佐久間由衣インタビュー『ヴェニスの商人』「もう一度舞台に飛び込んでみようと前向きな気持ちになれた」（前編）

2024.11.27

INTERVIEW

2024年12月6日、日本青年館ホールにて舞台『ヴェニスの商人』が開幕します。

時代を超えて愛され続ける数々の名作を残した、演劇史の巨人、ウィリアム・シェイクスピア。なかでも『ヴェニスの商人』は、深い人物描写と痛快な展開で圧倒的な人気を誇る最高傑作の一つです。現代演劇界で最も実力のある演出家の一人・森新太郎さんが、古典の常識を覆す新しいアプローチによって、歴史ある名作をどのように現代のエンターテインメントに生まれ変わらせるのか、期待が高まります。

主演を務めるのは、シェイクスピア作品初挑戦となる草彅剛さん。稀代の悪役・シャイロックをどのように演じるのか、注目を集めています。バサーニオ役に野村周平さん、ポーシャ役に佐久間由衣さん。グラシアーノ役に大鶴佐助さん、ネリッサ役に長井短さん、ジェシカ役に華優希さん、ロレンゾー役に小澤竜心さん、アントーニオ役に忍成修吾さんと、豪華な顔ぶれが揃いました。

THEATER GIRLでは、佐久間由衣さんにインタビュー。前編では、本作への出演が決まったときの気持ちや、初舞台を踏まえての舞台への思いなどをお聞きしました。

舞台をやらせていただく機会をまたいただけるとは思っていなかった

――本作に出演が決まったときの気持ちを教えてください。

まさか、舞台をやらせていただく機会をまたいただけるとは思っていなかったので、最初はすごく葛藤がありました。でも、演出の森（新太郎）さんとお会いして、シェイクスピア作品に対する考え方などをお聞きしたときに、もう一度舞台に飛び込んでみようかなと前向きな気持ちになれたので、出演を決意しました。

――具体的には、森さんとどんなお話をされたのでしょうか。

私は『てにあまる』という作品で初舞台を踏んだのですが、公演を終えたときに、舞台に呼んでいただけることはもうないかなと思っていたので。今回、なぜお話をいただけたのかということと。なぜポーシャという役でオファーをいただけたのかをお聞きしました。

――また舞台に呼ばれることはないかもしれないと思ったのは、なぜですか？

自信をしっかりなくしたというか。稽古を通して、“そもそも、私が自信だと思っていたものって何だったんだろう？”みたいなことと向き合わざるを得ない時間がいっぱいあったんです。もちろんお芝居についての気づきはありましたし、自分にとって大事な時間だったとは思うのですが、手応えを感じることができないまま千穐楽を迎えてしまって。また舞台をやるというのは難しいかもしれないなと思っていたんです。でも、森さんが「（佐久間が）必死に食らいついている姿がすごく印象的だった」と言ってくださったので、すべてをオープンにして飛び込んでみようと思いました。

――脚本を読んでの感想を教えてください。

とてもおもしろいなと思いました。脚本をいただく前に、映画版の『ヴェニスの商人』をお勧めしてもらって観たのですが、それがすごくおもしろくて！　いざ台本をいただいて読んだときも、起承転結がしっかりあるし。山場である裁判のシーンなども、見ていて楽しめる作品だなと思いました。

――佐久間さん演じるポーシャは、物語が進むうえでキーパーソンになる役だと思いますが、どんなキャラクターだととらえていますか？

まだ稽古が始まっていないので分からない部分が多いですが、なかなかエネルギッシュな女性という印象ですね。慈悲深くて、自分が正しいと思うことは正しいと信じ抜く力があって。父親の遺言に縛られてはいるけど、自分の意志をちゃんと持っている女性だなと思います。

――劇中では男装のシーンもありますよね。

そうですね。今から、ちょっとそわそわしています（笑）。

――きっと、ステキな男装姿を拝見できるのではないかと。

いや～、がんばります！

――草彅剛さんとの共演で、楽しみにしていることは？

今は、まだ緊張しかないんですけど……。本当に素晴らしいお芝居をされる方なので、ご一緒させていただけるのがすごく楽しみです。今回、シャイロックとして人間の黒い部分をどう表現されるのかも楽しみですし。ポーシャとは言葉で戦うシーンがあるので、足を引っ張らないように、コミュニケーションをとらせていただけたら嬉しいです。

――今回の舞台出演において、ご自身のなかでの課題はありますか？

舞台というのは映像とはまた違い、何日も公演が続くので、同じセリフを何度も言うことになるので、それを毎回毎回、違う回路で届けることができたらいいなと思っています。課題としては、ある程度、役を固めていきつつも固めすぎずに、その瞬間瞬間を、ちゃんと心を動かして演じることですね。