和田琢磨インタビュー 舞台『薔薇王の葬列』「人間の欲深さ・愚かさが描かれる物語に演じがいを感じます」(後編)

2022年6月10日に東京・日本青年館ホールにて幕を開ける舞台『薔薇王の葬列』は、2022年1月から連続2クールでテレビ放送中であり、６月には最終話を迎えるダークファンタジーアニメを原作とした初の舞台化作品。シェイクスピアが描いた、狡猾で残忍なピカレスク、というイメージで知られるリチャード三世を、男女二つの性を持って生まれたことを秘密裏に抱える存在として翻案される本作は、15世紀のイングランド、“白薔薇”ヨーク家と“赤薔薇”ランカスター家が王位継承を巡って争いを繰り返した薔薇戦争を背景に、大胆かつ深奥な解釈とアレンジによって見事な換骨奪胎をほどこし、まったく新しいリチャード三世の物語を生み出しています。リチャードがたどる数奇で残酷な運命を、壮麗で美しくドラマティックな世界観で描き上げ、人気を博している本作は、2013年から「月刊プリンセス」（秋田書店）にて連載され、今年1月に堂々の本編完結を迎えた菅野文による漫画が元となっています。

TVアニメ『薔薇王の葬列』を原作として初の舞台化となる今回、主人公・リチャードをWキャストで演じるのは、女優・モデルとして躍進する若月佑美さんと、韓国で磨き上げたパフォーマンス力で注目を集める新星・有馬爽人さん。

共演にはリチャードの兄弟でヨーク家の長男・エドワード役に君沢ユウキさん、次男・ジョージ役に高本 学さん、リチャードが生まれた頃から仕える世話係のケイツビー役に加藤 将さん、ヨーク公爵リチャードの参謀的存在・ウォリック伯爵役に瀬戸祐介さん、ヘンリーの息子でリチャードに心惹かれるエドワード王太子役に廣野凌大さんという2.5次元舞台を中心に活躍する実力派キャストが名を連ねます。

ほかにもウォリック伯爵の長女・アン役にライブスペクタクル『NARUTO』、舞台『炎炎ノ消防隊』、舞台『テイルズオブザステージ』シリーズなどに出演する星波さん。三兄弟の母でリチャードを“悪魔の子”と忌み嫌うセシリー役に元宝塚歌劇団花組娘役の藤岡沙也香さん。さらにヘンリーの妻でヨーク家との戦いの指揮を執るマーガレット役に田中良子さん、そして三兄弟の父でありリチャードにとっては“闇を照らす光”であるヨーク公爵リチャード役に谷口賢志さんという個性派俳優陣が集結しました。

脚本は、放送中の TV アニメでもシリーズ構成・脚本を担う内田裕基氏。演出は、MANKAI STAGE『A3!』や舞台『機動戦士ガンダム 00』など、原作の魅力を存分に引きだす演出とステージングに定評のある松崎史也氏が手がけます。

今回、THEATER GIRLは羊飼いの青年としてリチャードと出会い心を通わすも、その正体は宿敵ランカスターの王であるヘンリー役を演じる和田琢磨さんにインタビュー。後編では、ヘンリーを演じるうえで大切にしていることや新たに挑戦していること、仕事をしていく中で“葛藤”や“苦悩”を感じることなどについてうかがいました。

インタビュー前編はこちら

ウィリアム・シェイクスピアの作品だと思って臨みたい

――本作でヘンリーを演じるうえで大切にしていること、ここに力を入れて演じたいなと思っていることはありますか？

漫画はウィリアム・シェイクスピアに影響を受けて描いてらっしゃると聞いています。アニメも会話が多くアニメ原作で会話を重ねて物語を作っている舞台は珍しいと思いますし、それだけに役者としての技量を試されている作品になるのかなと感じていますね。2.5次元作品というよりは、ウィリアム・シェイクスピアの作品だと思って臨むのがいいかなと思っています。 どれくらいの台詞の量になるのかまだ分からないのですが、おそらく言葉の掛け合いひとつも、この作品を作るうえでの重要なものになってくると思うので、そこは意識してやっていきたいですね。

演じるうえで大切にしていることは･･････今まで様々な2.5次元作品に出演させていただいて学んだことですが、漫画でいう1コマ1コマの中に描かれていないところを、どう生き、どう立って、どのような表情をするかを突き詰めていくと、自然とキャラクターが成立していくものなのだと思いました。原作はそのキャラクターを演じるヒントがいっぱい詰まった参考書のようなものなので、原作に描かれている部分は忠実にやって、描かれていないところをどういう気持ちで、どういう表情でいるかっていうのを想像していくのが、私たち役者が原作ものをやるコツというか、自分の中で気を付けているところです。これから稽古が始まりますが、他の方の台詞をよく聞いて、何を思い、何に感化されたかという感情の揺れを意識して、丁寧にヘンリーという人物を自分の中に作り上げていきたいです。

――ところで和田さんはシェイクスピアで好きな作品はありますか？

メジャーなところだと、やっぱり『ロミオとジュリエット』ですね。『ロミオとジュリエット』は舞台もミュージカルも映画も観ました。『ハムレット』は全部ちゃんと観たことはないのですが、ミュージカル『テニスの王子様』のオーディション時の特技披露で、何を血迷ったのか藤原竜也さんのハムレット役の長セリフを暗記して披露したという印象深い思い出が･･････。

――おぉ！　それが合格の決め手に？

それは定かではないですけど（苦笑）、特技らしい特技がない自分が「俺はこれだけ演劇が好きだ！」という情熱をアピールしようと思った熱意は伝わったのかなと思います。

――ちなみに『ロミオとジュリエット』だと何役を演じたいですか？

自分はロミオのイメージではないと思うので、ベンヴォーリオとか演じてみたいですね。以前、ミュージカルを観劇した時に友人がベンヴォーリオ役をやっていた影響もあって「ベンヴォーリオいいな」って思いました。

――やはり「役者たるもの、シェイクスピア作品をいつかは･･････」みたいなことは思っていましたか？

そうですね。今回、このような形でシェイクスピア作品に関わるとは思っていなかったのですが、楽しみですね。

次のページ：ヘンリーという役をどう印象付けるかが挑戦