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朝月希和インタビュー ミュージカル『シェルブールの雨傘』「ジュヌヴィエーヴを演じる責任と、新たなスタートへ踏み出した一歩」(後編)

INTERVIEW

2023年11月4日(土)から、東京・新橋演舞場を皮切りにミュージカル『シェルブールの雨傘』が開幕します。

原作は、ジャック・ドゥミが脚本・監督を務め、ミシェル・ルグランが音楽を担当したフランスのミュージカル映画。

過去に日本でも何度も舞台化され、今回は約10年ぶりの再演となります。愛し合いながらも、戦争で切り離されるギイとジュヌヴィエーヴ。ギイを演じるのは京本大我さん、ジュヌヴィエーヴを朝月希和さんが演じます。珠玉の音楽が紡ぐ恋の終わりの物語、華やかさと実力を兼ね備えるキャストによってどう描かれていくのか――。

今回は、宝塚歌劇団卒業後、ミュージカル初出演となる朝月希和さんにインタビュー。後編では、ストーリーの内容にちなんで、終わるときに「切ない」と感じること、宝塚退団後の想い、本作への意気込みなどを中心に語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

終わりは寂しくて切ないけれど、自分の中には次への希望がある

――ここからは、作品にちなんだお話を伺わせてください。本作は、恋の終わりの物語を描いている、少し切ないラブストーリーですが、朝月さんが終わりを迎えるときに「切ないな」と感じることはありますか?

何かが終わってしまうときって、いつも「切ないな」と思うんですが、終わりがあるからこそ次があるので、寂しいし切ないけれど、そこでスパッと全てが終わってしまうのではなく、その次に「また何かある」という望みや小さな光は自分の心の中にあるのかな、と思います。

だからといって、悲しんではいけない、泣いてはいけないというのはしたくなくて。一度、そこで自分の感情を味わう。その気持ちは大切にしたいので、寂しいなら寂しいし、泣くなら泣いて、でも自分の中には次への希望があるという状態。なので、終わりがあるから、次があるというふうに、完全に終わりではないなと思っています。

――やはり作品が一つ一つ終わるたびに、切なさを感じますか?

そうですね。でも「この作品終わってしまうんだ。寂しいな」と思えることって、とてもいいことだと思うんです。

――その過程がよかったから、ということでもありますよね。

はい。自分にとって、学びがあって充実していた舞台だったんだなとも思えるので。そういうふうに「終わってしまう、寂しい」と思えるからこそ、「じゃあ次の舞台もっと頑張ろう!」と思えるんですよね。

「自分」にこだわりすぎない。真っ白な状態で何でも受け入れる姿勢を

――今回は、宝塚ご卒業後初のミュージカルで、おそらく宝塚時代と違うことがいろいろあるかと思います。朝月さんは、本作に挑む前にどういった心境で挑戦していきたいと考えていますか?

自分が今持っているものはこれしかないので、足りないところを自分でも見つけて、それを向上していきたいです。ダメなところはダメと言っていただきたいし、お教えいただいたことはもう本当にどんどん吸収して、スポンジのようになりたいと思っています。

――スポンジ! 全部を吸収ということですね。

もう全部、全部、全部! 初めてのことしかないので、いろんなことを受け入れて、スポンジのように吸収して、それを自分でまた構築して、初日に向けて頑張っていきたいです。

――今まで宝塚で多くの舞台経験がある中で、そのように初心を忘れない気持ちを持てるのはどうしてなのでしょうか?

宝塚を経て今の自分があるんですが、その宝塚としての「朝月希和」はもう卒業している。ここからは新たな一歩になるので、新しいことを始めるときに先入観みたいなものはいらないと思うんですよ。何をするにも、初めてがないと次がないじゃないですか。

だから、その初めてを踏み出すときは、もう真っ白な状態で何でも受け入れたいな、と。そこで「これは違うんじゃないか?」と思っても、時間の無駄といいますか……。

――良い意味であまり過去の自分に固執せずに。

はい。固執すること、こだわることも大切だとは思っているんですけれど、「自分」にこだわりすぎても意味がないのかなって。

――そこのバランスは、難しくないですか?

そうですね。でも、最初に「自分」にこだわりすぎたら、すごくもったいないんじゃないかなって。新鮮な情報も、なんだか新鮮に入ってこなくなっちゃうような気がして。

だから最初にいっぱい受け入れて、受け入れて……。その中で、「じゃあ自分は昔こういうことをやってきたから」と、引き出しを少しずつプラスしていく。そのこだわりというエッセンスは、後から入れていくほうがいいんじゃないかなと思って。

――なるほど。後から小出しにしていきたい、と。

後から出していくほうが、色を重ねていける気がするんですよね。それが理想です。

踊りで表現することは、やっぱり自分にとって一番心が震える瞬間

――昨年末に宝塚歌劇団を卒業されて一年弱経ちますが、退団してみてどうですか?

退団してより思うのは、宝塚には自分の憧れと夢が詰まっていて、本当に愛があふれる場所だったな、と。自分が宝塚と出会えたこともありがたい奇跡で、あの場所に入ることもできて、これまで導いてきてくれた宝塚の存在にも本当に感謝しています。

――これからチャレンジしてみたいことはありますか?

もともと宝塚を目指すきっかけは、踊りが好きだったからなんですよ。踊りで表現すること、身体で表現していくことは、自分にとって一番心が震える瞬間といいますか。

宝塚の外に出ると、踊りで表現する機会はショーやミュージカルでない限り少ないと思いますが、もしそういう機会があればぜひやっていきたいです。あと、私本当に日本物が好きで。

――雪組ご出身ですしね。

そうなんです。日本物が好きで、雪組に組み替えしてからは幕末時代が多かったんですけど、幕末に限らず、平安時代やさまざまな時代の日本物をやると「自分は日本人だな」と考え方に共感できる部分が多くて。日本人として、スタート地点に戻れる感じがあるんです。

また、四季があるのが日本の舞台の素晴らしさかなと思うので、そういうのもいつかできたらうれしいですね。

2023年は「整理」する時間に。来年は新しい扉を開ける一年にできたら

――本作は12月まで公演があります。少し気が早いかもしれませんが、来年はどんな一年にしたいですか?

どうなんだろう。まだ作品をやっていないから、どういう心境になっているか想像がつきませんが、自分のやりたいこと、気になることに臆せず挑戦していきたいです。

この一年は宝塚を卒業して整理する期間だったので、今は整理して一歩踏み出したところ。ということは、来年はもっと積極的に自分の興味があることに足を踏み入れて、自分自身の新しい扉を開ける年になったらいいなと思います。

――整理する一年だったということですが、具体的に今後やっていきたいことを整理してみたということなのでしょうか?

そうですね、そういうのはすごく考えました。自分がこの先何をやっていきたいのか考えたときに、やっぱり舞台が好きで、お客さまがいる空間で表現することが好きで、「もう一度舞台に立ちたい」という考えに戻ったり。そういうのを考える一年でしたね。

――それを経て、やっぱり踊りや表現することが好きだなというところに。

踊っているとき自分はすごく満たされているんだな、と。踊りから少し離れてみて、すごく感じました。

――離れたからこそ、感じられたのでしょうか。

はい。実際に離れてみないと、わからないこともあったと思います。宝塚時代は日常の中でも常に踊りで表現していたのですが、少し離れて自分を客観的に見つめてみると、湧いてくる感情がやっぱりあるなと思いました。

――その期間が朝月さんにとって、とても大事だったんですね。

そうなんです。それがあって、より明確に自分が今後何をしてみたいのか、自分はどんなふうになりたいのかを考えられました。

――本作は10年ぶりのミュージカル化ということで期待されているファンの方もたくさんいらっしゃると思います。最後に、意気込みをいただけますでしょうか。

10年ぶりの再演で、こんなにも有名な作品に携われること、その中でも自分がジュヌヴィエーヴ役を務めることに、今とても責任を感じております。この楽曲の素晴らしさは、きっとお客さまの心にも響くと思います。作品のメッセージをお伝えできるよう、お稽古、そして幕が開いてからも一日一日を大切に、精一杯演じてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

取材・文:矢内あや
Photo:MANAMI

インタビュー前編はこちら

公演概要

ミュージカル『シェルブールの雨傘』

脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
演出・上演台本・訳詞:荻田浩一

出演:京本大我、朝月希和、井上小百合、渡部豪太、春野寿美礼 ほか

【東京公演】
公演日程:2023年11月4日(土)~11月26日(日)
会場:新橋演舞場

【大阪公演】
公演日程:2023年12月3日(日)~12月10日(日)
会場:大阪松竹座

【広島公演】
公演日程:2023年12月14日(木)~12月16日(土)
会場:広島文化学園 HBG ホール

東京公演公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202311_enbujo_cherbourg/

大阪公演公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202311_shochikuza_cherbourg/

広島公演公式サイト:https://h-shimizu.com/geinou/topic/2023-1214-16/

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