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朝月希和インタビュー ミュージカル『シェルブールの雨傘』「ジュヌヴィエーヴを演じる責任と、新たなスタートへ踏み出した一歩」(前編)

INTERVIEW

2023年11月4日(土)から、東京・新橋演舞場を皮切りにミュージカル『シェルブールの雨傘』が開幕します。

原作は、ジャック・ドゥミが脚本・監督を務め、ミシェル・ルグランが音楽を担当したフランスのミュージカル映画。

過去に日本でも何度も舞台化され、今回は約10年ぶりの再演となります。愛し合いながらも、戦争で切り離されるギイとジュヌヴィエーヴ。ギイを演じるのは京本大我さん、ジュヌヴィエーヴを朝月希和さんが演じます。珠玉の音楽が紡ぐ恋の終わりの物語、華やかさと実力を兼ね備えるキャストによってどう描かれていくのか――。

今回は、宝塚歌劇団卒業後、ミュージカル初出演となる朝月希和さんにインタビュー。新しいスタートを切られる貴重なタイミング、どんな想いを抱いているのでしょうか。前編では、出演が決まったときの気持ちや、ミシェル・ルグランが手がける楽曲の印象やギイ役の京本大我さんの印象、演出の荻田浩一さんとのエピソードについてなど、お話ししていただきました。

インタビュー後編はこちら

この作品で自分が新しいスタートを切れることがありがたい

――撮影で着られていた緑のカーディガン、素敵ですね。

ありがとうございます。シェルブールのイメージで着てみました。

――雪組カラーでもありますよね。

本当だ、雪組カラーのカーディガン着てた! 私、緑が大好きなんですよ(笑)。雪組になったから余計に、かな? 緑熱がもともとあるんです。でも、今日は組カラーを意識したわけじゃないんです、すみません(笑)。

――そうだったんですね(笑)。今回は宝塚卒業後、初のミュージカル出演ですね。出演が決まったときの心境は、いかがでしたか?

「まさかこの作品のお話をいただけるなんて」と驚きの気持ちでした。『シェルブールの雨傘』という多くの方が知っている有名な作品で、メロディーを聞けば「あ、この曲!」と思い浮かばれる方もたくさんいらっしゃるかと思います。そんな素晴らしい作品に携わることができて、とてもうれしいです。

この作品で自分が新しいスタートを切れることがありがたく、ジェヌヴィエーヴという役にも精一杯チャレンジしたいと思いました。

――再スタートとして、もう最高の舞台なのではないでしょうか。

本当にそうですね。今の自分にこのお話をいただけてとても光栄です。

ミシェル・ルグランさんの楽曲は、流れるようなメロディーが繊細で素晴らしいので、そこに自分がお芝居の感情をどうやって乗せていけるか。今から考えながら、日々を過ごしています。

全編とおして歌で進んでいく本作。歌の中で全てを感情表現しなければ

――ミシェル・ルグランさんの楽曲、とても美しいですよね。

映画ですと、流れる旋律で皆さんが歌いながら芝居のやりとりをしていくのですが、実際に舞台で表現するときは、もう少しだけ喜怒哀楽の幅を広げていく予定だと、演出の荻田先生からお話しいただきました。

先日、本作の主題歌『シェルブールの雨傘』を歌稽古したのですが、まず声を発すること自体にとても緊張しちゃって。「この曲を自分が歌うんだ」と思うと、責任を感じると同時に、楽曲ならではの難しさも感じています。

――映画は、全編とおして歌唱で構成され、ちょっとした会話も歌と音楽で進んでいきます。こういったスタイルについて、どう感じていらっしゃいますか?

今まで出演させていただいた作品では、思いがたかぶったときや、何かメッセージを伝えたいときなど、感情に大きな変化があって、その気持ちの流れで歌になることが多いと思うんです。ですが、『シェルブールの雨傘』は、全てを歌の中で感情表現していかなければならないので、普通の会話のときの歌い方が難しいですね。

メロディーが流れていると思わず歌いたくなってしまうのですが、そうではなくて、歌で細かい芝居を作っていく。それがこの作品をとおして、最後まで課題になっていきそうです。

――初めて観る方にとって、新鮮に感じられる作品なのかなと思います。

そうですね。映画は全編歌でも違和感なく没頭できる作品になっているので、いかにそれを舞台で作っていけるか。お客さまが自然とストーリーに入れるように、どうやって奏でていくか。もっともっとこれから考えなければいけないところだと思っています。

メッセージ性もあり、華やかな場面もあり、色の変化がある作品

――映画『ラ・ラ・ランド』がこの作品を参考にしたのではないか、とも言われていますよね。ストーリーの印象はいかがですか?

『ラ・ラ・ランド』の話題が出たので、少しだけそのお話をさせていただくと、私『ラ・ラ・ランド』が本当に大好きなんですよ。これは私の考えですけれども、『ラ・ラ・ランド』は最後に二つの未来を映像として目で見える形で示して、問いかけてくれた感じがするんです。

けれど、『シェルブールの雨傘』はそうではなく、戦争でギイとジュヌヴィエーヴの二人が引き離されて、ギイと一緒になるのか、ならないのか。その二つの未来がある中で、ギイと一緒にならなかった未来を描いているからこそ、「もし戦争がなかったら、二人はどうなっていたのかな?」「もしジュヌヴィエーヴがギイをもう少し待っていたら、どうなっていたのかな?」など、いろんな考えが浮かんでくるんです。そして、最後は観る側に問いかけてくるメッセージ性をもっていて、あらためて時代背景や社会情勢のことを考えさせられる映画だと思いました。

でも、暗いシーンばかりではなく、冒頭の部分は幸せな場面もあって、フランス映画らしいといいますか。そんな華やかなイメージもあるので、場面の色の変化がとてもある作品だと感じています。

母性が芽生えたときが役を演じるうえでのキーポイントに

――演じるジュヌヴィエーヴについては、どんな人物だと捉えていますか?

喜怒哀楽がはっきりしている性格かな、と。前半に関しては、若さもあって恋に恋焦がれているような。愛する人と一緒にいることが何よりの幸せで、そればかりが頭の中にある若い少女というイメージですが、お腹に子どもを宿してからの彼女自身が成長していくスピードはとても早いなと思いました。愛だけではどうにもならない現実に突き当たったとき、人はものすごい早さで成長し、心も考え方も変わっていくのでしょうね。

――たしかに子どものことを考えると、愛だけを大事にはしていられないですよね。

自分一人ではない、という。やっぱり母は強しと言いますけれど、その母性が芽生えたときが、ジュヌヴィエーヴを演じるうえで変わっていくキーポイントになると思います。

元雪組の方々とご縁にある京本大我さん。対話しながら、どうお芝居を作っていけるか

――ギイを演じられるのが京本大我さんですけれども、元宝塚の方々と共演経験がありますよね。あらためて、京本さんの印象はいかがですか?

そうですね。雪組出身の咲妃みゆさんや真彩希帆さんとも共演されていて、今回私は初めてご一緒するんですけれども、歌がお上手で舞台でも大変ご活躍されている方というイメージです。

まだちょっとしかお会いしたことがないのですが、歌に心がある方だなと拝見していて思います。なので、実際に一緒にお芝居したときに、どういうふうに演じられて、どういうふうに対話していけるのか楽しみでもあり、緊張でもありますね。

――男性の方とお芝居するというところでも、初めてですものね。

そうなんです。

――心境としてはいかがですか?

どうなんだろう……。未知の世界なので、楽しみ。というのもなんだか違いますかね? でも、また新しいお芝居の感覚を感じられると思うと、不安がありながら、楽しみもある。入り混じっているような感じです。

――稽古入りするときも、ドキドキですね。(取材時は稽古開始前)

そうなんです。すごくドキドキしています。皆さんと一斉に会うのも、どんな感じなんだろう? 宝塚以外での本読みも初めてなので、すでに緊張しています。

喜怒哀楽の表現をはっきりと、メロディーに流されすぎずに演じる

――荻田先生は、もともと宝塚歌劇の演出家でいらした方ですよね。作品について、何かお話はされましたか?

荻田先生の作品は(宝塚の)ファン時代に拝見していて好きな作品がたくさんあるので、先生とご一緒できるのがとてもうれしいです。先日、先生と一緒にお稽古したとき、役のことを丁寧に教えていただき、先生の想いも共有してくださいました。先生がしっかりと道筋を示してくださるので、自分もその道から逸れないように作っていきたいです。

――先生に言われて、印象的だったことはありますか?

舞台なので、映画より感情表現をはっきりと体現する、そしてメロディーに流されすぎに演じることが大事だとおっしゃっていただきました。メロディーが素敵だからこそ、ついそのメロディーに乗ってしまうんですけれども、乗りすぎないのが大切なのかなと思います。

取材・文:矢内あや
Photo:MANAMI

インタビュー後編はこちら

公演概要

ミュージカル『シェルブールの雨傘』

脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
演出・上演台本・訳詞:荻田浩一

出演:京本大我、朝月希和、井上小百合、渡部豪太、春野寿美礼 ほか

【東京公演】
公演日程:2023年11月4日(土)~11月26日(日)
会場:新橋演舞場

【大阪公演】
公演日程:2023年12月3日(日)~12月10日(日)
会場:大阪松竹座

【広島公演】
公演日程:2023年12月14日(木)~12月16日(土)
会場:広島文化学園 HBG ホール

東京公演公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202311_enbujo_cherbourg/

大阪公演公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202311_shochikuza_cherbourg/

広島公演公式サイト:https://h-shimizu.com/geinou/topic/2023-1214-16/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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