平方元基インタビュー ミュージカル『生きる』 「舞台に立たせてもらえることが生き甲斐になっていると気付かされた」(前編)
2023年9月7日(木)~24日(日)より東京 新国立劇場 中劇場、2023年9 月2 日(金)~10月1日(日)まで大阪 梅田芸術劇場メインホールにてDaiwa House presents ミュージカル『生きる』が上演されます。
本作は、黒澤明監督が 1952 年に発表した映画「生きる」を原作に 2018 年に誕生した、日本発のオリジナルミュージカル。
初演時には「国産ミュージカルの記念碑的力作」と絶賛を受け、2020 年に再演、コロナ禍に翻弄されながらも、全 38 公演を完走しました。そして今年、待望の再々演を果たします。クリエイター陣には、日本を代表する演出家の宮本亞門さん、数々の話題作を手掛ける脚本&歌詞の高橋知伽江さん、昨年度より2年連続トニー賞ノミネートの作曲家・ジェイソン・ハウランドさんが再集結します。
初演より引き続き主人公・渡辺勘治を演じるのは、ミュージカル界のレジェンド、市村正親さんと鹿賀丈史さん。その他メインキャストの多くが一新され、村井良大さん、平方元基さん/上原理生さん(ダブルキャスト)、高野菜々さん(音楽座ミュージカル)、実咲凜音さん、福井晶一さん、鶴見辰吾さんら実力派キャストとともに、新たな『生きる』が届けられます。
THEATER GIRLは、ダブルキャストで小説家を演じる平方元基さんにインタビュー。前編では本作への出演がきまったときのお気持ちや稽古場での役作りや演出の宮本亞門さんや市村正親さん、鹿賀丈史さんとの関わり方など、たっぷりと語っていただきました。
物語の世界観の中に行けることに、すごくワクワクしています
――本作へのご出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
「僕でいいんですか」というのが最初に抱いた感想です。実はこの作品が大好きで、初演も再演も拝見していたんです。でも自分が実際に大好きな作品に入っていくことはあまり想像がつかなくて。ただ、ある意味新しい感覚でチャレンジできるんだなと、すごく楽しみな機会をいただいたなと思いました。
――好きだった作品の世界観に入られるんですね。
そうですね。昭和27、8年頃の世界観を実際に体験したことはないですが、舞台上のセットや皆さんの雰囲気によってその時代が忠実に再現されていて。あの世界観の中に行けることに、すごくワクワクしています。
――主人公の渡辺勘治を、市村正親さんと鹿賀丈史さんが演じられますが、お二人の印象はいかがですか?
お二人ともすごい方というのは言わずもがなですが、それぞれのスタイルをお持ちでいらっしゃるなと思いました。鹿賀さんは柔らかい雰囲気の方ですが、お稽古場が始まるとパッと切り替わる印象です。役が身体に染み付いていらっしゃるんでしょうね。
市村さんは初日稽古から衣裳をつけてお稽古されていたんですが、それが全部馴染んでいらっしゃって。 お二人の対照的なところが、とても勉強になります。鹿賀さんに稽古が始まる前に「よろしくお願いします」と言ったら、「最初の通し稽古だから思うようにやってみて、それから亞門さんのダメ出しを聞いてやっていこうね」とおっしゃってくださって。
その前には市村さんにも、「やらなきゃダメということはないんだから、やれるだけやって、それから削いでいく作業を一緒にやろうね」と、それぞれからお言葉をいただきました。実際に亞門さんは、キャストが自由に舞台上に立てるように、いろんな挑戦をさせてくださる方なので、お稽古場はとても充実しています。とても贅沢な稽古場だと思いますし、それをまとめてくださっているのがあのお二人なんだなと感じます。
その時々ですごく景色が変わる舞台
――今回、小説家役を演じられますが、稽古場ではどのように役作りをされていらっしゃるのでしょうか?
稽古が始まってから、ものすごいスピードで一幕、二幕を終えていったんです。その作業がとにかく大変だったのですが、そのおかげで今は台本から離れて、自分の思考と「こうやっていきたい」ということが上手く重なってきています。
中には通し稽古が一回しかできないまま、舞台稽古に突入する作品もある中で、景色や相手の表情を見ながら小説家を具現化していけることがすごく嬉しいです。
亞門さんが言うコアな演出が変わらず存在するから、自由にさせてもらえていると思いますし、小説家像というか、ストーリーテラーとしての難しさを今ひしひしと感じているところです。
――今回小説家役は、上原理生さんとのダブルキャストになりますが、それぞれ役へのアプローチも異なってくるのでしょうか?
全く違うと思います。やっぱりキャラクターも違うし、声質も全然違うので、受ける印象が同じセリフでも変わってくるのではと。ただ、今回はダブルキャストなので、すごくお客さん側の感覚で見ることができるんです。(上原)理生がいることで心強さもありますし、出てくるものも違ってくると感じるので。彼とはすごく信頼関係が出来ていて誰よりも一緒にいます。今は、家族よりも一緒にいますね(笑)。 困ったことがあったり悩んだりしても、理生のところに行けば話し合って解決できる。それでも難しければ亞門さんもいるし、先輩方もいるので、自分が一人ぼっちにならない稽古場だなと感じています。
――今回演じる小説家役としては、どんなところに注目してほしいですか?
小説家は、物語の中ではストーリーテラーとしての役割が多いんです。その中で、流れ者的に生活をしている小説家が、渡辺勘治の生きる気持ちにまっすぐに向き合っている姿に突き動かされていく。そんな、穿って世の中を見ることがかっこいいと思っている小説家に、一滴の雫がポツンと落ちて変わっていく瞬間を見てもらえたらなと。物語なので、正直その場その場で変わってくると思うのですが、そこを見届けてもらえたら小説家冥利に尽きますね。
――舞台はナマモノなので、その日によって変わってくる部分がありますよね。
人も違いますし、お客様のテンションも違うかもしれません。雨の日や晴れの日、昼や夜の公演と、その時々で景色がとても変わる舞台だと思うので、そこも楽しみにしてもらいたいです。
取材・文:THEATER GIRL編集部
ビジュアル撮影:HIRO KIMURA
公演概要
Daiwa House presents ミュージカル『生きる』
2023年9月7日(木)~9月24日(日)
新国立劇場 中劇場
原作:黒澤 明 監督作品 「生きる」 (脚本:黒澤 明 橋本 忍 小國英雄)
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
脚本&歌詞:高橋知伽江
演出:宮本亞門
出演:
渡辺勘治:市村正親/鹿賀丈史(ダブルキャスト)
渡辺光男:村井良大
小説家:平方元基/上原理生(ダブルキャスト)
小田切とよ:高野菜々(音楽座ミュージカル)
渡辺一枝:実咲凜音
組長:福井晶一
助役:鶴見辰吾
佐藤 誓
重田千穂子
田村良太
治田 敦、内田紳一郎、鎌田誠樹、齋藤桐人、高木裕和、松原剛志、森山大輔
あべこ、彩橋みゆ、飯野めぐみ、五十嵐可絵、河合篤子、隼海 惺、原 広実、森 加織
スウィング:齋藤信吾、 大倉杏菜
安立悠佑、高橋勝典
チケット:
S席:14,000円/A席:9,800円(全席指定・税込)