加藤和樹インタビュー ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』 「この世界で生きるジャックとアンダーソンを丁寧に作り上げたい」(後編)
19世紀末のロンドンで実際に起きた猟奇連続殺人事件。世界的にも有名なこの未解決事件を元に、チェコで創作されたミステリーミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は、韓国で独自のアレンジをくわえられ、初演以来愛される大ヒット作となりました。
本作は待望の日本版初演として、豪華キャスト陣を迎え、2021年9月9日(木)より日生劇場にて開幕します。
今回お話をうかがったのは、繊細な心を隠し荒ぶりながらも正義のため事件を捜査する刑事・アンダーソン役と、ロンドン市民を震撼させた連続殺人鬼・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”のジャック役を回替わりで演じる加藤和樹さん。
インタビュー後編となる今回は、ミュージカルで使用される楽曲の印象や本作への意気込みなどを語っていただきました。また、未解決事件にちなんで、加藤さんが今後「解明してみたい未知な共演者」についてもうかがっていますので、ぜひお楽しみに。
ソロ曲にコーラスが入ることでより曲の重厚感が出る
――アンダーソンとジャックそれぞれソロ曲がありますが、歌ってみてどんな印象ですか?
やはり実際に歌ってみるとかなり難しい楽曲が多く、キャラクターによって楽曲のカラーが全く異なる印象です。
さらに珍しいと思うのは、それぞれのソロ曲に対して、アンサンブルのコーラスワークが多く入っているところですかね。普通のミュージカルのソロ曲ですと、一人で心情を歌い上げる曲が多いのですが、今回はコーラスが入ってくることで、その曲により重厚感が出て世界観を拡大させてくれる効果があって。それがとても面白いなと感じました。
歌稽古をしているときは一人なので、コーラスが入ってくる場面をイメージしながら行うのですが、実際に立ち稽古に入ってからは「こんな感じになるのか!」という発見がありました。一緒に同じ歌詞やメロディーを歌うところもあるので、コーラスとのバランスはもちろん、合わせ方に関してもまだまだ稽古が必要な段階です。
――アンサンブルとのハーモニーも楽曲の魅力ということですね。
はい、まさにその通りです! 大変魅力的な部分だと思っています。これが完成したら結構楽しいといいますか、お客様も「おお!」となってくださるかなと。ただ、アンサンブルの方たちの分量もかなり多いのが大変そうで……そこだけ心配です。
――アンダーソンとジャックで、がらりと曲の印象も変わりますよね。
かなり違いますね。ジャックのソロ曲は基本的にロックテイストなので、それだけでもキャラクター性が出ています。尖っているというか、ちょっとぶっ飛んでいるというか(笑)。急に異質なものが入り込んでくる感じです。ジャックは殺人鬼ですから、やはりそれが突き抜けていないといけないので、やり過ぎくらいがちょうどいいのかなと思っています。
逆にアンダーソンは、とても繊細なメロディーで歌うソロ曲があるので、心情が伴っていないと表現できないですね。芝居ができて、ようやく完成する楽曲。もちろんどの曲にもそう言えるのですが、特にアンダーソンに関してはそれが強いかなと。