佐久間由衣インタビュー『ヴェニスの商人』「もう一度舞台に飛び込んでみようと前向きな気持ちになれた」（後編）

2024.11.28

INTERVIEW

2024年12月6日、日本青年館ホールにて舞台『ヴェニスの商人』が開幕します。

時代を超えて愛され続ける数々の名作を残した、演劇史の巨人、ウィリアム・シェイクスピア。なかでも『ヴェニスの商人』は、深い人物描写と痛快な展開で圧倒的な人気を誇る最高傑作の一つです。現代演劇界で最も実力のある演出家の一人・森新太郎さんが、古典の常識を覆す新しいアプローチによって、歴史ある名作をどのように現代のエンターテインメントに生まれ変わらせるのか、期待が高まります。

主演を務めるのは、シェイクスピア作品初挑戦となる草彅剛さん。稀代の悪役・シャイロックをどのように演じるのか、注目を集めています。バサーニオ役に野村周平さん、ポーシャ役に佐久間由衣さん。グラシアーノ役に大鶴佐助さん、ネリッサ役に長井短さん、ジェシカ役に華優希さん、ロレンゾー役に小澤竜心さん、アントーニオ役に忍成修吾さんと、豪華な顔ぶれが揃いました。

THEATER GIRLでは、佐久間由衣さんにインタビュー。後編では、役者人生10年間で転機となった作品や言葉などを伺いました。

インタビュー前編はこちら

『てにあまる』で初めて舞台に立たせてもらったことは大きな経験

――本作のタイトルにちなみまして……もしも佐久間さんが商業を営むとしたら、どんなジャンルに興味がありますか？

お弁当屋さんとか、楽しそうですね。お弁当って、温もりが感じられていいなと思うんです。食事はとても大切ですし、食事からもらえるエネルギーって大きいので。キッチンカーで、海辺とかで気まぐれに開店する、みたいな形がいいかな（笑）。

――普段から、食には気をつけていらっしゃるのでしょうか。

私、食べることが大好きなので。基本的に嫌いな食べ物はないのですが、できる限り多くの野菜とかタンパク質とか、いろんな栄養素をバランスよく摂って、キチンと活力になるように心がけています。

――役者デビューから10年。転機になった作品や出来事、出会いなどがあったら教えてください。

いっぱいありますね。うーん、なかでもやっぱり、『てにあまる』で初めて舞台に立たせてもらったことは大きな経験になりましたし。（共演者の）柄本明さん、藤原竜也さん、高杉真宙くんと出会えたことも、すごく大きかったです。柄本さんからは、ホントにいろんなことを教えていただいて。その本当の意味というか、答えはまだわからないのですが、“あの言葉は、こういうことだったのかな？”とか、今でも柄本さんの言葉がふとよぎるときがあるんです。長い時間を一緒に過ごすことができて、いろんな言葉をいただけたことは、何よりの財産ですね。

――柄本さんの言葉で、特に心に刺さったものというと？

「結局、俺たちって労働者なんだよな」と、ボソッとおっしゃったことがあって。芸能やお芝居の世界って、きらびやかな印象がありますし、実際にそういう瞬間もあるとは思うんですけど、生業としてのお芝居というのは、毎日淡々と粛々と、役と向き合って出力していくという日々に過ぎないと。その言葉によって、ちゃんと地に足をつけて仕事をしなければという気持ちになれます。

あと、「役の気持ちなんてわからないんだよな」という言葉もすごく刺さりました。（役の気持ちを）わかった気になってもいけないし、わからないからこそ、“知りたい”という探求心を持って知ろうとすることが大事なのかなって。柄本さんからいろんな言葉をいただいて、いろんなことを考えましたし、毎日しっかり大事に生きていこうと思いました。

――最後に、本作の上演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

私自身、舞台を観にいくというのは、とても敷居の高いイメージがあります。いろんな生活スタイルの方がいらっしゃるし、劇場への往復も含めると、何時間もその人の人生をいただくことになる。それは、すごく特別なことだと思うので。来てくださる人たちの期待にしっかりと応えられるように、一生懸命お稽古をがんばります。シェイクスピアというワードには、非日常というイメージがありますよね。もちろん演劇という非日常ではあるのですが、決して難しくないですし、今の時代からかけ離れたお話でもないので。この『ヴェニスの商人』をきっかけに、シェイクスピア作品に触れてもらえたらいいなと思います。