本田響矢インタビュー 『エノケン』 「新たな一面を見ていただけるように頑張りたい」(前編)
2025年10月7日(火)より東京・シアタークリエにて、音楽劇『エノケン』が上演されます。
戦前・戦中・戦後……と、昭和の日本をとびきりの笑いで照らしつづけ、“エノケン”の愛称で親しまれた榎本健一。人生のすべてを喜劇に捧げ、「日本の喜劇王」と謳われたエノケン。そして、彼を愛し、支えつづけた、家族や仲間、ライバルたち……。
エノケンの波乱の人生を又吉直樹さんが新作戯曲として書下ろし、市村正親さんが主演。さらに、松雪泰子さん、本田響矢さんらが共演に名を連ねます。
THEATER GIRLは、榎本鍈一役の本田響矢さんにインタビュー。前編では、7年ぶりとなる舞台出演に挑むお気持ちや演じる役柄の印象、演技への取り組み方など、たっぷりとお話をうかがいました。
久々の舞台出演は「ワクワクする気持ちでいっぱい」
――今回、7年ぶりの舞台出演になるとのことですが、出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか。
舞台はまだ10代の頃、お芝居を学び始めた時に出演した以来なので、本当に久々になります。僕自身、音楽劇に出演するのは初めてなので、どのように役や作品にアプローチしていくのか、まだ本が上がってきていないので(取材時)そこまで深くは考えられていないのですが、率直に楽しみですし、ワクワクする気持ちでいっぱいです。
――久々の舞台出演に備えて、準備やイメージされていたことはありましたか?
前回舞台に出演したときは、共演者の方々についていくのがとにかく必死で。ただがむしゃらに準備をしてやっていたのを覚えています。今回はもう少し気持ちに余裕を持ちながら挑みたいと思うのと、その時より公演数も多いので、体調面などにも気をつけていきたいと思っています。
――現時点での役柄の印象はいかがでしょうか。ご自身と近いと感じる部分もありますか?
生まれつき病弱で、大人しくて礼儀正しい性格だったということはお聞きしているのですが、台本もまだ手元に届いていないので(取材時)、今は僕も楽しみに待っているところです。
――実際にビジュアルをまとってみて、役への実感は芽生えましたか?
実感というよりは、当時の方は人に見られることを、今よりも意識していたんだなと感じました。シャツやベストを着て革靴を履いて、髪型も服も少し背筋が伸びるような感じで。昭和はこういう時代だったんだなと実感しました。
――髪型もビシっとされていますよね。
そうですね。気持ち的にも「よし!」と気持ちが入ります。

99パーセントは楽しみ、ワクワクの方が強い
――本作の主人公であるエノケンについては、どのような印象をお持ちですか?
過去にエノケンさんと関わってきた方からの言葉を読んで、本当にたくさんの方に愛されていたんだなと感じました。それから、息子への愛がとてもあった方なんだろうなと。そして、喜劇というものに対しての厳しさも見えましたし、どういう人物像か少しイメージができてきました。
――音楽劇への出演は初めてになりますね。
今回は、自分がまったく経験したことのない音楽劇ですが、ほぼ99パーセントは楽しみ、ワクワクしています。
――今回、共演者の方々も大先輩が多いかと思いますが、どんなことを吸収されたいですか。
大先輩の方々とご一緒出来るのは本当に有り難く、なかなかある機会ではないので全てを吸収する気持ちで臨みたいと思っています。

――演技への取り組み方について、ご自身ならではの工夫されていることはありますか。セリフ覚えなどについては早い方でしょうか?
セリフ覚えに関しては、スッと一回読んだだけで入ってきた作品もありますし、何度もセリフを読み返して噛み砕かないと入ってこない時もありました。作品によってまったく違いますね。
でも共通して思うのは、その役をしっかり理解してから現場へ入りたい気持ちが大きいです。例えば、20歳の役を任されたとしたら、生まれた時から20年間をどう生きてきたのかを考えて、作品ごとにその役の履歴書を作るんです。
――自分なりに、役の履歴書を作られるんですね。
兄弟はいるのか、好きな食べ物は何か、友達は少ないのか、多いのかとか、台本上には書いていない様々なことを文字に書きだすようにしています。
――そういう背景をしっかり組み立てることで、役作りが変わったという実感はありますか?
やっぱり、セリフに対しての疑問は減った気がします。「ここはなんでこうやって言っているのか」と、そのセリフに対しての理解度も変わってきたのかなと。役について書き出すことで、自分を信用して監督ともお話しできるようになったように思います。
――その役作り法については、いつ頃身に付いたものなのでしょうか?
最初の頃はまったくできていなかったので、意識し始めたのは、ここ2、3年くらいです。
――なにか、きっかけみたいなものがあったのでしょうか?
それまでは、作品の中でゲスト出演をさせていただく機会も多かったので。セリフが少ないと、その分どんな役なのか、なかなか見えてこなかったんです。
それが少しずつ、役の重要さや分量が増えてきて。やっぱり分量が多いとその分見えてくるものも多いので、それならもう少しその役の過去を探ろうと思ったのがきっかけでした。

作品の世界に没入できるような気がする
――これまでに本田さんが刺激を受けた舞台作品や役者の方はいらっしゃいますか?
以前、シアタークリエでミュージカル『ファンレター』を観劇させていただいたのですが、目の前でお芝居が繰り広げられる感じが、映像とはまた違う迫力があって圧倒されました。実際に拝見すると、素晴らしいものだと感じます。
映像は映像の良さがあって、素敵だなと思うところもありつつ、実際に舞台を観に行くと、毎回、強く胸の内に刺さってくるものがあります。
――実際にシアタークリエでご観劇されてみて、どんな劇場だと感じられましたか?
「近い!」と思いました。目の前で起きていることが、リアルになるというか。いざ自分がここでお芝居をすると思ったら、こんなに目の前で見られることになるのかという気持ちにもなりました。まだ、実際に立ったことがないのでわからないですが、作品の世界に没入できるような気がします。
――前回の舞台出演もかなりお客様との距離が近かったと思いますが、記憶に残っていることはありますか?
“自分たちの世界で生きている”という記憶があって、その時も不思議と、お客さまがいるという感覚がなかった気がします。
なので、今回の舞台も同じような感覚でできたらいいなと。前回から時が経っていて、感じ方だったりアプローチの仕方だったりも変わってくると思うので、どうなるのかとても楽しみです。
――本田さんが俳優の仕事をしていて、とくにやりがいを感じるのはどんな瞬間でしょうか。
「この作品を観て勇気づけられました」とか、「明日からまた頑張ろうと思いました」とか、そういうポジティブに人の心が動いたコメントやメッセージをもらうと、俳優をやっていて良かったなと思います。コメントも見ていますし、SNSのメッセージも全部読んでいます。
――舞台だとカーテンコールもあるので、直接お客様の感情が感じられそうですね。
どんな景色が広がっているのかとても楽しみです。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:梁瀬玉実
公演概要
音楽劇『エノケン』
2025年10月7日(火)~10月26日(日)
シアタークリエ
出演:
榎本健一:市村正親
花島喜世子・榎本よしゑ:松雪泰子
榎本鍈一:本田響矢
小松利昌
斉藤 淳
三上市朗
菊谷榮:豊原功補
作:又吉直樹
演出:シライケイタ
音楽監督:和田俊輔
美術:伊藤雅子
照明:佐々木真喜子
音響:戸田雄樹
衣裳:中原幸子
ヘアメイク:宮内宏明
稽古ピアノ:久田菜美
演出助手 :斎藤 歩
舞台監督 :幸光順平/鈴木拓
題材監修:原 健太郎
製作:ホリプロ/東宝
チケット:
全席指定:12,800円
Yシート:2,000円[7月28日~8月3日販売]
※ホリプロステージのみ取扱い
(税込)
【ツアー】
<大阪公演>
2025年11月1日(土)~11月9日(日)
COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<佐賀公演>
2025年11月15日(土)~16日(日)
鳥栖市民文化会館 大ホール
<愛知公演>
2025年11月22日(土)~24日(月祝)
名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)
<川越公演>
2025年11月28日(金)~30日(日)
ウェスタ川越 大ホール
