大崎捺希が舞台に立って背負うもの「作品の中でいきいきと生きたい」【シアダン vol.07】(後編)
THEATER GIRLが注目する“今知りたい若手俳優”へのインタビュー企画「シアダン」。第7回にご登場いただくのは、『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』仁兎なずな役や、舞台『刀剣乱舞』前田藤四郎役などを演じる「大崎捺希(おおさき・なつき)」さん。
12月には「『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』〜Night of Blossoming Stars〜」への出演を控えている大崎さんに、後編では役者としての意識が変わった作品や、自分を成長させてくれた役などについて語っていただきました。大好きだという先輩や、超ご近所の役者仲間のお話もうかがえたのでお見逃しなく!
「自分の気持ちと役の感情がリンクした」そのきっかけとは
――これまで出演した作品のうちで、特に思い入れの深いものについて聞かせてください。
「ざ☆くりもん」の『晒場慕情』(=平成時代劇 片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」第十七回本公演 『晒場慕情~恋慕の木遣り唄~』)ですかね。僕が出演した3作目の作品で、遊女と火消しの駆け落ちがメインのお話なんです。二人は捕まってしまうんですけど、僕はその牢屋の番人役で、役人の身ながら二人の自由な生き方に惹かれていくっていう。
そして彼も身分が上の女性と結婚が許されない恋をしているんですが、ある時喧嘩をして離れ離れになってしまって。そんな時に江戸が火事になり、助けに行った先で炎の中、二人で死んでしまうんです。エンディングはあの世のシーンで、そこで二人は仲良くしている――ざっくり話すとこんなストーリーなんですけど。死にそうになっている人を命がけで助けに行くなんて経験、実際にはしたことがないじゃないですか。
――そうですね。普通の生活をしていたら、そうそうないと思います。
でも、ちょうどその舞台の最終稽古の日に、僕の地元の熊本で大きな地震があったんです。携帯の通知でそれを知って家族に電話したんですが、連絡がつかないので「どうしよう、どうしよう」ってすごく心配で。なんとか稽古を終えた後も、不安で不安ですぐにでも助けに行きたい気持ちでしたけど、それができる状況ではなかったですし。
――家族の安否が分からないのは、相当気持ちがつらいですよね。
結局、後から無事なことが分かったんですけど、その時に先輩がかけてくれた言葉が「今の気持ちを役に乗せればいいんだよ」だったんです。プライベートで起きたことへの気持ちと、役の感情がリンクしたのがそこでしたね。お芝居が本番に入ってからも「捺希は変わった」って先輩や周りのみんなが言ってくれて。あの時のできごとは、役者をやっていく上ですごく大事なことだったと思います。お芝居はフィクションでも、そこにある気持ちは嘘じゃない。それが分かった役なのでやっぱり思い入れがあるし、そこから役者としての意識が変わりました。