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上田堪大は歩みを止めず進化する「切磋琢磨できる仲間がいるほど芝居は面白い」【シアダン vol.06】(前編)

INTERVIEW

THEATER GIRLが注目する“今知りたい若手俳優”へのインタビュー企画「シアダン」。第6回にお迎えしたのは、音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」土岐蓬生役や、MANKAI STAGE『A3!』の雪白 東役などを演じ、先頃舞台「蘭~緒方洪庵浪華の事件帳~」での旅巡業を終えた「上田堪大(うえだ・かんだい)」さん。7月には歌手として1stシングル「イロドリ/記憶の中で」もリリースされました。

10月には舞台「里見八犬伝」に犬村大角役での出演を控えている上田さんに、前編で語っていただいたのは、これまでを振り返っての自身の変化や、波乱万丈だった巡業道中、刺激しあえる役者仲間などについて。変わることを恐れず、真摯に芝居と向き合う姿勢が感じられます。

インタビュー後編はコチラ

今の役作りの基盤となったのは土岐蓬生役

――まずは、役者を志したきっかけを聞かせてください。

元々、芸能の仕事に憧れがあったんです。でも俳優に、というよりは、より広いイメージでタレントに憧れていたっていうほうが近いかもしれないですね。そういう思いもあって、大学3年生の周りが就職活動を始めている中でも、自分は全くやっていなくて・・・。 そのうち「このままでいいのかな」って思い出した時期に、ちょうどとあるオーディションがあったんです。人生一度きりだからやってみようと思って挑戦したら、書類審査に通って「自分でもいけるかもしれない」って思ったら、落ちたんですけど(苦笑)。悔しさからのスタートになりましたが、今となっては思い切った決断ができて良かったなと思います。

――これまで演じてきた役の中で、特に思い入れの深いものを挙げるなら、どれでしょうか?

ターニングポイントになったと感じているのは、ミュージカル「Count Down My Life」で演じた青年役です。そこから、2.5次元作品へ何作も出演させていただくようになった今は「金色のコルダ」(=音楽劇「金色のコルダBlue♪Sky」)で演じた土岐蓬生(とき・ほうせい)も、僕にとって大切な役ですね。

土岐蓬生役で僕は初めて2.5次元作品に触れたんですが、役作りとしてかなりダイエットをしたのも初めてでした。それに、それまでは台本を読んで自分オリジナルの役を作り、作品の中でどう生きているのかを考えていたところから、“今回の舞台ではこう生きているけれども、ゲームではこういう人だ”という、台本以外にもプラスして答えが示されている状況になったわけで。「どうやっていこう? まずは知らないとな」と、すごく研究しました。

――原作があると、役についての情報量が格段に多くなりますよね。

シリーズを通して3度演じさせていただいたんですが、ヴァイオリンを演奏するシーンもあったりして、かなり大変でした。現在ありがたいことにさまざまな役をいただいている中で、どの役を演じるにあたっても、土岐蓬生に対して自分が最初に試みたことや感じたことが、今に繋がっているなって思います。特に2.5次元作品の時にはよりそれを感じますね。そういう意味では、すごく役に感謝しています。

――土岐蓬生役が、2.5次元作品を演じる際の役作りの基盤になっていると。

そうですね。アニメって現実の人間とはちがう動きをする時があるし、ゲームが原作だと立ち絵だけの場合もあったりと、そこから先は想像の範囲になるわけで。それを舞台作品として観ていただくにあたって、僕たち役者以上にその作品を好きなファンの方がいらっしゃるんです。その期待やイメージをいかに崩さず、それでいて自分にしかできないキャラとして演じるか――例えば土岐蓬生なら、僕にしかできない土岐蓬生にしていくっていう。でもやっぱり、代わりがきかない人になるというのは難しいことで、これまでシリーズ通して演じられているという点でも、土岐蓬生役には今でも深い思い入れがあります。

――思い切って聞いてみたいのですが、別の方にキャストが変わった時の気持ちはどんな感じなのでしょうか?

正直なことを言えばさみしい気持ちはあります。でも、ずっと自分がその役を演じるのか、演じられるのかとなると話がちがってくるので。それよりはむしろ、その役を通して学んだことを次のステップに繋げていこうという思いや、僕の役を引き継いでくださった方が、その人なりに役を愛して大切にしてくれたらいいなっていう気持ちが、一番強いですね。

「まだまだ新しい経験ができる」30歳を迎えての進化と深化

――30歳という節目の年齢を迎えてから、お芝居へのアプローチや役作りの面で、以前とは変わったなと思うことはありますか?(※取材は9月下旬に行いました)

ありがたいことに、4年連続で誕生日の前日と当日を板の上で過ごすんですけど。昨年、「ヘブンズ・レコード」(=音楽朗読劇「ヘブンズ・レコード~青空篇~」島崎役)で29歳の最後と30歳の初めを迎えて、それから LIVE THEATER『Royal Scandal~秘恋の歌姫[ディーヴァ]』という舞台に出て……これがライブと芝居を融合した新しい作品だったんです。その後、『A3!』(=MANKAI STAGE『A3!』)の雪白 東(ゆきしろ・あずま)役に出会ったんですが、ここでも半年間続けて同じ役を 演じるという、これまでになかった経験をしまして。役が決まった時から勉強はしていましたけど、長い期間演じたことで、一気に愛着が湧きましたね。

こういうことを経験してきた中で、何かが変わったかということより、30歳になってもまだまだ新しい経験をできていることが僕にとっては大きいですね。

――たしかに、さまざまな経験を積んできた上で、さらに新しい挑戦ができるのは嬉しいことですよね。

つい最近まで「蘭」(=舞台「蘭~緒方洪庵浪華の事件帳~」)の再演公演があって、今回は23公演、全13カ所を回る旅巡業だったんです。これも初めての経験だったんですが、1日1公演のスケジュールばかりだったので、自分の中では「もっとやりたいな」「体力的にも別に大丈夫なんじゃないかな」っていう気持ちでいたんです。決して甘く見ていたわけではないんですけどね。でもいざ始まってみたら、めっちゃ大変でした(笑)。もう、移動が。

――やはり移動は疲労がたまりますよね。大変そうです。

いやいや、すごいですよ。神戸の次が天草での熊本公演だったんですが、泊まるところの関係で、その翌日に公演のある鹿児島に泊まることになったんです。それで当日の朝から熊本に向かったんですけど、台風でフェリーが欠航になってしまって、朝6時から5時間かけてバスで移動したんです。それで本番をやって、夕方はフェリーが出ていたので急いで乗り込んで……帰りの時間は半分で済んだんですけど、それでもバスに揺られた上で往復するのはすごく大変でしたね。さらにその後、鹿児島からの飛行機が飛ぶか飛ばないか事件もあったりして。この時に初めて航空法ってものを学びました(笑)。

――波乱万丈の道中だったと(笑)。

そういう意味で大変さはありましたけど、普段は観劇する機会がなかなかないという方々にも、舞台を観ていただけたんじゃないかなと感じました。各地方で笑いのツボも笑い声の大きさもちがうし、毎回劇場も変わるから、毎日が初日のような感覚で。場当たりもほぼしないので、舞台についての説明を聞いてから、役者同士で広さや距離感を把握して。まさにこれが巡業なのかなって感じがしましたね。

終わった今だから思うことなんですけど。今後自分が役者として、人として成長していく上で変化するためのきっかけを、今回の経験からもらえた気がします。

――かけがえのない経験となりましたね。

お客さんの反応を見られることも嬉しかったです。観に来てくださっている方は、おじいちゃんおばあちゃんがかなり多いんですよ。共演の役者さんの中に大衆演劇や宝塚出身の方がいるので、舞台に出る度に掛け声がかかったり、拍手が起きたりして。そういうところでも自分が普段いるフィールドとはちがう方々と旅ができたことが実感できました。30歳を迎えてからの経験では、これも自分にとっての大きな財産になったなって思います。

「歌もやりたい」上京当時の夢が叶った今の思い

――上田さんはこれまでにも劇中やイベントなどでは歌を披露されていましたが、今年は本格的に歌うことへ挑戦されて、7月27日には1stシングル「イロドリ/記憶の中で」をリリースされましたよね。今の心境はいかがですか?

上京してきた頃にはもう歌が好きだったので、「歌もやりたいな」という気持ちがあったんですけど。東京って、どんな職業やジャンルでも、トップの人や上を目指している人がたくさん集まってくる街じゃないですか。そんな中で「こんなに上手い人いるの?」って現実を知ったこともあって、「僕ごときが歌手なんてなれない」と思っていたんです。

それがこういうチャンスをいただいて。配信という形式なら携帯ひとつで済んでしまう今の時代に、CDという形でリリースできてモノとして残るのが、僕にとってはすごく貴重ですね。だからCDにして良かったなって、今すごく思っています。

――配信は便利ですけど、盤としてあることの良さはたしかにある気がします。

それに、リリースされるまでにもたくさん僕の意見を取り入れていただいて、自分で曲を選ばせてもらったりしたんです。「やる」と決まった時からデビューまでは、けっこう時間もかかりましたし、途中で変わった部分もありますが、出せた今としてはすごくホッとした気持ちですね。

――実際にイベントで披露されたりもしたかと思いますが、いかがでしたか?

これまでのイベントでは「◯◯さんの△△△△を歌います」だったのが「上田堪大の『イロドリ』」って言えるので、「あ! 自分、デビューしたんだ!」って、そういうところで実感しちゃいますね(笑)。それまでは実感が全然湧きませんでした。できあがってきたCDのジャケットを見ても「え? 自分じゃん」みたいな。本当に夢にも思っていなかったので。

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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