演出家・西田大輔インタビュー 舞台『憂国のモリアーティ』case 2 「物語の中にあるスピード感、新たなスケール感を楽しんでいただけたら」
2021年7月23日より、新国立劇場 中劇場にて「舞台『憂国のモリアーティ』case 2」が上演されます。
漫画原作「憂国のモリアーティ」を舞台化した本シリーズは、第1弾が昨年2020年1月に上演され、大盛況のうちに幕を閉じました。今作は満を持しての第2弾。時代背景やモリアーティ3兄弟の絆を描いた前回公演に対して、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティとシャーロック・ホームズとの関係性を丁寧に紡ぎ出します。
前作と同じく、脚本・演出を務めるのは「西田大輔(にしだ・だいすけ)」さんです。改めて作品の魅力や舞台演出へのこだわり、佳境を迎えた稽古場の雰囲気、今作に対する思いなど、じっくり語っていただきました。
ウィリアムとシャーロックのコントラストが美しい
――そもそもシャーロック・ホームズがお好きで、劇団の公演でも扱ったことがあるそうですね。改めて、「憂国のモリアーティ」という作品の魅力について伺えますか。
もともと好きだったこともあって、舞台化する前から原作の漫画を読んでいたんです。その頃からモリアーティを題材にしたっていう着眼点がとても面白いなと感じていました。
舞台化するにあたって、改めてそこにしびれましたね。結果的には、闇に向かって物語は突き進んでいく。ただ、それははるか先の光あふれる時代のために、闇として姿を消そうとする男、もしくは兄弟なんです。そのはかなさと、シャーロック・ホームズに光を当てるっていう着眼点が非常に美しい。それがこの作品の持っている最大の魅力だと思います。
――今作の台本を拝見しましたが、ウィリアムのダークヒーロー感がすごく格好いいですね。
そこが魅力的であると同時に、コナン・ドイル原作の気難しいシャーロック・ホームズをああいう砕けたキャラクターとして切り取るっていう“陽”の部分での面白さもこの作品にはあるんじゃないかなと思ってます。コントラストがあるからこそ、どちらも映えるというような世界ですよね。
自然と周りがついていく荒牧、成長し続けている北村
――座長を務める荒牧慶彦さんの印象はいかがですか ?
すごく彼は冷静に物事を見ているというか。ちょっと役と通じるところがあるんですけど、必ず全体を見ているし、その中で自分の役割は何かを考えて重要なポジションを担っている。「オレがやってやる」みたいな感覚なしで動いているというか。
そういう意味では非常に紳士だし、前に出るタイプではないですけど存在感があって、とっても優しい男だなっていう印象があります。強引に引っ張っていくんじゃなく、自然と周りがついていくっていうようなタイプですよね。
――前作と違い、case 2ではウィリアムとシャーロックの関係が主に描かれています。シャーロックを演じる北村諒さんの印象についても聞かせてください。
今まで彼とは、本当にたくさんの作品をともにしてきました。かなり若手の頃から見てるので、ここ近年はメキメキと芝居に人間味が溢れてきてよくなってるというか。ビジュアルもさることながら、非常に男らしい人間になってきたなという印象がありますね。成長し続けている魅力が彼にはあるなと感じています。