福山康平インタビュー ミュージカル『ワイルド・グレイ』「いい意味で期待を裏切れたら」(前編)
2025年1月8日(水)より新国立劇場 小劇場にて、ミュージカル『ワイルド・グレイ』が上演されます。
本作は、2021年に韓国で開幕し、コロナ禍でありながらヒットを記録したミュージカル 。韓国では早くも2023年に再演し多くの観客を魅了しています。今回、根本宗子さんの演出でついに日本上演が決定しました。
三人の俳優とピアノ、チェロ、バイオリンの旋律で描かれ、福士誠治さん、立石俊樹さん、東島 京さん。さらに、平間壮一さん、廣瀬友祐さん、福山康平さんのメンバー固定の2チームで上演されます。
THEATER GIRLは、アルフレッド・ダグラス役の福山康平さんにインタビュー。前編では、本作への出演が決まった時のお気持ちや演じる役柄についてなど、たっぷりとお聞きしました。
目の前に挑むべき作品があるのはやっぱり嬉しい
――舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、約二年間アルバス・ポッター役を務められましたが、今回は出演者が三名と少人数でのミュージカル作品への出演になります。出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか。
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』への出演が決まる前は、あまり仕事がない時期も多かったんです。社会人として働いている友人も多くてどうしようと思っていたときに出演が決まって。当時はものすごい挑戦になるなと思いました。二年間の長い戦いが終わって次に何ができるだろうと思っていたところに、少し毛色の違うこの作品へ出演が決まって素直に嬉しかったです。目の前に挑むべき作品があるのはやっぱり嬉しいことなので。それと同時に、さらに高い壁が来たなと思ったのが正直なところです。
――今回はミュージカル作品への出演になりますが、それについてはいかがでしょうか。
以前、ミュージカル『生きる』に出演したときは、アンサンブルのような形だったんです。『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演してから一年ほど経った頃に活動の幅を広げたいと思って歌を習い始めたのですが、今すぐにというよりは長い目で、「絶対にいつかやるんだ」という思いでした。ストレートプレイとミュージカルという二つのジャンルに分けたとすると、単純に自分が出演できる作品の幅が二倍になると思ったので。
『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演して舞台に立ち続けたいと思わされたので、それを叶えるための一つとして歌を始めたのですが、ありがたいことに自分が思っていたよりも早く出演が叶ってうれしかったです。ただ、やっぱり積み重ねるものだと思うのでプレッシャーはありますね。
――本作への出演が決まる前に、歌を聞いてもらう機会などがあったのでしょうか。
はい。ただ、今のままではとても太刀打ちできないと思うので、さらに積み上げなければいけないなと。平間さんと廣瀬さんと三人でやらせていただけるのは本当に幸せなことだと思うので、いただけるものは全部いただこうと思っています。飛び級できることはないし、一つずつやっていくしかないので、今は地道にやるだけです。
――本作は、出演者が三名のみということで、曲数もかなり多いのでしょうか。
多いですね。ソロも何曲もありますし、自分が関わる曲も全体の半分くらいあるので。最近僕の中で四字熟語みたいになっているのですが、本当に、“日々稽古”です。今は余計なことは考えないという気持ちです。
歴史上のことを調べると、とても二時間では収まらない
――本作では、アルフレッド・ダグラス役を演じられますが、現時点ではどのように役作りに取り組まれていらっしゃいますか。
アルフレッド・ダグラスは、実在した人物で、オスカー・ワイルドの恋人だったということが前提としてあって。当時、19世紀のイギリスでは、男性同士の性的な関係は殺人と同等に重い罪だったんです。
アルフレッド・ダグラスを一言で言うと、貴族でわがままでオスカー・ワイルドを振り回した青年というイメージなのですが、上辺だけではなく彼なりにちゃんとワイルドを愛していて。 歴史上のことを調べる限りでは、とても二時間では収まらないくらいのことが、ワイルドとダグラスとロバート・ロスの間にはあったんです。ダグラスは今の価値観から見たら本当にひどいやつだと思います。でもそうではなく、彼なりの正義というか、人間味が溢れるところによりフォーカスされたお話になっています。
歴史上の事実ももちろん大事ですが、それは引き出しに入れつつ、台本の中できちんとオスカー・ワイルドを彼なりの方法で好きになる。 「今の価値観ではなく」というのが自分の中で一番のテーマだと思うのでそこを探していきたいですね。
――今回、同じチームの平間壮一さんと廣瀬友祐さんとの共演で特に楽しみにしていることはありますか。
もちろん、ミュージカルに関わらず大先輩ですし、絶対に引っ張ってくれる強い力のあるお二人なので盗めるところは全部盗もうという気持ちです。もちろん自分も出しつつですが、存分に身を委ねて先輩方の力をお借りしようと思っています。
ビジュアル撮影の時に平間さんが「楽しくやろうね」と気さくに話しかけてくださって、とても素敵な方だなと思いました。廣瀬さんはもう見た瞬間、カッコいいんですよ。立っているだけでカッコいいし、歌声もものすごく素敵なので、オスカー・ワイルドとして好きになる準備はできているというか、好きですね(照れ笑い)。
――演出の根本宗子さんとご一緒されるのは初めてかと思いますが、演出を受けるにあたっての印象などはいかがでしょうか。
根本さんが演出された『宝飾時計』と『共闘者』を観させていただいたのですが、ものすごく演劇が好きな方なんだろうなというのをひしひしと感じて。『共闘者』ではご自身も舞台に立っていらっしゃったので、「なんて楽しそうにやっているんだろう」と客席から思っていました。
今回の『ワイルド・グレイ』は韓国の台本から翻訳されて、そこに根本さんが少し手も加えられていますが、言葉一つにもものすごく丁寧にこだわりを持っていらっしゃる方だなと。今回、出演者が三人だけと贅沢な時間になりそうなので、自分の持っているボールをなるべくぶつけたいと思っています。
日本で初めて体現できるのは誇らしいこと
――本作は日本初演となる作品ですが、プレッシャーを感じたりもされますか?
初演だからというよりは、単純にプレッシャーを感じています。正直、『ハリー・ポッターと呪いの子』にオリジナルキャストで出演することができてなんて幸せだったんだろうと感じていて。その時も稽古では、0を1にする作業が長かったんです。もちろん、海外版ですでに演出はあったのですが、改めて日本キャスト用に立ち位置や照明から全部作り直したので。それを日本で初めて体現できるのはやっぱり誇らしいことだなと感じました。
日本初演は一度しかないので大事にしなきゃいけないと思っています。初演として作品の印象は今回で決まると思うので。プレッシャーというよりは、「大事にしなきゃいけないぞ」と自分に言い聞かせている感じですね。
取材・文:THEATER GIRL編集部
公演概要
ミュージカル『ワイルド・グレイ』
2025年1月8日(水)~1月26日(日)
新国立劇場 小劇場
脚本:イ・ジヒョン
音楽:イ・ボムジェ
翻訳:石川樹里
演出・上演台本・訳詞:根本宗子
訳詞:保科由里子
キャスト:
福士誠治×立石俊樹×東島 京
平間壮一×廣瀬友祐×福山康平
ピアノ:大谷 愛、小林萌里
バイオリン:磯部舞子、西原史織
チェロ:吉良 都、人見 遼
チケット:
S席:10,500円
バルコニー席:8,500円
Yシート:2,000円(11/11~11/17販売)
U-25:7,000円(11/18~販売)
※壁際、手摺近く、バルコニーの一部のお座席で、舞台が見えにくい場合がございます。
※Yシートはホリプロステージのみ取扱になります。