池岡亮介インタビュー『夜明けの寄り鯨』「何かに悩んでいる方も、ほんの少しでも希望を見ていただけたら」（後編）

2022.11.30

INTERVIEW

2022年 12月1日（木）より東京・新国立劇場にて舞台「夜明けの寄り鯨」が上演されます。日本の劇作家の新作をお届けする【未来につなぐもの】シリーズの第二弾である本作は、「こつこつプロジェクト」の第一期として『スペインの戯曲』に取り組んだ大澤遊氏が演出を務め、今注目の劇作家・横山拓也氏が脚本を手がけています。横山が以前より興味があった、座礁して身動きの取れなくなった鯨を題材に、未来をみつめ、道を開くような作品を作りたいという思いが込められた作品です。

主役は映画、舞台、ドラマと多方面で活躍を見せる小島聖さんが務め、幅広い舞台に出演されている池岡亮介さん、小久保寿人さんも参戦。さらに森川由樹さん、岡崎さつきさん、阿岐之将一さん、楠見薫さん、荒谷清水さんと舞台を盛り上げる頼もしいメンバーが集まりました。

THEATER GIRLは、池岡亮介さんにインタビュー。後編では、ご自身の役柄について、役を演じる上でとくに大切にしていることをうかがいました。

インタビュー前編はこちら

僕の視点が作品の道しるべになったら

――今回のご自身の役柄で、注目してほしい部分はありますか？

僕の役は地元の青年で、小島さん演じる何かを抱えて1人で旅をしている女性に土足でガンガン踏み込んでいくんです。それは若さでもあり、自分も何か抱えているものがあるという役なのですが。普段僕はあまり人と話すのが得意ではなくて、パーソナルスペースに踏み込むことをなかなかしないので、そこが今苦戦しているところですね。

このご時世だと人のスペースに踏み込みづらいと思うので、すごく興味を抱く役だと思います。お客様にとって、僕の視点が作品の道しるべになったらいいなと思いますね。これってどういうことなのかなと思ったときに、僕を見て「なるほど。そういうリアクションをとっていいんだ」と、どこか寄りどころになれたらと思います。

――池岡さんが役を演じる上で、とくに大切にされていることはありますか？

台本ですね。ベースはやっぱり本だと思うんです。その作品を決める80％、 90％と言ってもいいくらい。役者は、それをちょっと立体的にするだけの仕事かなと思っているので。僕が本当に大事にしているのは、作品や演出家の意図を汲み取ることですね。

もちろん、共演する俳優さんの空気感もそうですが。僕は良くも悪くも探っちゃうんです。ただ、そういう性格なので、それを武器にした方が自分としてはいいかなと思っています。

――どちらかというと、演出家さんと一緒に役を作り上げていく感じでしょうか？

そうですね。とある役者さんが、事前に台本を読むけど、稽古に入るまで絶対に声には出さないと言っていて。初めて発音した時の音だったり、自分の気持ちだったりをすごく大事にしたいと。それがちょっとかっこいいなと思って。

普段どれだけ準備ができているかだとは思うんですけど。そうやって稽古場に臨めるのは、ちょっといいなと思いますね。

――プライベートについてもお聞きしたいのですが、今ハマっていることやマイブームはありますか？

断捨離にハマっています。この1年は稽古場にいることが多くて家にいる時間が少なかったので、帰ったときに物の多さに酔う時期があって。いらない物をどんどん捨てていくのは、ストレスの発散にもなるし、リフレッシュできるんですよね。春先ぐらいから始めたので、冬物がなくなっていたり、着る服がなくなっていたりするんですけど。普段あまり買い物をしないので、断捨離しすぎて今ちょっと困ってます（笑）。

30歳を迎えたら「渋くなったね」と言われたい

――本作は「未来につなぐもの」シリーズとのことですが、ご自身の少し先の未来へのビジョンがあれば聞かせてください。

来年30になる年齢なんですが、気持ちの未熟さや幼さも含めて、正直今のまま30歳を迎えられるかと不安があって。やっぱり、30歳ってハードルが1個あるじゃないですか。もちろん大丈夫かなという気持ちもありますけど。若く見られることが多いので、渋くなったと言われたいんですよね。そうなるためには、どうすればいいんだろうと今模索中です。髭も全然生えないので（笑）。

――役柄としても渋めの役をやりたいというお気持ちでしょうか？

役ではそんなにこだわりはないですね。30代を迎えて、高校生の役をやるのも逆にかっこいいなと思うんですよ。歳を重ねても、そういう役も楽しめるようになりたいなと思うので、若い役も幅広くやりたいです。ただ、見た目的には、もっと渋く見られたいですね。いつも23歳くらいって言われるので（笑）。

――今後、具体的にやってみたい役柄はあったりしますか？

海外のサイコパス系や猟奇的な作品が結構好きで。本当は良くないんですけど、役作りによってそれが正当化されているような。そういった雰囲気を醸し出せるまで、役を深堀りできたら楽しいだろうなと思います。

――最後に、本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

本作と同じ「未来につなぐもの」シリーズである『私の一ヶ月』という作品を観劇させてもらったのですが、バトンのような物を受け取った気がして。日常の普遍的なものから、ちょっとした未来の光が見える作品になると思います。何かに悩んでいる方もいらっしゃると思うので、ほんの少しでも希望を見ていただけたら。僕としてもすごくチャレンジングな役ですし、初の新国立劇場ということもあるので、挑戦している姿をぜひ見届けてもらえたらと思います。