土屋直武、梅津瑞樹、甲田まひる、平野綾インタビュー「チェンソーマン」ザ・ステージ「真面目だからこそのストッパーを外して臨みたい」（後編）

2023.09.16

INTERVIEW

2023年9月16日（土）より「チェンソーマン」ザ・ステージが幕開けとなり、天王洲銀河劇場（東京）と京都劇場（京都）にて上演されます。

藤本タツキ氏による大人気コミック『チェンソーマン』は、悪魔を身に宿した少年デンジがデビルハンターとして活躍する姿を描くダークヒーローアクション漫画。2018 年より「週刊少年ジャンプ」（集英社）にて連載が開始され、2022 年 7 月からは第二部が「少年ジャンプ＋」（同社）にて連載中、2022 年10 月から放送された TV アニメも大きな話題となりました。

主人公デンジを演じるのは、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンに、不動峰中学校伊武深司役で出演している土屋直武さん。クールなデビルハンター早川アキを、舞台『刀剣乱舞』山姥切長義役など数々の人気作に出演する梅津瑞樹さんが務め、破天荒な血の魔人パワーを、シンガーソングライターとしても活躍中の甲田まひるさんが演じます。

彼らをとりまく一筋縄ではいかない個性的なキャラクターたちは佃井皆美さん、岩田陽葵さん、鐘ヶ江洸さん、谷口賢志さん、オレノグラフィティさんなど、舞台やテレビを中心に活躍する多彩な才能が顔を揃えています。

また、公安対魔特異4課を取り仕切る、ミステリアスなリーダー・マキマには、ミュージカルを中心に女優・声優・歌手など様々な場面で活躍中の平野綾さんが抜擢されました。

今回THEAER GIRLがインタビューを行ったのは、デンジ役の土屋直武さん、早川アキ役の梅津瑞樹さん、パワー役の甲田まひるさん、マキマ役の平野綾さん。後編ではお互いの印象や、誰かの言葉や行動で自分に変化が生まれた経験について、じっくり語っていただいています。

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「デンジってこんな気持ちだったんだ」と土屋さんが感じたエピソードとは

――みなさんが演じられる4名は、それぞれ全く違う人生を歩んできて、たまたま巡り合わせで同じ組織に身を置くことになったわけですが。みなさん自身も実に四者四様といった経歴のメンバーが集って今回同じ舞台に臨まれますよね。まだ顔を合わせて間もない方もいらっしゃるかとは思いますが、お互いの印象について聞かせていただけますか？

梅津：（土屋さんとは）以前インタビューでご一緒した時が初めましてでしたね。デンジさながらのやんちゃなヤツがキャスティングされたんだろうなと覚悟して行ったんです。「多分、あんまり仲良くなれないだろうな」って思いながら（笑）。そうしたら全く真逆の、ものすごく真摯で真面目な子が来て、「あぁ、彼がデンジなんだ……！」と。その驚きは最初に会った時にはあったんですけど、でもそういう彼だからこそ、稽古にもすごく真摯に取り組むだろうし、今はもう「座長について行きます！」という感じですね。（平野さんと甲田さんの）お二人は今日が初めましてで。甲田さんに関しては、「こういう子がキャスティングされたんだよ」ってお話は若干伺っていたんですが。なんでも曲を作られるということで。

甲田：そうなんです。

梅津：すごいですねぇ！！　おいくつなんですか？

甲田：22になりました！

梅津：22！？　若いですね、本当に！　だからもう、これから羽ばたいていかれるでしょう有り様を、今回見守らせていただきますといった心持ちです。平野さんは、僕はそれこそ『ハルヒ』（＝『涼宮ハルヒの憂鬱』）と『らき☆すた』で育ってきた世代なので。

平野：あぁ、そっかそっか！

梅津：こうしてお会いできるのが本当にすごいことだなと。だから関係値で言うと、アキとマキマにある意味似ているところがあって。アキの場合はなぜだか分からないけどマキマさんを崇拝しているというか、好きでいるじゃないですか。結果的にいろんなことがあって、実は……っていう流れではあるんですが、僕はそこがけっこうダブるなぁと思って。光栄です、本当に。

土屋：僕は、梅津さんとは取材の時が初めましてでした。アキって、言葉や接し方を見ているとすごく冷たそうに見えるじゃないですか。でも時々デンジを庇ったりすることもあって、実は優しい人なんだなと思っていて。僕も梅津さんと一緒で、そういう方かなと思っていたんですけど、取材でお話しさせていただくうちに、共通点があるのが分かったんですよ。その共通点を、この稽古期間や千穐楽までにめちゃめちゃ膨らませたいなって。アキとデンジでは積み上げられなかった先輩後輩関係を作っていきたいなと強く思っています。

――ちなみに、その共通点について伺っても？

土屋：出身が一緒ですし。あとはよくお散歩されるということなんですけど、僕も散歩するので。

平野・甲田：ふふふ、お散歩！

梅津：深夜徘徊をするんです（笑）。

土屋：もしかしたら僕ら、銀河劇場の周りを歩いているかも知れない（笑）。

（一同笑）

梅津：大変なことになるね（笑）。

土屋：甲田さんは、オーディションの時にご一緒しました。パワーとデンジの掛け合いを、オーディションの段階から見るということで、そこで初めてお会いして。

甲田：そうなんです。その時やったシーンを一緒にやらせていただいて。

土屋：でもオーディションだったので、やっぱり難しさがあったというか。「こんな方なんだな」と思いながらやりつつ、でもまだ受かるかどうかも分からない状況だったので。こうして改めてご一緒できるのがとても嬉しいですし、オーディションの時にやったデンジとパワーの言い合いのシーンも、もっともっとバディ感が出ればいいなと思っているので、僕もぜひ仲良くさせていただけたらって思っています。そして、平野さんは、ビジュアル撮影の時が初めましてだったんですけど……、デンジってこんな気持ちだったんだなって思いました。「あ、ヤバい！」みたいな。

梅津・甲田：あはは！

土屋：何ですかね。デンジからしたら、マキマさんはもうちょっと神的じゃないですけど、触れられない存在みたいなところがあるじゃないですか。ある意味もう、空想上の人物くらいな感じだけど、ちょいちょい現実味のあることを言ってくれるから「頑張る！」みたいな感じだと思うんですよ。最初にお会いした時がこのマキマさんの姿だったのもあって、ちょっと後ずさっちゃいましたね。「あ、あ……、おはようございまーす……！」みたいな感じに（笑）。目を合わせられなかったです、あはは。

平野：そう、目を合わせてくれなかったなぁと思って（笑）。土屋さんは、いろんな方から「めちゃくちゃいい子だよ」と聞いていたんです。で、本当にいい子だなって。今日は取材デーなのでインタビューで答えている時の感じをさっきからずっと見ていると、本当に素直で、真剣に役に取り組むんだろうなと感じました。頑張りましょうね。

土屋：頑張ります……！

平野：ビジュアル撮影の最初が二人での撮影だったんですけど、「そこから撮る！？」って感じのポーズからの撮影だったんだよね。

土屋：そうですね。

平野：お互い緊張していたのもあって。そのカットはまだお披露目してないので、早く世に出ればいいなと思います（取材時）。梅津さんは、これも周りからの話なんですけど……。

梅津：なんでそんな、周りから情報を（笑）。

平野：いやもう私、この作品に入るに当たって、「この方、どういう方ですか？」っていろんな人に話を聞きまくったんですよ。めっちゃ人見知りなので。梅津さんについても真面目な方って聞きましたし、みんなが「カッコいい」って言うんですよね。同性からカッコいいと言われるって、やっぱりすごいことだと思って。大作にも出られているし、経験値もすごくある方だから、さっきもお芝居の話をする時の熱い感じがすごく素敵だと感じました。これからお稽古場でもいろいろなお話をできたらいいなと思います。

梅津：ありがとうございます（照笑）。

平野：まひるちゃんは！

（一同笑）

――早くも距離感が縮まっているのを感じますね（笑）。

平野：すでにインスタをフォローし合ってるので、もう仲が良いつもりでいます！（笑）　22歳って聞いて、今ちょっとビビりましたけど。一回り以上違った（笑）。若さはもちろん、パワーちゃんみたいに、外に発するいいエネルギーに満ち溢れているのが伝わってくるんですよね。才能の塊だと思うし、これからどんどん広い世界に出ていく方だと思うので、きっとこの作品での経験もしっかり自分の糧にして羽ばたくんだろうなぁって。みなさん、今回共演できるのが楽しみな方ばかりなので、とてもワクワクしています。

甲田：そう言っていただけたのが嬉しいです。本当に先輩方ばかりの現場なので、いろいろ吸収して、ついていけたらと思っています。みなさんの出演作ももちろんチェックさせていただいて今回来ているので、そうしているうちにだんだん、ファンみたいな気持ちになっていて……（笑）。ビジュアルが上がってきた時には再現度のすごさに驚いてしまって、みなさんにお会いできるのをとても楽しみにしていたんです。梅津さんは今日が初対面なので、第一印象で言うのが申し訳ないんですけど、本当にそのまま“美”っていう感じで。アキくんだなってびっくりしたんです。

梅津：いえいえ、ありがとうございます。

甲田：デンジくんは、オーディションの時が初めましてだったんですが、私もすごく緊張していて。相手役だから、私がコケちゃったらペースを乱しちゃうなと思ったりしたんですけど、一緒にやったケンカのシーン、頑張りました。本番でも息の合った感じを期待されているのではと思うので、セリフを一緒に覚えたりしてもらえたらなって、どうやってお願いしようって想像していたんですけど。散歩が好きということなので、一緒に散歩しながらセリフを読み合わせしたいなと、さっき思いつきました（笑）。平野さんは、個人的によく平野さんの楽曲を聴いていたりと、憧れの部分がすごくあって。今回共演できることがすごく嬉しいです。足を引っ張らないように、本当に頑張りたいと思います。よろしくお願いします！

嫉妬心や恩師の言葉、4人の背中を押しているもの

――では、作品にちなんだ質問も伺わせてください。原作では、デンジが人間扱いしてくれたマキマに特別なこだわりを持ったり、パワーがニャーコを助けてくれたデンジの評価を改めたり、デンジとパワーと暮らすうちにアキの心境に変化があったりと、他者の振る舞いによって気持ちや行動に変化が生まれていくさまが幾度も描かれています。みなさんにも、誰かの言葉や行動によって助けられたり、自分自身に変化が生まれたような経験があったら聞かせてください。

梅津：僕はわりと、原動力が恨みだったり妬みだったりという、憎しみのパワーで（笑）。そこから何かを作ったり、動いたりすることが多いんです。だからある意味では、常に周りの状況から影響を受けながら、この仕事を続けているところがありますね。「なんで俺が持っていないものを、お前が持っているんだ」っていうのが、ある意味原動力です。

――身の内に燃えている炎が青い感じがしますね。

梅津：青いですか？　なんか、僕自身は紫色とかな気もしますけど（笑）。

土屋：僕は、そうですね……。言葉遣いなどは普段から気を付けてはいるんですけど。自分の恩師のような方から「当たり前のことをできるようにしなさい」という言葉をかけていただいたのをきっかけに、自分の性格や態度がまるっきり変わったという経験があって。それまでは「ありがとう」という言葉なんかも適当に言っていたところがあったんですけど、その方にその言葉をもらってからは、何かしてもらったら「ありがとう」を伝えようとか、他人に優しくあろうと、考えるようになりました。で、自分の座右の銘というか、好きな言葉が「因果応報」なんですけど。

梅津：（大笑）。

平野：それなんだ！　すごいの選んだね！（笑）

土屋：何というか、自分のやったことが、いずれ自分に回ってくるっていう言葉が好きなんです。だからこそ、人に悪いことをせず、良いことをして。見返りを求めるわけじゃないですけど、常にそうして心掛けていたら自分が幸せになるんじゃないかなと思って。そんなこと、高校生だった頃には思ったこともなかったので、すごくいい経験をさせてもらったなと思っています。

平野：私、20代の終わりくらいに、歌を一から学び直そうと思ってニューヨークに留学していた時期があったんですよ。歌のスキルの問題だけじゃなくて、お仕事をしようとする時に、どう現場にいたらいいのかや自分のあり方っていう、わりと根本に関わることまで悩み出しちゃっていた時期で、留学してもう一度気持ちを改めようと思っていたんです。その時出会った歌の先生に、今でもずっと習っているんですけど、その先生に言われたのが「30歳が0歳だと思いなさい」ということで。「30歳になるまでの時間をどうやって生きてきたかで、30歳になった時に生まれ直して、そこから人生が始まる。自分がそれまでにできる経験は全部して、後悔がないようにいろいろなことを全部やって、そこから自分らしい人生が始まると思ったら、まだ間に合うでしょう？」と。そうしたら、すごく楽になったんですよね、いろいろなことが。歌のスキルだけじゃなく、そういうメンタルの面でも学べたことがやっぱり大きかったなと思います。まだ6歳だと思って頑張ってます！（笑）

甲田：私は仕事を始めたのが小学校の時で。ずっと今の事務所にいるので、その頃から年上の方に囲まれて生活をしてきていて、自然とキャリアのある方からの言葉やアドバイスをいただくことが多かったんです。きっと気付かないうちに、その一つ一つが自分を変えてくれている、成長させてくれている部分が大きいんだろうなと感じているんですけど。最近思うようになったことが、それがだんだんなくなるのが怖いなって。だんだん怒られなくなっていくって、よく聞くじゃないですか。それを少し感じるようになってきて、今まで以上に自分を客観的に見ていかないとなって、すごく思うんです。あとは自分の性格的に、人の感情が自分にも反映されてしまうというか、自分もそういう気持ちになりがちなんですよ。だから「自分だったらこう言って欲しいから、この人もそうかもしれない」って人のことばかりを考えて行動することが多くて。それで自分が疲れてしまうこともあったりして、けっこう悩んでいたんですけど。結果としてそれで気持ちがいい方向に向かうことも多かったので、そこは無理して変えずにいこうかなと思っています。

――では最後に本作を楽しみされている方へのメッセージをお願いします。

平野：この作品を舞台でやるということ自体が、かなり攻めてると思うんですけど。これからその稽古が始まって、私たちは全く想像していなかった範囲に踏み込むことになるので、かなり怖さも感じています。でも、きっととんでもないものができあがると思うので、早くお客さまに観ていただけるよう、ケガなく頑張りたいです。そしてまだ一作目ではありますが、続いていけばいいなと思います。

甲田：私もイメージがまだついてない部分がたくさんありますが。当日を迎えてのソワソワする感じや、実際にお客さんが入ってからの自分の心境の変化もきっとあると思うので。今は本当に緊張のほうが大きいですが、お客さまにはカンパニーの団結力や仲の良さまで感じ取ってもらえるような舞台をお見せできたらと思いますし、観てよかったなと思ってもらえるように頑張ります。

梅津：いろいろと、どう表現するのか不明なところが多い作品ではあると思うんですが。こと、アクションに関しては、アクション監督が栗田（政明）さんで、これまでに何度もご一緒したことのある方なんです。栗田さんのつける殺陣は絵的にもものすごくかっこいいし、この作品を好きな人も、殺陣やアクション自体が好きな方も、どちらも満足させられるような殺陣をつけてくださると思うので。そこもすごく楽しみにしていただければと思います。

土屋：この作品の舞台化が決まった時は、どういう演出になるのか、キャストはどうなるのか、そもそもどういった舞台になるのかといった声がたくさんありましたが、最強と言えるほどのキャスト陣と演出が待っていると思います。どういう形になるんだろうという疑問はあると思いますが、その疑問がすっきり晴れる舞台になると思うので、ぜひ劇場で、その気持ちを晴らしていただけたらと思います。

取材・文：古原孝子
Photo：野田涼

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