柿澤勇人インタビュー 『ハルシオン・デイズ2020』 「見終わった頃には「生きなきゃ」ってポジティブな気持ちが湧き上がる」
劇作家の鴻上尚史さんが作・演出を手がける『ハルシオン・デイズ2020』が、東京・紀伊國屋ホール、大阪・サンケイホールブリーゼで上演されます。2004年の初演、2011年のロンドン公演を経て、新たに彩られる鴻上ワールド。2020年版に書き換え、待望の再演です。
同作で主演を務めるのが、俳優の「柿澤勇人(かきざわ・はやと)」さん。ミュージカル『フランケンシュタイン』で観客を魅了し、現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』でも注目を集めるなど、舞台・映像の枠を超えて活躍する実力派俳優です。
すっかり秋となった10月上旬。THEATER GIRL編集部は、柿澤さんにインタビューを敢行。上演にあたっての思い、稽古中のエピソード、自粛期間を経て起きた心境の変化など、じっくり語っていただきました。
鴻上作品は「眺めているうちに心に染み入ってくる」
――本公演の公式サイトに「また舞台で芝居が出来るんだ、しあわせだな」とコメントを寄せられていますが、出演が決まった際の率直なお気持ちを改めて聞かせてください。
鴻上(尚史)さんとやる予定だった、ミュージカル『スクールオブロック』、その前に『「ウエスト・サイド・ストーリー」Season3』と、どちらのミュージカルも全公演中止になって。今年予定していた舞台の3本中2本が消えたんです。「ああ、今年は舞台のお芝居はもうないんだな……」と思っていたところで、鴻上さんから今回のお話をいただいたので単純に嬉しかったですね。
しかも、今作で上演する紀伊國屋ホールは、まだ僕が立ったことのない舞台。見るほうとしては何回も足を運んでいて、大好きな空間なんです。だから、「あそこに立って芝居ができるんだ!」って喜びもひとしおでした。
――その点も含めて「しあわせ」と感じられたんですね。今回の舞台で作・演出を務める鴻上尚史さんの生み出す世界観については、どんな印象をお持ちですか?
台本を読んで感じたのは、決して押し付けないってところ。「地球照(三日月の暗い部分が、地球の光に照らされて、うっすらと見える現象)」とか「泣いた赤鬼」とかってものが登場人物4人のメタファーだとしたら、それに共感してもしなくてもいい。何気ないもので、大切なことに気づかせてくれるのは鴻上さんらしさなのかなと思いました。
『「地球照」の影の部分が、オレたちなんだよね』みたいなことは絶対に言わない。あっただけのことを提示して、観ている人に「どう思います?」って投げかけるというか。眺めているうちに心に染み入ってくるようなつくり方ですよね。
題材は重たいテーマなんだけど、笑いどころもたくさんあるし、見終わった頃には「生きなきゃ」ってポジティブな気持ちが湧き上がる。テンポよくエネルギーをもって駆け抜けるような爽快さは、鴻上さんならではの世界だと感じました。