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田中涼星が芝居に託して伝えたいもの「笑顔や幸せな時間を届けたい」【シアダン vol.12】(前編)

INTERVIEW

THEATER GIRLが注目する“今知りたい若手俳優”へのインタビュー企画「シアダン」。第12回には、ミュージカル『テニスの王子様』3rd シーズンの乾 貞治役や、ミュージカル『刀剣乱舞』の御手杵役などで活躍中の「田中 涼星(たなか・りょうせい)」さんをお招きしました。

8月にはMANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~へ有栖川 誉役で出演予定の彼に、前編でうかがったのは、役者を志した経緯や、舞台に立つ喜び、そして自粛期間中に抱いた思いなどについて。のんびりした語り口で気負わず語ってくれた言葉からは、お芝居や役柄、観客への温かで強い気持ちを感じました。

インタビュー後編はコチラ

アクション俳優への憧れを、後押しした父の言葉

――まずは、役者の仕事をしたいと思ったきっかけを聞かせてください。

中学2年生の時に、友達の影響ですごく映画にハマったんです。それまでは、まぁ見るには見るけど、そこまで没頭はせずに、金曜ロードショーで軽く見るくらいで。それが同じクラスになった子の影響ですごく映画が好きになってから、いろいろ観はじめたんです。

それで、役者がノースタント、ノーワイヤーでアクションをやるフランス映画と出会ったんですけど、めちゃくちゃカッコいいなと思って。そこからアクションも大好きになり、ジャッキー・チェンみたいに、役者が自分でアクションをこなすスタイルのカッコよさに憧れて、友達とふたりで「俺らアクション俳優になろうぜ」って。

――微笑ましい経緯ですね(笑)。

最初は軽いノリだったんですけど、俺の中ではけっこうマジで、ずーっと夢として抱いたままいたんです。でも、高3で進路を決める時期に「やっぱり無理だろうし、さすがに夢で終わらせよう」と思っちゃって。そうしたら、お父さんが背中を押してくれたので、頑張ってみようとオーディションを受けて、この世界に入りました。

――お父様には、俳優になる夢について以前から話をされていたりしたのでしょうか?

多分、いつかしたんですけど、高校に入ってからはあまり「役者をやりたい」というような話はしていなくて。でも、進路について考える時になったら「お前のやりたいことをやれ」と言われたので、あぁ覚えてくれていたんだと。それまでは就職しようと思っていたので、1週間後には企業面接が控えていたんですが、それを取り止めさせてもらって、オーディションに応募しました。

――ご家族の後押しがあったから、今の田中さんがあるんですね。

それに、あの友達がいなかったら、今こうしていなかったかもしれないです。映画もきっと好きになっていなかっただろうし。アクション映画にハマって、物を飛び越えたり、高い所から飛び降りたりと、何度もまねごとをしたりしてたんですよ。本当はスタントマンになりたかったんです。それも、何でもやっちゃうビッグなスタントマンに。カッコいいじゃないですか。

けど俺、捻挫しやすいのでそれは諦めて、アクションをできるだけ自分でこなせる俳優がいいんじゃないかなって。そこからずっと、思い続けてました。

「役の可能性を広げたい」試行錯誤の役作り

――2014年の初舞台以来、コンスタントに舞台に立ち続けていらっしゃいますが、役作りをする上で大切にしているのはどんなことでしょうか?

2.5次元作品に出演させていただくことが多いので、原作を知ることはまず大事だと思います。その上で、キャラが動いている感動って大きいじゃないですか。アプリゲームが原作だと、声は聞けるけど、動きまでは見られないので。だから、動いた時のキャラっぽさは大切にしなきゃいけないなと。

原作に忠実でありつつも、その役の可能性を広げてあげたいので、いろいろ試行錯誤してチャレンジしながら役作りをしています。間違ったら間違ったで修正していけばいいので、極端なことをやってみたり、いろんな方向からその役を見てみるようにしてますね。

――稽古場で、共演者のみなさんとさまざまなパターンを試しながら、本番までブラッシュアップしていく、と。

そうです。ここまでいけるかなってちょっと踏み込んでみたり、逆に引いてみたりしながら。ただ、公演が始まってからも気付いたりすることはあるので、本番でもいろいろもらっている感覚ですね。日によって、こちらの受け取り方も、相手のセリフの言い方もちがったりするので「あ、こういう気持ちにもなるんだ」って発見をしながら、少しずつ前に進んでいっているような感じです。

――では、千秋楽を迎えるまで、役としての進化が続いていく感覚なんでしょうか。

そうだと信じたいし、そう感じてもらえたらありがたいです(笑)。

葛藤や悔しさを、己を鼓舞して乗り越える

――これまで役者をされてきて、悔しかったことや苦労したことはありますか?

けっこう毎回悔しいですね。なんだろうな……「自分下手くそだな、もっといけるだろう!」っていう瞬間や、自分が描いたイメージ通りにやれないことがよくあって。そういう時って「何でできないの?」ってメンタルが左右されてしまうんですよ。“上手くやろう”としてるからできないのかもしれないですけど、思ったようにできない葛藤を感じることが稽古中は多いです。それで悔しいというか……もっとできるだろう俺、って自分を鼓舞しながらやってます。

――向上心ゆえとはいえ、なかなか精神的なハードさがありますね……。

いちばん最初に( 舞台『K』の )アンサンブルで初舞台に立った時には、もうボコボコになりましたね(笑)。「俺、役者向いてないかも」って思うくらいに。鉄の扉を開けるマイムがあったんですけど、それが本当にできなくて。本番中もマチソワの間にマンツーマンの稽古があったりして、もう心折れそうでした。

俺はもう何をやってもダメだくらいの気持ちでしたけど、今は「マイム上手いね!」って言ってもらったりすると、あの時の経験が生きてるんだなぁって。ちゃんとガツンと叱ってもらえたのは、今ではありがたかったなと思いますね。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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