊張すると思うんですけど、早紀さんの醸し出す雰囲気というか空気感ですごくリラックスさせてもらっています。人間としてもとても素敵な方ですし、俳優としても先輩としても頼れる存在です。
――今回、高岡さんとの二人芝居ということについてはいかがでしょうか？
二人芝居って、本当に二人の呼吸が合わないと難しいと思うんです。 10人、20人出る舞台なら、場面が変わったり出る役者も変わったりというように補い合うこともできますが、二人芝居だと、二人が噛み合わないまま、最初から最後まで終わってしまう可能性もあるじゃないですか。
そういう意味で言うと、密室劇でさらに二人の会話劇というのは非常にハードルが高いのですが、早紀さんは波長が合うと言いますか、緊張と緩和のバランスがとても合う方だと感じています。
合間に他愛もない会話もしますが、役に入ったときの集中力がすごい方なので、二人芝居の相手役としてはこの上ない方だと思いますね。その辺りは何の不安もなく、非常に信頼を置かせていただいています。
本作は「哲学的な色気が所々に隠されている作品」
――本作はオーディションを受けに来た女優と演出家、 さらに戯曲の登場人物も交錯するという二重構造を駆使しつつ、人間が持つ根源的な性的欲望をスリリングに描き出していくとのことですが、どのような部分が見どころになっていきそうでしょうか？
どちらが主導権を握っているのか分からないところが、この作品の面白い部分だと思います。ただマウントを取り合う訳ではなく、 捉え方によってこんなにも変わってくるものなのか、と。
この作品は直接的に触れあったり、キスシーンやベッドシーンがある訳ではなく、 「手にキスする」というシーンでも、あえて手を触れずに、キスをするふりをするんです。でもそこが逆に哲学的な色気というか、そういったものが所々に隠されている作品だと思うので、その辺も楽しんでいただければと思います。
いわゆる分かりやすいエロスではなく、 もっと深い意味のものが観られる作品になっています。現代の作品は直接的な表現が多い気がするので、逆に新鮮に感じるのでは？と思います。
演出の五戸さんは「喋れば喋るほど、奥にマグマのようなものを感じる方」
――本作では、五戸真理枝さんが演出を務められますが、 五戸さんの演出に期待されていることや楽しみにしていることはありますか？
五戸さんは、先ほどもお話した『管理人』という作品に、演出助手として入ってくださっていて。ハロルド・ピンター作の不条理劇で本当に大変な作品でしたが、 そのときもいろいろと支えてくださったので、とても優しい方という印象です。
ただ、演出家としてのスイッチが入ったときの五戸さんがどういう感じなのか、まだちょっと想像がつかないですね。楽しみでもありつつ、少し身構える部分もあります。五戸さんは一見優しくてとても柔らかい雰囲気ですが、この作品を舞台化したい方ですし、喋れば喋るほど奥にマグマのようなものを感じたりもするので、そういった部分に触れつつも、いい感じに染められたらなと思いますね。
――これから稽古が始まるのが楽しみですね（取材時）。
そうですね。ただ、相手役も早紀さんで、演出も五戸さん、今回のスタッフさんも女性が多いので、女性に囲まれて男一人でどう頑張ればいいかなっていう不安はあります(笑)多数決になるとすでに負ける気がしています(笑) でも皆さんにガッツリ染められたいと思います！
取材・文：THEATER GIRL編集部
撮影：くさかべまき
ヘアメイク：菅野綾香
スタイリスト；黒田領
衣装協力：エストネーション（電話番号：0120-503-971）シャツ 2万2000円、その他 スタイリスト私物
インタビュー後編はこちら
公演概要
『毛皮のヴィーナス』
作：デヴィッド・アイヴズ
翻訳：徐賀世子
演出：五戸真理枝
出演：高岡早紀 溝端淳平
日程：2022 年 8 月 20 日（土）～9 月 4 日（日）
会場：シアタートラム
チケット料金：一般：全席指定 7,000 円 ※ほか高校生以下、U24 など各種割引あり
チケット取扱い：世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(10～19 時)
世田谷パブリックシアターオンラインチケット https://setagaya-pt.jp/
※託児サービスあり ※車椅子スペース取扱あり
世田谷パブリックシアター公式 Twitter：@SetagayaTheatre
お問合せ：世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515
主催：公益財団法人せたがや文化財団
企画制作：世田谷パブリックシアター
後援：世田谷区
公式サイト：https://setagaya-pt.jp/performances/202208venusinfur.html
