加藤シゲアキ・須賀健太ら出演、ウォーリー木下演出。『粛々と運針』取材会＆ゲネプロレポート！

2022.03.09

REPORT

2022年3月8日（火）より東京・PARCO劇場にて、加藤シゲアキ主演、横山拓也作、ウォーリー木下演出の舞台 PARCO PRODUCE『粛々と運針』の幕が上がった。

鋭い観察眼と綿密な取材をもとに緻密な会話劇を丁寧に編み上げる劇作家・横山拓也。ジャンルレスで多岐にわたる作品を手掛け、国際的にも評価の高い演出家・ウォーリー木下。次世代を背負う気鋭の二人が初タッグを組み、“小さなドラマに隠れた大きな命の物語”を描く。命とは誰のものか、そして、どんな始まりと終わりが望ましいのか。答えの出ない根源的な問いかけがなされる物語は、生き方や価値観が多様化した今の人々の心にどう響くのか。

主演は、加藤シゲアキ。本作で描かれる二つの家族の一方、築野家の長男・一（はじめ）を演じる。NEWSでの活動のみならず、作家としても数々のヒット作を生み出し続けるなど、多彩な活躍を見せている。今回、初顔合わせとなった横山拓也、ウォーリー木下との新たな化学反応により、これまでとはまた違った顔を見せてくれることだろう。

一の弟・紘（つなぐ）役に、幅広いキャラクターを多彩に演じる須賀健太が抜擢されたほか、徳永えり、前野朋哉、河村花、多岐川裕美という実力派の面々が出演する。

初日開幕に先駆けて行われた公開ゲネプロ及び取材会には、加藤シゲアキ、須賀健太、演出のウォーリー木下が登壇。その模様をお届けする。

取材会レポート

初日を迎えた今の気持ちについて、加藤は「このひと月、公演が無事にできるのかという緊張感を抱えながら過ごしていたので、無事この日を迎えられてほっとしています」と語り、自身が演じる一について「41歳フリーターの役で、だらしなく、家族に甘えてスネをかじるような兄を演じております（笑）」と述べ笑いを誘った。

須賀は「まずは今日を迎えられることが、一つの奇跡のようなこと。どんな舞台も初日を迎えられるのはありがたいことだけれど、よりその大切さやすごさを感じています。最後まで何事もなく全員で走り抜けるのが目標なので、今日から頑張っていきたい」と語り、自身の演じる紘役については「長男とは真逆のしっかり者です（笑）。だからこそお兄ちゃんに対するいろんな感情があったりして、それを会話の中でお互いにぶつけ合うようなところが見どころかなと思っています」と作品の注目ポイントを示唆。

今作にかける思いを問われたウォーリーは「横山くんの脚本自体が、物語性が強い中にも詩的な部分があって、観る人によっていろんな解釈ができる」と、観客が自身を投影しながら楽しめることを述べ、「舞台セットも（美術・衣裳担当の）ひびのこづえさんをはじめ全員が、新しいことにチャレンジしようと挑んで作ったもの。こういう時だからこそ、失敗を恐れず思い切ったことをやってみたので、その前のめりな感じをぜひ楽しんでください」と自信を見せた。

加藤は今作はウォーリーとの初仕事。「すごく楽しかったです。台本を読んだ時にはすごく静かな印象を受けたので、動き的にはラクかなと思って臨んだんですが、思っていたのとは全然ちがいました。こういう解釈もあるのかと驚かされましたね」と振り返りながらも「こんなことになるとは思わなかった」という加藤の言葉に、須賀が「それ、ずっと言ってますよね！？」と返し、場内に笑いが起こった。

作品について「どんな話なのか語るとするなら？」という問いには、加藤が「家族の話であり、宇宙の話です。兄弟や夫婦という二人の間の話もあるんですが、『粛々と運針』というように、時間と共に編まれていく、編み物のような部分もあって。いろいろなものがどんどん編み込まれていって、壮大なところに帰結していきます」と語ると、ウォーリーもうんうんと大きく頷く。

須賀も「これ以上ないくらいのコメント！」とし、「最初は覗き見をしているような感覚で夫婦や兄弟の会話を聞いているうちに、それぞれの体験や感情によって、ひとりひとり見え方が変わっていく舞台なのかなと思っています。これを見終わった時に持つ感想やイメージは、きっとみんなちがうんじゃないかと思うし、そこがこの作品の魅力だと思います」と自身の思いを語った。

兄弟役を演じることについて「僕らの実年齢よりも年上の役だし、性格も全くちがうので、どうやったら兄弟に見えるのかと話をしていた」とこぼした加藤。その不安も、とあるスタッフから「本当に兄弟に見える」と声をかけられたことで払拭されたようだ。

須賀も「シゲさんと、ちゃんと兄弟になれてるんだなって分かって、すごく嬉しかったですね」と笑顔を見せた。稽古場の雰囲気もとても良かったようで、加藤いわく「今は（コロナ禍で）ご飯に行ったり飲みに行ったり全くできない中で、こういう雰囲気を作れたのは、本当にみんなの人柄の良さのおかげ」とのこと。

加藤が演じる兄役について、須賀は「本当にどうしようもないお兄ちゃん」としつつも、「（加藤本人は）稽古場でもみんなを引っ張ってくれて、僕との二人芝居の部分でも方向性やニュアンスを相談しながら作らせてもらったりと、とても頼りになるんです。でも、役柄ではすごく頼りないから、ギャップがすごくてもう頭がおかしくなりそうでした（笑）」とコメント。

それを受けた加藤も「どうしようもない兄で、僕自身もこういう役は初めてなんですが、すごく楽しい」と笑みを見せ、「稽古場ではずっとふざけているだけの感覚でした（笑）。健太自身もしっかりしてるし、紘もしっかり者の役だから、稽古ごとに毎回ちがうことをしても受け止めてくれる包容力があって。僕は本当に甘えてましたね」と、現場での様子を振り返り、稽古の積み重ねで築かれた信頼関係をうかがわせた。