荒木宏文インタビュー朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない』「演出家が形にしたいものを体現するのが、役者というプレーヤーの仕事」(後編)
4 月 20 日(木)より、東京・六本木の俳優座劇場にて、朗読劇『したいとか、したくないとかの話じゃない』が開幕します。足立紳さん原作の家族小説を朗読劇化した本作。映画『万引き家族』、ドラマ『silent』など、数多くの劇場映画、テレビドラマのヒット作の制作を担当してきた、アジアトップクラスのプロダクションAOI Pro.が企画・プロデュースを行い、共同脚本・演出は、劇団宝船主宰で、これまでも多くの AOI Pro.制作ドラマ脚本を手掛けてきた新井友香さんが務めます。
出演者には、篠原涼子さん、山崎樹範さん、荒木宏文さん、佐藤仁美さんの4名が豪華Wキャストとして決定しました。また、朗読劇本編で上映される劇中ドラマでは、早川聖来さん(乃木坂46)とゆうたろうさんが夫婦役で初共演。
浮気相手に捨てられた売れない脚本家の夫・孝志と、その夫に内緒で応募したシナリオコンクールで優秀賞を受賞し、これまでの家事育児だけの生活から外の世界に飛びだそうとしている妻・恭子。そんな妻に不倫相手を失った夫が久しぶりに迫る……。夫婦の「セックスレス」をきっかけに夫婦のあり方、子育てのあり方を問いかけます。
今回THEATER GIRLでは、孝志役を演じる荒木宏文さんにインタビュー。後編では、朗読劇ならではの舞台へのアプローチ方法から、コロナ禍を経て変わった荒木さん自身の価値観などを語っていただきました。
プレーヤーとしてのあり方「演出家が形にしたい表現方法を体現するのが、役者の仕事」
――荒木さんは今まで朗読劇の出演経験が多くありますが、普段の舞台と違う、朗読劇ならではの取り組み方、アプローチ方法はありますか?
僕が大事にしているのは「自分の頭の中で固めすぎないこと」です。それこそ、まさに前編のときにお話ししたように、朗読劇は演出家によって見せ方が違うので、自分が先入観を持って決めてしまうと、演出に対してすれ違いが起きたり、理解しきれなかったりして、セッションしなければいけない割合が増えてしまうんです。
そうではなくて、演出家がどういう作品にしたいのかを汲み取ったうえで、そこへのアプローチをなるべく早く上手に噛み砕いて解釈をして、演出家の狙っている形を体現する。まだ枠組みがはっきりしていないジャンルだからこそ、演出家が望む形をきちんと再現できるように取り組みたいです。それができるように、本番までの間、自分に落とし込む作業が重要になってくるのかな、と。
個人的には、台本を読みながら舞台に立つのが自分の得意分野ではないので、結局台詞を覚えるまで読み込まないといけないのが、難しい部分ですかね(笑)?
――なるほど。朗読劇は、特に演出家さんに寄り添っていく姿勢が大事なんですね。
はい、そうでないと逆にもったいない気がします。僕自身は、役者はプレーヤーであって、クリエイターではないと考えていて。役者の仕事は、クリエイトする側である演出家の意図を汲み取って、そのフィールド上で自由に動くことではないかなと。
演出家が形にしたい表現を、役者として体現したい。その思いが、僕の基盤になっている部分だと思います。
コロナ禍はプレーヤーとしての「役者の価値を創造するのが難しかった」
――「役者はプレーヤーである」という信念が、荒木さんの俳優としてのテーマでもありそうですね。ここからは、作品にちなんだお話を聞かせてください。本作はまさに2020年のコロナ禍が舞台となっていますが、荒木さんがコロナ禍を経て変わった価値観、考え方はありますか?
コロナ禍を経てより知ることができたのは、YouTuberなどのインフルエンサーのすごさですかね? 緊急事態宣言になったとき、僕は舞台をメインに活動していたので、あらゆる仕事にストップがかかりました。
公演が自粛期間に入ったことで、普段から応援してくれている方、舞台を楽しみにしてくれている方に、どういうものだったらお届けできるのか、すごく考えたんですよ。でも、あらゆるエンタメが止まっていた中で、YouTubeやInstagramなどのSNSでの無料配信サービスは動いていて。スタッフを集めることですら難しかった状況で、応援してくれている人たちに何かを届けることに関しては、SNSの需要がとてもありましたよね。
コロナ禍をきっかけに、YouTubeチャンネルを持った芸能人もたくさんいたと思いますが、特にアーティストの方はCDを作るのではなく音楽配信をすることによって、楽しみにしている人たちを飽きさせない工夫をされていたと思います。そういう発信方法を学ぶ機会になった一方で、自分自身が役者であることによって、クリエイターではない役者の価値を創造するのが難しかったな、と。
もちろん、クリエイトするという意味では、事務所や制作会社に「こういうの、どうですか?」と企画を投げたり、物を作ったりすることにも取り組んでいましたが、プロデューサーとして企画を作る、プレーヤーとして自分が表に出る、さらにそれをクリエイターとして編集する……と、全てをやっているYouTuberの方々のすごさをより実感しました。コロナ禍でいろんなものを見たからこそ、改めてそのすごさを尊敬できましたね。自分との差別化が図れたことも、大きな財産だったと思います。
年齢で制限をかけるより、求められたことができる自分をキープしたい
――荒木さんは今年6月に40歳を迎えられますよね。一つの節目でもあると思いますが、今後、挑戦してみたいことはありますか?
お仕事に関していえば、今までの出演作品に触れてくださった方からオファーをいただく機会が今後もあると思うので、大きな変化は正直ないと思うんです。僕の場合、自分の年齢が40歳だからといって、世間一般で想像する40歳の人間像に見合った容姿なのかというと、そこまで簡単には変化できないのかなと思っていて。だから、年相応の役はこれからもあまりもらえないのかな……?と。 見た目で変化するのは、まだこの先の気がしますね。
ただ、役ではなく、自分自身の年齢を見られて「40代だから無理させづらいよね」と思われてしまう可能性はあるので、呼んでいただけるジャンルは限られてくるのかな、と。だから引き続き、無理をすべきなのかもしれませんね(笑)。個人的には、年齢に甘えないほうが、役者にとっては良いことだと捉えているんです。
「もう40歳だからこれはやらない」とか、「もう大人だからこういうことはしたくない」とか、年齢で制限をかけるよりは、それができる自分をキープしていたい。そのためには、身体作りも怠らないことが重要ですよね。そういう意味では、これからもいろんなことに抗っていきたいなと思っています(笑)。
取材・文:矢内あや
Photo:梁瀬玉実
ヘアメイク:浅山ジャスミン莉奈(TUNE)、中間愛梨(TUNE)、眞舘楓
公演概要
朗読劇 「したいとか、したくないとかの話じゃない」
4月20日(木) 〜 4月23日(日)
<会場>
俳優座劇場
<上演日時/出演キャスト>
4月20日(木) 19時公演 篠原涼子×荒木宏文
4月21日(金) 19時公演 篠原涼子×荒木宏文
4月22日(土) 15時公演 佐藤仁美×山崎樹範
4月22日(土) 19時公演 佐藤仁美×山崎樹範
4月23日(日) 15時公演 篠原涼子×山崎樹範
<劇中ドラマ出演キャスト>
早川聖来(乃木坂46)・ゆうたろう
<チケット・プレイガイド詳細>
チケット料金:8,500円(全席指定・税込)
※未就学児のご入場はお断りいたします。
[一般発売]
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