萩原みのりインタビュー 舞台『裏切りの街』「この作品を舞台でやることの意味を毎日感じている」(前編)
髙木雄也さんが主演を務める舞台「裏切りの街」が3月12日から東京・新国立劇場 中劇場にて、3月31日から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演されます。
本作は、人間のリアルを描いた「愛の渦」や「何者」を手掛けた三浦大輔さんが作・演出を手掛ける作品で、フリーターと平凡な専業主婦による不倫を描いた物語です。昨年5月から6月にかけて上演される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となり、2022年3月待望の上演となります。
本作の主人公であり、人生から逃げて逢瀬に溺れるフリーター・菅原裕一役を髙木雄也さんが演じます。また、菅原の相手役・橋本智子を奥貫薫さん(※当面の間は呉城久美さんが代役を務めます)、智子の夫・浩二役をお笑い芸人“とろサーモン”の村田秀亮さん、浩二の部下・田村を米村亮太朗さんが演じるなど実力派の出演者が揃いました。音楽は、初演に引き続き銀杏BOYZが担当します。
今回THEATER GIRLがお話を伺ったのは、主人公・菅原裕一の恋人で会社員・鈴木里美役を演じる萩原みのりさん。前編では、2020年に公演中止になった当時の気持ち、作品や役柄への思いを伺いました。
この作品は、ずっとやりたくてしょうがなかった
――まず、萩原さんの思う”三浦さんの作品の魅力”を教えていただけますでしょうか。
三浦さんの作品は「何者」ぶりで2度目なんですが、舞台は初めてで。でも舞台のお芝居をつけてもらっているというよりは、映像の時と感覚的にはあまり変わらないですね。動きというよりも、すごく細かい心の奥の部分を決めていってくださる感じです。一言一言というよりも、一文字単位で神経を使いながら「この言葉はこの音で出すのはどうか」と、ちゃんと中身を動かしながら気を付けて言葉を発している日々です。台詞一つ一つの重みを感じています。
――本作は2020年に上演予定だったものが中止になってしまい、今年改めて再演となりましたが、当時、オンラインでの稽古に難しさはありましたか?
当時は髙木さんといろんなシーンをやってみても、少し前かがみの状態で、パソコンの画面に向かって台詞を喋っているので目が合うこともなくて、出来ているようで出来ていなくて。
ただ、その時はいつか会えると思っていたので、そこに向けて本読みのような気持ちで準備をする感覚だったんですけど、そのまま中止になってしまって……。
――中止になってしまった時のお気持ちは覚えていらっしゃいますか。
最初、”中止”ということがあまり理解出来なくて。目の前にはたくさん付箋が貼られた台本があるし、すごく準備もしていたので。この作品に出ることが本当に楽しみなのに「なくなるってどういうことなんだろう」と漠然と思っていました。
三浦さんが改めてオンラインでみんなを集めて、画面上で「中止になったことが決まりました」と発表された時に、涙が止まらなくて。その後も数日間ずっと涙が止まらなくてずっと泣いていました。全部取り上げられてしまったような気持ちで。
もともと映画を観ていて、この作品が好きでしたし、昔からお世話になっている三浦さんと再びお仕事ができるということもあって、いつも以上に、インする前から思いがかなり強かった作品だったので。
共演者の中に中山求一郎という役者がいて、求ちゃんも「何者」の時から三浦さんにお世話になっていて、戦友のような、幼馴染みのような感じなんです。一緒にいろんなものを見てきたし、悔しい思いをしながらも頑張った仲なので、彼とまた一緒にお仕事できるという思いも強かったので。
――今年改めて上演となりますが、当時のモチベーションを改めて今保つことは出来るものなのでしょうか。
なくなった時は結構引きずっていましたが、モチベーションをあげるのが大変というよりは、ずっとやりたくてしょうがなかったので「あ、よかった!」という気持ちだけでしたね。
――本番に向けて、楽しみにしていることはありますでしょうか。
まだないです(笑)。まだちょっと楽しみだなと思えるほどの余裕がなくて……。でも、多分本番が終わってもないんじゃないかなと思っています。常に一言一言を発する時の緊張感がすごいので。しかも、舞台だとまた次の日もあるじゃないですか。次の日も上手くいくかどうか分からないから、この緊張感はずっとあるんだろうなと思っています。
でも、10代の時からお世話になっている三浦さんと初めてツーショットでお仕事の写真を撮った瞬間は嬉しかったですね。三浦さんも見たことない顔で「大きくなったな」と仰っていたので、親戚のおじさんみたいでした(笑)。ずっと見てくださっていて、とてもお世話になっているので、取材という形で一緒にお話ししたり、写真を撮って頂いたりできたのは、すごく感慨深いです。
上演が全て終わって、一つの作品を作り上げられた時に、楽しかったなと思えたらいいなと思っています。