梅津瑞樹インタビュー『漆黒天 –始の語りｰ』「世界観がより拡張されて、長く味わえるシリーズになっている」（後編）

2022.08.06

INTERVIEW

2022年8月5日（金）より東京・サンシャイン劇場を皮切りに、舞台『漆黒天 –始の語りｰ』が上演されます。

本作は、映画と舞台を完全連動させるプロジェクト【ムビ×ステ】の第三弾。映画『漆黒天 −終の語り−』で描かれた主人公“名無し”の前日譚となっています。

作・演出は、映画版でも脚本を務めた末満健一さんが担当。荒木宏文さんが主演を務め、共演に、松田凌さん、長妻怜央（7ORDER）さん、梅津瑞樹さん、小島藤子さん、橋本祥平さんなど、映画版にも出演した多くのキャストが舞台版にも出演します。

THEATER GIRLは、嘉田蔵近役の梅津瑞樹さんにインタビュー。後編では、末満健一さんの演出の印象、作品にちなみ梅津さんの学生時代の思い出深いエピソードもうかがっているのでお楽しみに。

インタビュー前編はこちら

末満さんは「提案しがいのある方」

――映画版では脚本、舞台版で作・演出を務める末満健一さんとは、以前から舞台『刀剣乱舞』などでご一緒されていますが、改めて本作で演出を受けられた印象はいかがでしょうか？

今回は、脚本と原案も末満さんが担当されていて、舞台『刀剣乱舞』はやっぱり原案があって、キャラクターも実際にゲームにいるキャラクターっていうのがあるんですけど、今回は末満さんのオリジナル作品ということもあって、末満さん自身もよりのびのびとされていている感じがします。

舞台『刀剣乱舞』と今回の舞台『漆黒天始の語り』でご一緒して、キャラクターを動かすことってものすごく難しいことなんだなと感じました。末満さんの楽しそうな姿を見ていると僕らも楽しくなりますし、すごくハッピーな気持ちになりますね。

――末満さん自身も楽しんで演出されているんですね。

はい、だからどんどんいろんなことをやってみようと。サジェストしていくというか、いろいろと提案してみようという気にさせてくれる方ですね。ダメだったらダメで「それはなしやろ」みたいな話になるだけなので（笑）。どの演出家の方もそうですが、末満さんは特に提案しがいのある方だなと思います。

学生時代の日の当たるエピソードとは……？

――作品にちなんだ質問もさせていただきたいのですが、舞台版は、映画『漆黒天 -終の語り-』の前日譚とのことですが、梅津さんの学生時代の思い出深いエピソードを聞かせていただけますか。

恥の多い人生を送ってきたので（笑）。でも、今回の作品に絡めて言うと、僕は確実に「日陰党」の一員になっていただろうなと思います。別に1人で生きてきたとかそういう訳ではないですけど、心は日陰党だよって（笑）。

全然関係ない話をするんですけど（笑）、小学生の時に好きだった子がいて、それくらいの年代って好きな子に対して「別に好きじゃないよ」って感じに振る舞うじゃないですか。通学路を一緒に帰っていて、その子の家の前でモジモジと30分くらい話していたんですけど、僕が住んでた地域って17時くらいに鐘が鳴るんです。

そのときに「好きな子は誰なの？」って話を延々としていたんですけど、「この鐘の音が鳴った瞬間に言うから、そしたらダッシュで帰って」と言われたんです。それで、鐘が鳴った瞬間に「梅津だよ」って言われて。もうランドセルをガチャガチャ言わせて走って帰って、曲がり角を曲がって、彼女から見えなくなった瞬間にすっごい「びゃーん」ってジャンプしたのを覚えてます（笑）。

――学生時代の微笑ましい幸せエピソードをありがとうございます。

その幸せどこに行っちゃったんだろうって感じですけど（笑）。日陰のエピソードに関しては、結構いろんなところで語っているので、たまには日の当たるエピソードを話そうかなと。でも、話すエピソードが全部小学校時代なんですよね（苦笑）。

その人のナマが見える瞬間に立ち会えることが役者をする醍醐味

――貴重な日の当たるエピソードをありがとうございます。梅津さんが役者のお仕事をしていて、一番好きなのはどんな瞬間ですか？

その人のナマが見える瞬間ですね。役として生きているとかそういう話ではなく、その人間が見える瞬間っていうのがけっこうあって。違う角度から言うと、本人の役を演じる上でのエゴだったり、僕らが普段実生活で生きていて、普通にコミュニケーションを取っている上であまり見られないものが、意外と舞台上では良しとされる瞬間ってけっこうあるんですよ。良しとされるというか、それがいいと推奨されるような。

それが結果的に芝居として良いものであろうが、悪いものであろうが、そういうナマの部分が見える瞬間っていうのがけっこう楽しくて。こういうものに立ち会うためにやっている節はちょっとありますね。

――そういうナマの部分が垣間見える瞬間が、役者をする醍醐味でもあるんですね。

やっぱりシンプルに大きな声で怒鳴ったり、滝のように思いっきり涙を流したり、汗をかいたり悲しんだり、そういうことって日常で一生に3、4回くらいあればいいかなって感じじゃないですか。情緒がよっぽど不安定でない限りはそうそうないことだし。

そういうものを常日頃から浴びることができるのはすごく面白いんですけど、ちょっと自分の心も馬鹿になりそうです（笑）。人より許容範囲が広げられてしまっているというか、1回バーっと伸ばしたゴムがなかなか元に戻らないような、そういう怖さはあります。

――では、最後に作品を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

末満さんが夜な夜なTwitterのスペースやニコ生で、いろんなことを匂わせているらしいんですけど（笑）。あの人物相関図が一体どうなるのかというところが、やっぱりこの舞台の大醐味かなと思います。映画でちょろっと出てきて死んだような人間が、一体どういう主枠でもって、映画のあの場所に行って散っていったのか、そういう部分が見どころだと思います。豚骨ラーメンのスープのようにアクしかないような人間ばっかり出てくるので、とにかく濃いです（笑）。アクションも盛りだくさんですし、見応えのある作品になっていると思います。