日野真一郎(LE VELVETS)インタビュー　ミュージカル『ダブル・トラブル』　「生の空間で感じる、応援してくださる方たちのパワーが一番の励み」（後編）

2022.07.28

INTERVIEW

7月28日（木）よりオルタナティブシアターにて、ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022夏 Season A～が上演されます。

本作は、ボブ＆ジムのウォルトン兄弟によって書かれた抱腹絶倒のミュージカルコメディ。作詞家のボビー・マーティンと、作曲家のジミー・マーティンの兄弟２人が、ハリウッドのメジャームービーの曲を書くという大チャンスを掴むが、与えられた時間はたったの数時間、気に入ってもらえなければ即クビ！　恋に仕事に大奮闘！　果たして兄弟の運命はいかに……。

2021年にはダブルチーム編成で、異なる劇場で同じ作品を同時期に上演するという意欲的な挑戦をし、大好評のうちに幕を閉じました。そして、早くもこの夏に、新たなキャストを迎えパワーアップして上演されます。今回も出演者は2名のみ、演奏はピアノだけ。歌って踊って曲を書くボビー＆ジミー兄弟を演じながら、映画会社の社長や秘書・演出家・司会者・スター女優など……次から次へと現れる登場人物、およそ10人もの人物をたった2人で演じます。

2022夏Season Aのメンバーは、ミュージカルからストレートプレイまで数々の舞台に引っ張りだこの浜中文一さん、聴く人を魅了する歌声を活かしミュージカルを中心に活躍する相葉裕樹さん、テノールからハイトーンまで音域を自在に操る日野真一郎(LE VELVETS)さん、さらに横山賀三さんと実力派キャストが揃いました。翻訳・訳詞は今作で第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した高橋亜子さん、演出は、従来の“演劇”の概念を超え新しい挑戦に挑み続けていることから第27回 AMD アワードを受賞し、ミュージカルやストレートプレイ、ライブ演出など、ジャンルレスな活躍をみせるウォーリー木下さんが務めます。

今回THEATER GIRLは、日野真一郎(LE VELVETS)さんにインタビュー。後編では、共演者との取り組みについて、作品の内容にちなんで、この世界に入ってチャンスを掴んだ瞬間について語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

いろんな要素が組み込まれた楽しいミュージカル

――本作では、ピアノ1台で演奏されますが、それについてはどうお感じでしょうか？

もちろん、フルオーケストラでやる舞台もすごく贅沢だと思うんですけど、ピアノ1台ってことは、ピアノの演奏も、もちろんクリアに聞こえるし、僕たちの台詞や歌もクリアに聞こえる訳ですから、また違う意味ですごく贅沢な空間だなと思いますね。

キャスト自身がピアノを弾くシーンもありますし、本当にいろんな要素が組み込まれた楽しいミュージカルになると思います。

――今回、日替わりで浜中文一さん、横山賀三さんとご一緒されますが、それぞれ取り組み方が異なったりする部分はありますか？

Season Aは組み合わせがあります。ジミーとしても、やっぱり相葉くんと僕とでは作り方が違うでしょうし。もちろん毎日同じではないと思うので、それは他のBやCとは違う楽しみというか、相手役のボビーが違うと僕が演じるジミーもまた違うジミーをお見せできるのではと思います。なので、浜中くんの時も、横山くんの時もぜひ観に来ていただけたら嬉しいですね。

――今回ジミー役は相葉裕樹さんも演じられますが、お2人でジミー役についてなにか話し合われたり一緒に取り組まれていることはありますか？

それが、まだ一緒に稽古をしていないんですよね（取材時）。でも同じ役なので、お互いの良いところも、もちろん悪いところも話し合いながら、それぞれの良いところを取って、この作品とジミー役が素晴らしいものになればいいなと思っています。

――本稽古はこれからということなので、皆さん、今は歌やタップの稽古をされている感じなんですね（取材時）。

そうですね、同じ役同士でも、今はシーズンBとCに出る林翔太くんと一緒に稽古をしています。実は(Season Aでダブルキャストの)相葉くんとはまだ一緒にやっていないっていう（笑）。（取材時）

この世界に入れたことが一番のチャンスを掴んだ瞬間

――本作では、マーティン兄弟がハリウッドのメジャームービーの曲を書くという大きなチャンスを掴みますが、日野さんがこの世界に入ってチャンスを掴んだ瞬間はどんなときですか？

今、｢LE VELVETS｣というボーカルグループをやっているのですが、その時のオーディションが、「身長180cm以上で音大卒」というのが条件だったんです。他にも受けている人がたくさんいて、その中で勝ち残ったというのがチャンスを掴んだ瞬間ですね。

それがあって、今グループ活動ができていますし、こうやってソロで舞台にも出演できるチャンスがもらえている。(今、改めて思うと、すごいチャンスだったと思います。ほんとうにありがたいことです)そのチャンスがなければ、別の仕事をやっていたかもしれませんし。。。やっぱりオーディションでエンターテインメントの世界に入れたことが、僕の人生の中で一番のチャンスを掴んだ瞬間ですね。

――今お話にもありましたが、日野さんは｢LE VELVETS｣のメンバーとしても活動されていますが、ソロでミュージカルに出演される時と、グループ活動をされている時は、何か心情や取り組み方に違いはあったりしますか？

みんなに甘えているとかではなく、やっぱりLE VELVETSに戻ると心強いです。自分が持っていない部分、たとえば歌だったら僕が得意ではないところをみんながカバーしてくれるんです。ありきたりかもしれませんが、辛いことは4分の１になり、楽しいことは４倍以上になったり(笑)

でも、こういったソロでの舞台は、得意不得意なんて言ってられない。日野真一郎＝(イコール)LE VELVETSとして見られているので、グループで活動している時よりも一層責任を負わないといけないと思っています。グループのときは甘えているという訳じゃないですよ(笑) ソロでの活動はやっぱり不得意なところも全部自分でやりきらないといけないし、自分の力だけで表現しなくてはいけない訳ですから。自分の努力次第という部分も大きいので、自分が試されているという感じがして、すごくプレッシャーがありますね。

でも、大きなプレッシャーがある分、達成した時の喜びというか、経験値はグループの時よりもすごくあるかもしれないです。その経験をグループに持ち帰り、グループとしてもさらに大きく広がるイメージがあるので、両方の活動が大切だなと思っています。

応援してくださる方たちの生のパワーが一番励みになる

――今はグループ活動とソロ活動の両方がバランスよくできているんですね。普段、日野さんがミュージカルに出られていて、喜びを感じる瞬間はどんなときでしょうか？

演じている間は、お客様のことはあまり意識しないようにしているのですが、カーテンコールでお客様から拍手や声援をいただいた時は「このために自分は頑張ってきたんだな」と思いますね。こういったコロナ禍の状況になって、無観客や配信の舞台をやったこともあるんですけど、やっぱり生の空間で感じる、応援してくださる方たちのパワーというか、エネルギーを感じた時が僕にとって一番励みになりますし、達成感も得られます。

――やっぱり、お客様の前で演じている瞬間が一番嬉しさを感じられるんですね。

そうはもう！今回のコメディや他の舞台やコンサートもそうなんですが、やっぱりお客様の反応があってその空間で作られるものだと思うんですよね。正直反応があるとさらにこっちもノッてきますし。この状況なので、あまり大きな声では言えないんですが、本当に面白かったら大声で笑ってほしいですし、コメディだからこそ、お客様と一緒に作ることで作品が出来上がると思うんです。なので、今回も観客の皆様と一緒に作っていけたらいいなと思います。

――では、最後に作品を楽しみにされている方に向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

ストーリーなど何も予習せずに、ただ劇場に来ていただければと思います。いろんな役が出てきて、様々な音楽があって、さらにタップダンスもあるので、本当に心から楽しんでいただけるような作品になっていると思います。劇場を出た後、楽しかったと言ってもらえるような作品にしたいと思いますので、ぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。