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一色洋平インタビュー『くるみ割り人形外伝』「夏の思い出に、楽しい仕掛け満載の音楽劇を家族でお楽しみください」(前編)

INTERVIEW

2023年8月5日よりKAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>で開幕する音楽劇『くるみ割り人形外伝』。

内気な少女が、大好きなうさぎの人形とともにくり広げる一夜の大冒険を描く本作は、芝居にバレエ、踊り、歌、生演奏の音楽など、演劇の魅力がギュッと詰め込まれたものとなっています。作・演出は女優、演出家、脚本家としてマルチに活動する根本宗子さん。音楽と演奏はチャラン・ポ・ランタンの小春さんが担当します。

THEATER GIRLは、“演劇の案内人”役を務める一色洋平さんにインタビュー。前編では作品の見どころや共演者の印象、稽古場でのエピソードをうかがいました。

インタビュー後編はこちら

――「くるみ割り人形」と言えば、チャイコフスキーが作曲した有名なバレエ音楽ですが、本作はあの物語をベースにしたオリジナル作品ということになりますか?

そうですね。要素は取り入れていますが、本作はバレエ「くるみ割り人形」を知らない方が観劇されても楽しめるオリジナル作品になっています。

――本作で一色さんが演じる役は「演劇の案内人」。こちらも詳しい説明がないので、一体どんな役を演じるのか謎な部分が多いですね。

作品と観客をつなぐストーリーテラー的な役になります。ストーリーテラーにもいろんな種類がありますが、今回は魔法使い的なキャラクターではなく、ひとりの演劇人として観客を作品の世界にいざなうような役ですね。「演劇は想像すればどこへでも行けるよ」「自由にどこへでも行けるし何にでもなれる。そのためには、ここにいるみんなの想像力が必要なんだけどね」と伝える人だと演出の根本さんから説明をされて、日々稽古を頑張っています。

案内人役のほかには主人公の少女のパパ役だったり、まぁいろいろと……だいたい7~8役くらい演じることになるのかな?

――演出の根本宗子さんとは、以前一緒にお仕事をされたことがあるんですよね。

「はい。今から5年ほど前に「演劇実験「根本宗子」第1実験室『コンビニ』」という、ちょっと実験的な企画に参加させていただいて以来になります。

――今回の共演者の印象についても伺えますか?

物語の主人公はクララという少女で、大橋凜乃ちゃんと澤田杏菜ちゃんがWキャストで演じます。二人とも性格は真反対で、凜乃ちゃんはしっかり自分の“芯”を持っていて自分の好きなものがハッキリしている子という印象を受けました。たくさんお芝居を見て来たんだろうなという感じがするし、声色の使い方もすごく上手。一方の杏菜ちゃんは、周りの大人のことをよく見ている「気いつかい屋さん」な感じがします。彼女はバランス感覚に優れていて、大人の一員になることもできるし、子供らしく現場を華やかにする無邪気さもある子ですね。

――子役のお二人は「早い段階からセリフ覚えも、ほぼ完ぺき」とスタッフさんも絶賛されていました。

セリフ覚えも素晴らしいですが、宗子さんに「こういうニュアンスで言ってみて」とセリフの“音”を注文されると、その音を軽々と言ってのけるんです。さらに「こう言ってみて」のニュアンスでしゃべってみたら、そのニュアンスでセリフの意図するものが分かったんでしょうね。「私なら、もっとこう言う」って感じで、同じニュアンスのまま自分の音に換えることもサラッと出来てしまう素敵な女優さんたちなので、その様子を稽古場で見ながら僕も日々勉強させてもらっています。

――経験豊富な一色さんでも刺激をうけることがあるんですね。

もちろんです! やっぱり経験を重ねていく中で、僕ら少しずつ感覚が薄れていくんですよ。若い彼女たちにしかできないお芝居って絶対にあって、毎日稽古場で彼女たちの感性に触れていると「芝居や会話にとって大事なのは何だろう?」という初心を思い出させてくれるんですよ。マネできないまでも参考にさせてもらっています。

――今回のキャストは様々な芝居の現場から集まって来た方がそろっているので、とても刺激的なのかなと想像しています。

そうですね。歌舞伎役者の中村鶴松さんは今回が現代劇初挑戦だそうですが、とても勉強熱心で、柔軟にいろんなことを吸収しようとされる姿勢がとても素敵な方。歌手役のももさんは本作で音楽を担当されている小春さんと姉妹で「チャラン・ポ・ランタン」というユニットで音楽活動をしつつドラマにも出演されているチャーミングな女優さんでもあります。

踊り子役の山之口理香子さんはアイドル・モデルなど幅広く活動をしながらプロの舞踏家として活躍されている方で、今作の振り付けも担当されています。様々な表現の場で活躍されている才能が終結して、演出の根本さんのもと、どんな化学反応が生まれるのか非常にワクワクしています。

――物語を何倍にも魅力的にする演出として、チャラン・ポ・ランタンの小春さんが作る音楽も重要な要素だと思います。

小春さんは作曲のペースがとても速くて、稽古をしながら根本さんが「ここ、ワンフレーズぐらい曲が欲しいんだけど」って相談すると、その場で1~2分でパパッと作っちゃうんです。時間をかけて詰めていくよりも、インスピレーションでパッと浮かんだものに少し“味付け”をしていくのがお好きなんだそうです。長い曲になると話は別だと思いますが、ワンフレーズくらいの短い曲だったらその場でパッと作っちゃう。しかも今回は生バンドも入るし、楽器の奏でる音楽がどのように各シーンを彩ってくれるのか楽しみです。

田中大資さんの衣裳もとても素敵で、例えば鶴ちゃん(=中村鶴松)は歌舞伎の方なので基本和装の人ですけど、いつもは中村屋の紋を付けているのが本作の衣装ではどんな“家紋”になるのかとか。僕も役によって衣裳替えがありますが、全身まるっと着替えるというよりはアクセントを変えていくみたいな感じで身に着けるアイテムが少しずつ変わります。衣裳もそうですが、作品全体を通じて“色”にも大事な意味があって、チラシの写真が下に行くにつれてモノクロになっていくのにも実はちゃんと理由があるんですよ。その辺も考察していただきながら観ると面白いと思います。

取材・文:近藤明子
Photo:MANAMI

インタビュー後編はこちら

公演概要

KAATキッズ・プログラム2023『くるみ割り人形外伝』

2023 年 8 月 5 日(土)~13 日(日)
KAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ>

作・演出:根本宗子

音楽・演奏:小春(チャラン・ポ・ランタン)

出演:大橋凜乃 / 澤田杏菜(Wキャスト)
中村鶴松、一色洋平、もも(チャラン・ポ・ランタン)、山之口理香子

公式サイト:https://www.kaat.jp/d/kurumi

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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