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鈴木保奈美主演、足立梨花、小越勇輝ら出演。『汗が目に入っただけ』稽古場レポートが到着!

REPORT

4月3日(金)より東京・水道橋のIMM THEATERを皮切りに、広島・大阪・富山・山形を巡演するエクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)『汗が目に入っただけ』。

公演へ向けてキャスト・スタッフが一丸となって邁進する稽古場より、稽古の模様を収めた写真とレポートが到着した。

稽古場レポート

エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)”という前代未聞なニュースタイルの演劇に挑戦中の『汗が目に入っただけ』の稽古場に潜入、一体どんな芝居を生み出そうとしているのか、そのヒントに迫ってみた。

そろそろ序盤から中盤へと突入した3月上旬の稽古場には、玄関やキッチン、二階へとつながる階段、リビングのソファやテーブルなど、仮とはいえ既に舞台装置の枠組みが仕込まれている。これらの装置や大道具、小道具などは本番に向けて日々少しずつ増加させながら整えていく途中とのこと(ちなみにこの日は食器棚にコップが追加されていた)。その中で、やはり格段に異彩を放っているのが舞台中央に据え置かれた“棺”だ。

何しろ今回の舞台は脚本・演出の冨坂友が自らの家族を取材して書き下ろしたという“お葬式コメディ”。舞台となるのは、鈴木保奈美演じる、幽霊となった母親・由美子が成仏できずにいる森井家。

2時間後に葬儀を行うはずなのだが、長女・千聖(足立梨花)が準備したキリスト教式でやるのか、長男・匡(西野創人)が主張する仏教式に変更するかで揉めていて、次男・翔(小越勇輝)に至っては自らの仕事のトラブルに翻弄されていて上の空。そこにたまたま現れた訪問販売員であり、実は霊が見えて会話もできる能力を持つ尾田(蘭寿とむ)が葬儀社の担当者に間違われ、さらに離婚した由美子の夫で子供たちの父親・治(田中要次)までやってきたことで、さまざまな騒動が次から次へと巻き起こっていく……。

この日、稽古する場面は台本的にはちょうど真ん中あたり。由美子の元・夫である治が訃報を聞き、葬儀会場ではなく森井家に直接やってくるところからのスタートとなる。

冨坂が「では、やってみましょう!」と声をかけると舞台正面奥の玄関の戸が豪快にガラガラッと開き(設定としては本来なら壁がある場所も舞台装置としては素通しになっているため丸見えになっている)、治が駆け込んで来て棺を見つけると「由美子ぉ……!」とものすごい勢いで号泣。その激しい泣きっぷりには、共演者からもスタッフからも思わず笑いが漏れる。別れた相手だけに、由美子は「なんでこの人が来たの?」「そこまで大泣きする?」と迷惑げな反応をしているのだが、この田中の見事なまでの悲嘆ぶりに対し、鈴木がいちいち一言ずつ細かくツッコんでいくテンポが小気味よい。

また、葬儀の料理を頼まれた由美子の行きつけのワインビストロを経営する軽井崎(中田顕史郎)に対し、治がしきりにマウントを取ろうとするやりとりで「最後、勝ち誇ったかのように見送って」との注文を受けた田中はスッと両手を腰に当てて仁王立ち。その後ろ姿がこれまた絶妙な佇まいだったため、一同はまた爆笑。

この場面を通した時点で、冨坂はキャストそれぞれに向けて緻密にリクエストを出していく。少し食い気味だった由美子のツッコミには「スピード感があっていいのだけど、治が過剰に泣いていることも観客にしっかり伝えておきたいのでもうワンテンポ待ってみて」というようなオーソドックスな注文があるのはもちろんのこと、部屋にあったギターを見つけて治が歌い出すところでは「自分勝手に振る舞う治の歌の合間に、由美子の合いの手がシンバルのように入る感じで」と言ったり、また千聖がその元夫婦のやりとりに割り込んでいくタイミングには「そこでボールを奪うように千聖のターンに移る」といった注文の仕方をしていて、わかりやすく面白い。部屋にいる人々の中で、由美子と尾田のコンビ、そのほかの面々とでグループ分けするようにリアクションに濃淡をつけたいと言っていたのも視覚的な効果が期待できそうで印象的だった。

由美子の妹で子供たちの叔母にあたる真莉(前田友里子)が「失礼しますと言って退場する時に時計を見る仕草を入れたいので、部屋の真ん中の梁の部分に目印を貼っておきませんか」と提案すると、すぐさま「いらない紙、ある?」とスタッフが奔走。次の休憩明けには早速、急ごしらえの丸い紙に描かれた掛け時計の絵が貼られていた。こうしてフレキシブルに対応していくチームワークの良さもこのカンパニーの特長のひとつであり、それが大きな魅力に繋がっていそうだ。

また、この稽古場では各自が意見を言ったり、アイデア出しをしたりする光景がとても頻繁に見られた。たとえば治のガサツさを表すには「人の名前をもっと間違えるんじゃない?」という意見が出て「“マリちゃん”だったらどんな名前で呼ぶと思う?」との声に、稽古場のあちこちから「ユリちゃん?」「マイちゃん」「メグちゃん」「エミちゃん」「サッちゃん」と、案が次々と出てくる。とりあえず「一旦、“アイちゃん”にしよう」と冨坂がおさめると「絶対、治さんの馴染みのスナックにその名前の子がいそうだよね!」と言われ、それには田中も苦笑い。「田中さんの芝居がうますぎて本当に間違えたと思われるかも」と言われた田中、「ほっといても本当に間違えるかもしれません」と即答し、またもや稽古場を湧かせている。

さらに、そういった治のセリフを次の動きのきっかけにしていた足立は、その治のボケに対するツッコミ待ちをしてから動いたほうがいいか、それとも一連のやりとりが済んだ後のほうがいいか、と冨坂に確認。特にこの場面ではかなりのハイスピードのやりとりを縫って、先を読んで移動しておくことが必要なので、こうした細々としたきっかけの確認はとても重要なのだ。笑いにとっては一瞬の隙が命取りになりかねない。笑いへのこだわりも深い冨坂演出だからこその積極的な意見交換や確認はスリリングでありつつ、なんだかアツくて清々しいものにも感じた。

短い休憩を挟み、次の場面では葬儀社の担当者だと家族みんなが思いこんでいた尾田に最大の危機が訪れる。実はその正体は霊が見える怪しい訪問販売員なのだが、線香をあげに来た由美子と親しかった訪問看護師が尾田の正体を知っている人物だったり、本当の葬儀社の人間が森井家に到着したり。もう逃げようと思っても逃げられず、じりじりと追い詰められていくと、限界だったのか突然豹変する尾田を、蘭寿はいまだかつてないほど振り切った演技で表現していた。声が大きく太くなったと思うと、驚けばピョンと大ジャンプ。ちょっとしたミスで台本を落としただけでもそれが絶妙な間になって拍手が起きたりしている。その場面を乗り切ると、ものすごくエネルギーを消費した様子で「ハァッ!」とか「あぁ~ッ!」とヘンな声が出てしまっていた蘭寿の姿には、この場面には出ていない共演者たちも「ここが、一番大変なシーンになるかもね……」と、見惚れながらも分析していた。 

森井家の子供たちを演じる三人も、それぞれにカラーが違って個性的だ。長女役の足立は全体のムードメーカーと言えそうなくらい実に頻繁に意見を言っている上、多少キツいセリフでもそう聞こえない陽の方向性の魅力を発揮。西野はコロコロチキチキペッパーズで見せる芸人としてのイメージとも違って、頑なな長男を演じている時には意外なほどシリアスな顔を見せつつ、笑い重視の場面では積極的にアイデア出しをしている。次男を演じる小越は前半は電話での会話が多いのだがその枷がフックとなる笑いを生み出しそうだし、自らのセリフがない場面でも周囲にいるキャストといろいろ動いて試している様子があって目が離せない。

そしてもちろん、幽霊という難役に一人挑んでいる鈴木の存在感は圧倒的。幽霊役でしかできない“壁のすり抜け”をしながら人々の間をひょいひょい軽快に移動していく姿もキュートで、ついつい気になってずっと行方を追ってしまうし、すべてにおおらかでケロッとしているようでも本当は子供たちそれぞれを大事に想う母親の気持ちが自然と伝わってくる。蘭寿とのコンビも相性が良さそうで、冨坂が二人には舞台上である程度自由にリアクションしていいと特権を与えているとのこともあり、ライブならではの、コメディならではの新たな面が目撃できそうだ。

また冨坂の演出席の隣には、先程まで軽井崎を飄々と演じていた中田が座っていて、全体の動きをスムーズにするためにアドバイスをしたり、たとえば狭い玄関内でも演者それぞれの立ち位置が重ならないようにチェックをするなど、気になる点が出て来るたびに丁寧に確認している。実は中田は俳優であると同時に、今回の舞台には“ドラマターグ”という役割のスタッフとしても携わっているのだ。クレジットはされていても実際にどう動き、どう冨坂を支えているのかを知ることができたのも稽古場を覗けたからこそで、おかげで冨坂演出の盤石さの秘密に触れられたような気もした。

稽古の終盤では尾田がますます追い詰められていく場面をまとめる言葉として、冨坂からは「この場にいる人たちは、とにかく尾田さんがいかに苦しむか、ピンチになるかを意識して動くように」との指示が出た。すると間髪入れず、冨坂率いるアガリスクエンターテイメントのメンバーたちから「よーし、尾田さんをもっと苦しめよう!」「エイ、エイ、オー!」と、気合いが入ったところでこの日の稽古は終了となった。

とはいえ、これはまだあくまでも基本軸となる物語としての稽古部分でしかない。芝居パートが最後まで整ったところから、肝心の“エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)”としての仕掛けが加わった稽古が始まる模様だ。

役者は全員、手首にカロリーを計測するガジェットを装着し、芝居の進行に合わせてうまく身体を動かしてカロリー消費を狙う。それをスポーツのようなチーム制での対決に仕立てる、という二重構造の今回の企みが果たしてどんな結果を招くのか、そしてどんな新たな笑いを生み出すのか……? 当然のことながら毎日違う芝居、違うカロリー消費方法が披露されるはず。ニュースタイルのこの実験劇の行方に、ぜひともご注目を!

取材・文:演劇ライター 田中里津子
撮影:伊藤智美

公演概要

エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal(カロリー)) 『汗が目に入っただけ』

脚本・演出:冨坂 友

出演:
鈴木保奈美 足立梨花 小越勇輝
前田友里子 斉藤コータ 榎並夕起 津和野 諒 中田顕史郎 古谷 蓮
伊藤圭太 淺越岳人 鹿島ゆきこ
西野創人(コロコロチキチキペッパーズ) 蘭寿とむ 田中要次

【東京公演】
2026年4月3日(金)~4月19日(日)
IMM THEATER

【広島公演】
2026年4月22日(水) 19:00 、 4月23日(木) 13:00
上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)

【大阪公演】
2026年5月2日(土) 13:00/17:00 、 5月3日(日) 12:00/16:00
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

【富山公演】
2026年5月16日(土) 17:00 、 5月17日(日) 13:00
砺波市文化会館 大ホール

【山形公演】
2026年5月23日(土) 18:00 、 5月24日(日) 13:00
やまぎん県民ホール

公式サイト:https://www.asegameni.jp/
公式X: https://x.com/asegameni
公式Instagram:@asegameni

制作:アガリスクエンターテイメント

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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