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大和田美帆インタビュー『日本一 わきまえない女優 「スマコ」 ~それでも彼女は舞台に立つ~』「これをやってのけた時に「大きな転機でした」と言えるぐらいのプロジェクトになる」

INTERVIEW

4月27日(火)より、YouTubeにて日本一わきまえない女優『スマコ』~それでも彼女は舞台に立つ~ が無料公開されます。

本プロジェクトの中心となるのは世界的演出家・宮本亞門さん、そして主演は舞台やドラマをはじめ、活動の幅をさらに広げる実力派女優・大和田美帆さんが務めます。

THEATER GIRL編集部は、大和田さんにインタビューを敢行。宮本亞門さんとのプロジェクト立ち上げ時のエピソードや松井須磨子を演じるにあたっての想い、有志で集まったというカンパニーの雰囲気まで、たっぷりと語っていただきました。

まさかプロジェクトを一緒にやるとは思っていなかった

――宮本亞門さんと一緒に、今回のプロジェクトについての中心を担っていますが改めて宮本亞門さんとのプロジェクトの立ち上げについてお話を聞かせていただけますか。

亞門さんとは、2005年にお仕事させていただいてからのお付き合いなんですが。今年の1月に本当に久しぶりにお会いした時に、「松井須磨子についてやりたいと思うんだけどどうかな?」というお話を直接いただいて。「ぜひ、やらせてください」とすぐにお返事させていただきました。でも、まさかプロジェクトを私も一緒になってやるとは最初は思っていなくて。 

もう出来あがっているものかと思ったら、亞門さんが0から立ち上げているということで、脚本を池谷(雅夫)さんに頼んでるとうかがって。電話で何度か打ち合わせをしたのですが、最初はリーディングではなくて、演劇でどうにか出来ないか? というお話も出ていて。有料というお話もあったのですが、いろんな事があってダメかもしれないとなって、亞門さんに「やっぱり難しいんじゃないですか?」とお伝えしたら、「リーディングならどうか?」というお話をいただいて。

「それなら行ける!」って私も強く思って。リーディングなら、松井須磨子の世界観をお伝え出来るんじゃないかということで始まったのが、3月頃のことでした。なので、プロジェクトの中心にいる気はしていなかったし、今言われて、ちょっとドキッとしています(笑) 。「あぁそっか、やっぱ中心か」と。

二人で取材を受けさせてもらったり、まさに今クラウドファンディングなども含めて、スタッフ、キャスト全員が一緒に創っている。なかなかこういうお芝居の仕事をしていると、経験出来ないような、皆で固めていっている作業がすごく楽しいです。地に足がついてる感じがしますね。

――最初はまさか自分が中心になるとは思っていなかったんですね。

最初は普通に、オファーだと思っていて(笑)。もしもこれがコロナ禍の前だったら、こういうお話も危うくて、ちょっと疑っていたかもしれないんですけど、このコロナ禍を経て、「何事も挑戦しよう」となっていたので、「命さえあれば、もうどんな事も怖くない」じゃないですけど、失敗を全く恐れていない自分に変化していたので、タイミングが本当に良かったと思います。

「コロナとスペイン風邪が重なる様な話なので、美帆ちゃんの気持ちもたぶん辛いと思うから、一回持って帰って考えてもらっていいから」と亞門さんは、おっしゃってくださったんですけど。もうその場で、「絶対にやらせてください! 私以外に誰がやるんですか!」と言いました。それくらいの気持ちで、どうしてもやりたかったので。

スタッフとキャストが一つになっている感覚は「学生演劇のよう」

――この一年紆余曲折があって、率直に今をこうやって迎えられている状況をどの様に感じてらっしゃいますか?

今やっているこの稽古も、自分たちで考えて行動しているという実感があって、それも生きてるって事に繋がっているなと。役者はよく“待つ仕事”だって言われますけど、私もデビューしてから、これまで待ち続けたこともあるし、コロナ渦では本当にずっと待っていましたよね。一年経ってしまいましたけど、この一年の中で亞門さんが思い描いたことや、私自身やってみたいと思っていた事を、一歩踏み出した事によって、自分たちで行動しているということは、何にも縛られていないと感じています。

須磨子のセリフに、「誰の指図も受けない」って言うものがあるんですけど。自分たちで行動しているということに、凄く自信がつきそうな予感がしています。まだ、自信は無いんですけど(笑)。これをやってのけた時には、「大きな転機でした」って言えるぐらいの、10年後20年後に大きなプロジェクトになるのではという予感がしています。

――今回クラウドファンディングを実施されていますが、通常のお芝居、演劇よりも、さらにお芝居を幅広いお客様にお届けしたいという使命感は強いと思うのですが、大和田さん自身が伝えたい想いはありますか?

私も観客として大ファンだからこそ思うのは、演劇ってやっぱりハードルが高いと思われる理由に、観る時間を空けないといけないというのと、チケット代が高いというのは自分も感じていたので。そういう意味でも、今回は、若い人やより多くの方に、こういう方法もあるんだよっていう一つの提示が出来るんじゃないかなとも思っています。

演劇というものを、エンターテインメントと括っても良いと思うのですが、演劇に限らず、誰かが観てくれて、面白いと思っていただくという関係性が私達の仕事だとするならば、それは生に越したことは無いけれど、この時代に一番のベストな方法を私達は選べている気がして。チケット代をいただいて配信っていうのもなにか違うと思いましたし。

演劇から去ってしまった人や演劇を諦めてしまった人、あとは、若い学生の方や演劇に関心がない人も含めて、まずYouTubeというみんなが知っている身近な媒体で観ていただいて、面白いと思ってもらう責任がこちらにもあると思っています。それは、普段の演劇にもあるのですが、演劇ってやっぱり観たい人がわざわざ観に来てくださる感じなんですけど、今回は、本当に興味の無い方にも観ていただける可能性もあるので。それなら、引き込みたいっていう想いもありますし、良いものを創らなきゃっていう責任感もあります。

ただ、同時に「私達こういう事やってます」というただのお披露目というよりは、「こういうやり方もあるよ」って。「私達にはこういう使命がある」って意気込んでいる訳ではなくて、何なら、逆で「こんな宮本亞門さん観たことない!」っ思っていただきたいですし。それでいいと思うんですよね。多くの方に観ていただきたいし、そこで皆さんに判断していただければいいことなので、みんなに好かれる何かを創りたいというよりは、「私達はこういうのをやってみたいと思います」っていうので、いいのではと思っています。

それでダメなら「すみません」って。ダメならダメ、それが人生じゃないですか。みんなに好かれようとしてダメになる様なこともありますし。まず私達がすごく結託しているし、こんなにスタッフとキャストがギュッとなることってなかなか普通の舞台ではなくて。それぞれに役割があるけれど、みんなで一つのものを創りたいっていう、いわゆる学生演劇に似ているのかもしれないですね。

初心にかえって、皆が本当に大切なものって何だろうって思うきっかけに私はなっているので、観てくださった方がどう思うかはその方次第になりますが、宮本亞門さんという、ずっと演劇を続けてきた方と、私のような演劇が好きで続けてきた人間が、一緒に学生のように初心にかえってやっているという感覚があります。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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