中河内雅貴インタビュー ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』 「エネルギーを交換し合えるところが舞台の良さだと思う」
2015年にブロードウェイで初上演され、アジア系ミュージカルの革新的な作品のひとつとして高い評価を得たミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』。本作の日本人キャストでの初上演が実現する運びとなり、3月12日の東京公演を皮切りに、名古屋、大阪を巡ります。
作中で描かれるのは、第二次世界大戦下のアメリカにて「日系人である」という罪で強制収容所へ送られた日系人家族の実話を元にした物語。“祖国”への忠誠やアイデンティティというテーマと共に、普遍的な家族愛もまた、重要な要素として折り込まれています。
本作でフランキー・スズキ役を演じるのは、ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』やミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season1など数々なミュージカルや舞台作品、映像などで活躍している「中河内雅貴(なかがうち・まさたか)」さん。今回のインタビューでは中河内さんに、出演が決まった時の心境やフランキー役としての注目ポイント、本作への意気込みなどについてじっくりと伺いました。
自分ととても似ているフランキー・スズキ役との出会い
――本作へフランキー・スズキ役での出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
もう10年ほど前に僕を大きなミュージカルに引き上げてくださった方から、今回お話をいただきまして、「この役は、中河内にぴったりだから」と、お声掛けくださったんです。僕としては、恩人の方からそんな風に言っていただける役に巡り合えたことがもうすでに胸アツで(笑)。その方のためにもしっかりと演じたいなと思いました。
お話をいただいたときは、まだ作品自体は知らなかったのですが、この方が言うなら間違いないなと。それからいろいろと調べて、ブロードウェイ公演も映像で観させていただいて、確かに自分にぴったりな役だと思いました。自分の信念を貫いて生きているという部分は、自分ととても似ているんじゃないかと思いましたね。
――実話に基づいた、それも戦時下のアメリカを生き抜いた日系の人々を描く物語となりますが、それを日本で初上演するにあたって、どんな思いで臨もうと考えていますか?
これがめちゃくちゃ難しくて。僕らは純日本人であって、単に移民の話だったらまだ想像もつくんですけど。今回は日系アメリカ人の役ですし、ましてや一世、二世、三世ってあるじゃないですか。それぞれの想いも違いますし、ましてや戦禍の中で、容姿は日本人だけども、自分たちではアメリカ人だと思っている。そう思って生きてきたのに、迫害を受けたりもして「何故自分たちはアメリカ人なのに、ここまで迫害が及ぶの?」と感じることもあったと思います。
でも、決して日本のことを悪く思っている訳ではなく、日系としてきちんと祖国の日本も大切に思いながら、アメリカも母国として大事にしている。ただ、自分にそういった経験がないので、役作りはめちゃくちゃ難しいなと思っています。まだ稽古も始まっていないですから、直接肌で感じることもできないので。なので今は、いろいろな情報や資料を集めて、自分の中に落とし込んで、それを呼吸できるようにしたいなと思っています。ただ、本を開けてみてそんなに安易にできる作品ではないなと感じてはいます。
――今は、資料を集めて作品の背景についていろいろと調べられている最中なんですね。
今はそれしかできないですね。あとは、キャストの皆様もきっとそうされると思うので、キャスト同志のキャッチボールの中でいろいろと変化を楽しみながら、果敢にトライしてみようかなと。いろんな引き出しと感情を用意しておかないと、ちょっと大変だろうなとは思っています。