岐洲匠×池田純矢インタビュー『砂の城』「今自分にできる一番正直で思いがつまった作品」（後編）

2022.10.07

INTERVIEW

2022年10月15日より東京・紀伊國屋ホール、11月3日より大阪・ABCホールにて、エン＊ゲキ#06即興音楽舞踏劇『砂の城』が上演されます。

エン＊ゲキシリーズは役者・池田純矢さんが自身の脚本・演出により《演劇とは娯楽であるべきだ》の理念の基、誰もが楽しめる王道エンターテインメントに特化した公演を上演するために作られた企画。2015年に芝居とエンターテインメント性を掛け合わせた朗読劇+シチュエーションコメディを上演し、2017年には本格的な演劇作品として上演され、以降、様々な切り口からエンターテインメントを創り上げて発信し続けています。

この度、シリーズ6作目となる本作では、“即興音楽舞踏劇”と題して、即興で音楽を奏で、舞うという挑戦的で革新的な試みに挑戦します。

主演を務めるのは、高い歌唱力とキレのあるダンスのみならず、繊細かつ力強さのある演技力で高い評価を得ている中山優馬さん。共演には『宇宙戦隊キュウレンジャー』の主演で注目を集め、ドラマ、映画、舞台とジャンルを問わず活躍中の岐洲匠さん、初舞台にしてオーディションにて抜擢された夏川アサさん、声優としても様々な役柄を演じている野島健児さん。そして、本作の脚本・演出も務める池田純矢さん、エン＊ゲキシリーズお馴染みのメンバーの鈴木勝吾さん。さらに、日本のドラマ・演劇界では欠かせない存在の升毅さんといった、華と実力を兼ねそなえた多彩な顔ぶれが集結しました。

THEATER GIRLは、レオニダス役の岐洲匠さんと本作の脚本・演出、ゲルギオス役を務める池田純矢さんにインタビュー。後編では、作品の内容にちなんで『運命が変わったと感じたエピソード』や本作への意気込みを語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

始まりの感情を大切に演じたい

――岐洲さんは今回レオニダス役を演じられますが、どのように演じていきたいと考えてらっしゃいますか？

岐洲：奴隷の身分でいる時間は短いんですけど、奴隷のレオニダスがゼロで空っぽだとしたら、王族に近づいていくことによって、空っぽな自分を埋めていきながらお芝居をしたいと思っています。始まりの感情を大切にして演じたいなと思います。

今この時間を生きていること自体がすごく奇跡

――本作では交わることのなかったテオとレオニダスの運命が強く結びついていきますが、お二人が人や出来事と出会って運命が変わったと感じたエピソードはありますか？

池田：毎日思ってますよ。本当にちっちゃなことの積み重ねだなって。今も、いろんな媒体の方がこうやって作品を取り上げてくださって、素晴らしい俳優の皆さんが命を燃やして役を演じてくださる。今この時間を生きていること自体が、すごく奇跡だし感謝しています。何か一つ違ってもこの状況にはなっていないと思うので、毎日影響を受けていますね。

岐洲：新しいことに挑戦するタイミングってそんなにたくさんある訳ではないと思うんです。今回のことであれば、池田さんがこうやって新しいことに挑戦されていて、そのタイミングに僕が参加できたことがすごい奇跡だなと思います。僕、普段はボーッとしているので、まさか自分が、レオニダスのような強い男を演じることができるなんて思わなかったし、レオニダスという人間に出会えたことがすごく嬉しいですね。

池田：いいこと言ってくれますね。本当に作家冥利につきますよ。

岐洲：本当に池田さんが本も書いていらっしゃるんですよね？

池田：ゴーストライターがいると思ってんの？（笑）

岐洲：いやいや、本当にすごいなと思って！　僕はワードセンスがないので。言い回しとかも、僕たちのことを実際に見て変えてくださったじゃないですか。それが本当に読みやすく喋りやすくなってて、天才ってこんなに近くにいるんだなって思いました！

池田：めっちゃ褒められとるわ（照）。

岐洲：本当に頑張ります！

池田：やっぱり、技術的な部分も必要なものが要素としてはあるので、それはもちろん稽古の中で手に入れてもらいたいと思っています。ただ、キャスティングをしてから改めて本を書き直して他の誰にも演じられない役になっているので、レオニダスとどんどん癒着して、そのものみたいに見えたらいいなと思っています。でも本当にそれくらいで、何の心配もしていないです。

岐洲：僕の場合、台本をいただいたらきちんと覚えて、本読みの段階では90パーセントくらいセリフが入っている状態でいきたいんです。ただ、今回は台本が変わったとしても毎回すごく読みやすくなっているので、ありがいです。だから逆に楽しみですね。僕の役は重厚感のある役なので、きっと演じていると、どんどん疲れてきてしまうと思うんですけど、初めのワクワクしている気持ちを忘れないように頑張ります。

今自分にできる一番正直で、思いがつまった作品になっている

――では、最後に本作を楽しみにしている方にメッセージと意気込みをお願いします。

岐洲：僕のことを知っている方は、ダンスが苦手ということを多分知っていると思うのですが、今回どれだけレベルアップできているのか楽しみにしていてほしいです。そしてレオニダスという役はすごく強い男なので、誰よりも強く輝いているレオニダスを演じられたらいいなと思います。皆さんもこの作品を観て、人生が少しでも楽しくなってもらえたらいいなと思います。楽しみに観に来てもらえたら嬉しいです。

池田：本作は、今まで描こうとしてきたものとすごく変わっている訳ではないんです。ただ、僕が今まで作ってきたものを観てくださっている方は多分驚くと思いますし、もしかしたらいつもとは違う作品に見えるかもしれないです。でも、結局一人の作家が書けるものなんて一つしかないと思っているので、たとえ100本書いたとしても、結局本質は一つしかないなって。それをどういった雛形に乗せるのかが、やっぱり作家性であったりするのかなと思うのですが。

今回においては、単純に自分だけではなく、辛かったことや苦しかったこと、逆に嬉しかったことや楽しかったこと、全て自分が生きてきた中での大切な感情で、解決する方法もなければ一生付き合っていくしかない。みんなそんな闇みたいなものをそれぞれ抱えていると思うんです。それを正直に受け入れて、自分自身も醜い部分や恥ずかしい部分を全て包み隠さず、今自分にできる一番正直で思いがつまった作品になっていると思います。

今後もう二度とこんな本は書きません。辛いししんどいし。でも、そんな渾身の作品になっていると思います。今観てもらう意味がきっとあると思うので、そこは信じてもらえたら嬉しいです。