小日向星一インタビュー『お月さまへようこそ』「演じ分ける楽しみを感じながら演じられたら」（前編）

2022.07.21

INTERVIEW

7月28日（木）から東京都多摩市の複合文化施設「パルテノン多摩」のリニューアルオープン企画として『お月さまへようこそ』が、上演されます。

本作は、6名の俳優が「赤いコート」「どん底」「星降る夜に出かけよう」「西部劇」「喜びの孤独な衝動」「お月さまへようこそ」の6篇の短篇の各役を複数演じる、詩情に満ちた心に響く作品です。出演者は、白井晃氏演出『マーキュリー・ファー Mercury Fur』での鮮烈な演技も注目された小日向星一さん、舞台・映像作品共に清新で繊細な表現力に定評がある南沢奈央さん、ミュージカル『ヴェラキッカ』、ミュージカル『ネクスト・トゥ・ノーマル』など話題作への出演が続き、劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」団員でもある大久保祥太郎さん、近作「毒薬と老嬢」で軽快な関西弁と演技が注目された納谷健さん、ミュージカル「テニスの王子様」で注目され、石丸さち子氏演出作はミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』への出演がある久保田秀敏さん、元宝塚歌劇団トップスターで実力派舞台女優として進境著しい大空ゆうひさんと表現力豊かなキャストが集結しました。

演出は、「キオスク」、ミュージカル「マタ・ハリ」、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター～北斗の拳～』など数々の注目作の演出を手掛ける石丸さち子さんです。

今回THEATER GIRLは、小日向星一さんにインタビュー。前編では、本作への役作りや稽古と本番初日の気持ちの違いなどについて語っていただきました。

インタビュー後編はこちら

一つの作品で複数の役を演じられるのはお得感もある

――まずは、本作への出演が決まった時のお気持ちを聞かせていただけますでしょうか。

お話をいただいたのは、今年の2月にやっていた舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』という作品の本番中に、その舞台を観てくださったプロデューサーさんから声をかけていただきました。自分が出演した舞台が次の舞台に繋がったということを実感できて、すごく嬉しかったです。

ジョン・パトリック・シャンリィの作品は、去年シアター風姿花伝でやっていた『ダウト～疑いについての寓話』が衝撃的で面白かったのを覚えていたので、その『ダウト』の作者の戯曲ができるんだという喜びがありました。

――今回はジョン・パトリック・シャンリィの短篇6つからなる作品ですが、短篇の作品を演じられるにあたって、普段と取り組み方が異なる点はありますか？

いろんな役をやるにあたって、一人一人の人生を考えるという部分はいつもと違うと思います。複数の役を演じるのは大学を卒業してから初めてなので、すごく楽しみです。でも、改めて考えてみると、何が違うんだろう……。登場人物一人一人の生き方や考え方をしっかり考えて、演じ分ける楽しみを感じながら演じられたらいいなと思っています。

――演じ分けるという点では、通常よりも役作りに時間がかかったり、気持ちの面でも違ったりする点もあるのでしょうか。

ありますね。でも短篇6つで1作品とは言え、一つの話はそんなに長くはないので、ものすごく大変とはならないかなと。大変というよりは、いろんな役を演じられる楽しさがあると思っています。一つの役をずっとやるのも楽しいですが、一つの作品でいろんな役を演じられるのは、ちょっとお得な感じもあるので楽しみです（笑）。

――稽古はこれからとのことですが（取材時）、共演者の方々の印象はいかがでしょうか。

大空ゆうひさんは、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』でご一緒しました。あと、僕が出演した『イーハトーボの劇列車』という作品で僕が演じていた役を、何年か前に大久保祥太郎さんが演じていらっしゃって、観に来てくださった時に少しお話しさせていただきました。その他の方は、初めましてなのでこれから仲良くさせていただけたらなと思っています。

演出される覚悟で頑張る

――今回演出を務めるのは石丸さち子さんですが、石丸さんの演出への期待や印象などはありますか。

今回石丸さんの演出を受けるのは初めてなのですが、僕の周りには石丸さんとご一緒した方々がたくさんいらっしゃって。その人たちから「本当に演劇が大好きで、演劇に熱くて、信頼できる方だ」とお聞きしているので、すごく楽しみです。たくさんご指導ご鞭撻のほどをお願いしたいなと。ビシバシ指導される覚悟で、気を引き締めて頑張ろうと思っています。

――今回は少人数でのお芝居になるので、石丸さんともよりじっくりと取り組みができそうですね。

そうですね、すごく楽しみなんですが、逆に少し緊張感もあります（笑）。

――本作はパルテノン多摩のリニューアルオープン企画の一つとして上演されますが、リニューアル後の劇場でやるということについては、どうお感じでしょうか。

リニューアルした劇場のオープン企画として立たせていただけるというのは光栄ですし、シンプルにピッカピカな劇場でお芝居ができるんだっていう楽しみがすごくありますね。

――リニューアルして間もない劇場に立つ機会もなかなかないですよね。

そうですよね、本当に嬉しいです。1,000人以上入るような大きな劇場ですし、老若男女どんな人でも楽しめるような作品だと思うので、地元の方で「ちょっと足を運んでみようかな」という方にも、ぜひ観に来ていただきたいですね。

稽古の時間が好きで初日からワクワクしている

――小日向さんは、映画やドラマなどの映像作品にもいろいろと出演されていますが、舞台と映像作品とでは、また違った気持ちで挑まれていらっしゃるのでしょうか。

僕は舞台へ出演することが多いので、映像作品の方が普段と違う新鮮な気持ちになります。舞台は、稽古をする時間がすごく好きなんです。本番ももちろん好きなんですけど、みんなで稽古場に集まって、演出家の方と一緒に「ああでもない、こうでもない」と言いながら作り上げていく時間がすごく好きで、毎回フレッシュさとワクワクな気持ちで稽古初日に臨んでいる気がします。

――緊張するという方も多いと思いますが、小日向さんは初日がお好きなんですね。

そうですね。僕は初めての本読みとかもすごく好きです。初めて皆さんのお芝居を見られるし、自分もそこに参加できるというのが嬉しいので、初日からすごくワクワクしながら向かいます。