日野真一郎(LE VELVETS)インタビュー　ミュージカル『ダブル・トラブル』　「生の空間で感じる、応援してくださる方たちのパワーが一番の励み」（前編）

2022.07.27

INTERVIEW

7月28日（木）よりオルタナティブシアターにて、ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022夏 Season A～が上演されます。

本作は、ボブ＆ジムのウォルトン兄弟によって書かれた抱腹絶倒のミュージカルコメディ。作詞家のボビー・マーティンと、作曲家のジミー・マーティンの兄弟２人が、ハリウッドのメジャームービーの曲を書くという大チャンスを掴むが、与えられた時間はたったの数時間、気に入ってもらえなければ即クビ！　恋に仕事に大奮闘！　果たして兄弟の運命はいかに……。

2021年にはダブルチーム編成で、異なる劇場で同じ作品を同時期に上演するという意欲的な挑戦をし、大好評のうちに幕を閉じました。そして、早くもこの夏に、新たなキャストを迎えパワーアップして上演されます。今回も出演者は2名のみ、演奏はピアノだけ。歌って踊って曲を書くボビー＆ジミー兄弟を演じながら、映画会社の社長や秘書・演出家・司会者・スター女優など……次から次へと現れる登場人物、およそ10人もの人物をたった2人で演じます。

2022夏Season Aのメンバーは、ミュージカルからストレートプレイまで数々の舞台に引っ張りだこの浜中文一さん、聴く人を魅了する歌声を活かしミュージカルを中心に活躍する相葉裕樹さん、テノールからハイトーンまで音域を自在に操る日野真一郎(LE VELVETS)さん、さらに横山賀三さんと実力派キャストが揃いました。翻訳・訳詞は今作で第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞した高橋亜子さん、演出は、従来の“演劇”の概念を超え新しい挑戦に挑み続けていることから第27回 AMD アワードを受賞し、ミュージカルやストレートプレイ、ライブ演出など、ジャンルレスな活躍をみせるウォーリー木下さんが務めます。

今回THEATER GIRLは、日野真一郎(LE VELVETS)さんにインタビュー。前編では、お2人でおよそ10役を演じることについて、稽古での印象深い出来事やエピソードをうかがいました。

インタビュー後編はこちら

“新しい日野真一郎”を見ていただけるのでは

――今回、ミュージカル『ダブル・トラブル』～2022夏 Season A～への出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか？

実は初演を観て「ぜひやりたい」とずっと言っていた作品だったんです。今回お声掛けいただけてすごく嬉しかったのと同時に、観ているだけでも大変そうだと感じたので「これを自分は演じきれるのか……」という葛藤もありました。ですが、お話をいただけたことはすごく嬉しかったですね。

今まで自分でも知らなかった自分を発見できると思いますし、 “新しい日野真一郎”を見ていただけるのではと思うので、オファーをいただいたときはプレッシャーを感じたと同時にすごくワクワクしたことを覚えています。

何事もなかったかのように次の役に切り替えたい

――今回は、兄のジミー役をはじめ、およそ10人もの役をたった2人で演じられますが、改めて、10役ほどをお2人で演じるということについてはどうお感じですか？

この作品では、いろんな役が本当に数秒単位で変わっていくんです。もちろん早替えも大変だと思いますが、それと同時にそれぞれの役で、声色などいろんなところを切り替えていかないといけないですね。

何事もなかったかのように次の役を演じる。そこは自分の中でパッと切り替えられるようにしたいです。

――特に印象深いものや大変そうだと感じる役柄はありますか？

今までにやったことのないキャラクターなので、レベッカはどうなるんだろうと思っています（笑）。でも、自分が持っていないものを演じるというのは、難しくもありますが、とても刺激的です。自分と全く違う性格だったり、性別だったりを演じるのはすごく楽しいですし、自分自身がまだ気づいていない引き出しを引き出してもらえそうで、今からすごくワクワクしています。

――本作では、ご自身と近い年齢から年上、さらに性別を超えた役まであるので演じがいがありそうですね。

そうですね。自分に持っていないものを演じるので、街中で歩いていても、「あのおじいさんの歩き方、真似してみようかな」と、この作品への参加が決まってから、いろいろと人間観察をするようになりました。

素晴らしい演出家の方と一緒にやれることが本当に嬉しい

――今回は、ウォーリー木下さんが演出を務められますが、ウォーリーさんの演出に期待されていることや楽しみなことはありますか？

ウォーリーさんの演出を受けるのは今回初めてなのですが、以前ウォーリーさんが演出されていた「MANGA Performance W3」という手塚治虫さんの生誕90周年記念の作品を観劇しました。ものすごく面白かったんです。ウォーリー木下さんという素晴らしい演出家の先生と一緒にやれることが本当に嬉しいです。やっぱり演出家さんそれぞれの特色があって、それぞれの方から毎回発見やいろんな刺激をいただけるので、今回はどんな新しい“自分”を見つけられるか楽しみです。自分の不安や役に対して納得いかないこと、整理できていないことをいっぱいぶつけて紐解いていただけたらと思います。

――稽古で特に印象深い出来事やエピソードがあれば聞かせていただけますか。

今回、タップダンスもあるのですが、初めて挑戦するのですごく大変です（苦笑）。プルバックという技は、後ろに下がりながら脚を「バン」と鳴らすんですけど、それがなかなかできなくて。翌日立てないぐらい、ふくらはぎが筋肉痛になりました（笑）。

普段使っていないタップの筋肉なので、やっていくうちに慣れてくるんだろうなと思いながらやっていて、今はだいぶマシになりました……（笑）。今回は、歌もジャジーなコードがすごく多いんです。普通だったらこの音に落ち着くのに、そこにいかないみたいな。ここの音に行ったら気持ちいいのに、そうではないところを経て気持ちいい音にいくという感じの曲調が多いので、そこはとても難しいです。半音階だったり、全音階で動いたり……。そこがお洒落なんですけど、すごく難しいなと思いながら歌っています。