小西遼生インタビュー ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』 「純粋な演劇は想像力を豊かにするもの」
2021年7月22日(木・祝)より東京・めぐろパーシモンホール 大ホールを皮切りに、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が上演されます。
夢と冒険に満ち溢れた、美しい音楽と楽しくもせつないストーリー、そして感動のビッグフライング。世界中で愛され続けているブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が、今年日本公演40周年を迎えます。さらに今回は、新演出で大リニューアルされ、東京公演では生オーケストラの伴奏で届けられます。
今回、お話をうかがったのは、フック船長とダーリング氏を演じる小西遼生さん。出演が決まったときのお気持ちや役作りについて、小西さんが思う『ピーターパン』の物語の魅力まで、たっぷりとお話をうかがいました。
最高峰の作品だと思っていた作品への出演は「素直に嬉しい」
――今回、日本公演40周年を迎えるミュージカル『ピーターパン』ですが、出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
以前、日本版を観たことがあり、作品自体は知っていました。子供も観に来られる舞台に出演することはずっとやりたかったことの一つでもあったので、その最高峰の作品の一つだと思っていた今作への出演が決まったことは素直に嬉しかったです。
――今回は、フック船長を演じられますが、どのようなイメージで役をつくっていきたいと考えていますか?
フック船長は敵役ですが、ある意味ピーターパンと対をなす役柄ですね。ピーターパンがいなければ存在意義はなく、憎しみと同時に、常にその存在を求め続けてる。キャラクターは大人のずる賢さもあれば、間抜けでおっちょこちょいで、誰よりも子供っぽい部分も持っていて、ユーモラスで憎めない役どころです。
この戯曲は、原作者のジェームス・M・バリ氏が、まだ劇場に子供が足を運ぶことが少ない時代につくった、ある種当時の演劇界を変えた作品だと思うんです。ワクワクするような夢の世界を見せると同時に、世の中に存在する子供達の寂しさや残酷性、大人のいやらしさなど、シビアな部分も併せ持つ多面性のある作品だと思います。そういった幅広さを今回の舞台でも出していけたら良いなと思っています。
――演出の森さんが、「大人が楽しめるものでなければ子供も楽しめない」とコメントされていましたが、具体的にはどのような部分を楽しんでもらいたいですか?
純粋に、戯曲が面白いんですよね。森さんはそれをきちんと演劇的につくり込もうとされていますし、今回アナログなつくり方をしているので、もしかしたらそれは作品が創作され、初演された当時の作りに近いものをイメージしてるのかもなと思っています。
純粋にこの作品を面白くしようとすれば、自然と子供はワクワクし、大人も童心に帰ることができる。今の多様性のある世の中で尚、普段感じたことのないような想像の世界に実際に行ける。ネバーランドというはっきりと誰も断定出来ないような世界に本当に没入できるというか。そういうところが本作の面白さの一つなのかなと思います。
――大人になってから本作を観ると、また違った見方ができそうですね。
当時劇場に訪れた上流階級の人々や批評家たちも、思わず笑顔になってしまうような面白さがこの作品にはあると思います。お話の序盤に、ピーターパンと子供たちが初めて空を飛ぶシーンがあるのですが、あれは凄いアイデアだなと思うんですよね。“飛ぶ”ということをすごくシンプルな技巧を使って表現していて、目の前でそれが起きると誰もが思わずハッとしてしまう。空を飛ぶということは子供でも大人でも、やっぱりワクワクしてしまいますよね。