宮﨑秋人×綱啓永インタビュー 『Too Young』「“リベンジのチャンス”があるのは舞台だけ」（後編）
2025年11月13日(木)より東京・紀伊國屋ホールにて、ワタナベエンターテインメント Diverse Theater 第二弾 舞台『Too Young』が上演されます。
「Diverse Theater」は、「多様さ」をコンセプトに、様々なクリエイターやプロデューサーとのコラボレーションを通じて、既存の演劇の枠に囚われない表現を探求するプロジェクト。
今作「Too Young」では、独特の世界観で注目を集める劇団チョコレートケーキの古川健さんが脚本を手がけ、演出は同劇団の日澤雄介さんが担当し、ワタナベエンターテインメントとの強力なタッグで物語を作り上げます。そして、物語の舞台となるのは、現代の若者文化を象徴する場所として知られる新宿歌舞伎町の “トー横”。このリアルな舞台設定が、物語にさらなる深みと現代性をもたらします。
主演を務めるのは数々の舞台に出演し、実力派俳優として活躍の場を広げている宮﨑秋人さん。共演には映画、ドラマなど様々な作品に出演されている綱啓永さん、そして確かな存在感を放つ朝海ひかるさんらが顔を揃え、複雑な人間模様が織りなすドラマを鮮やかに描き出します。
THEATER GIRLは、宮﨑秋人さんと綱啓永さんにインタビュー。後編では、本作で“挑戦したいこと”、作品にちなみお二人にとっての“居心地のいい場所”、 舞台の面白さを感じる瞬間など、たっぷりとお聞きしました。
今回の役を“色気のある男”にできたら
――舞台は稽古期間もあり、ご自身とじっくり向き合う時間も増えると思いますが、今回、個人的に挑戦したいと思っていることはありますか？
宮﨑：そうですね……今回の役を“色気のある男”にできたらいいなと思っています。自分はこれまで、どちらかというと好青年や、ちょっと三枚目寄りの役が多くて。以前、社長から「普段は色気があるのに、役になると急になくなるよね」と言われたことがあるんですよ（笑）。
確かに、役になると自分というパーソナリティがどこかに行ってしまうところがあって。だから今回は、自分の“肉体と精神”をちゃんと使った役作りをしてみたいです。役としても、人間としても“色っぽさ”を感じさせられるように挑戦したいなと思います。
――綱さんはいかがですか？
綱：僕は、今回初めて自分より年下のキャストが多い現場なんです。これまでは先輩ばかりの座組が多かったので、こうして後輩たちがたくさんいる環境が新鮮で。
秋人さんが座長として引っ張ってくださる中で、僕自身も“その下の世代を引っ張り上げる存在”になれたらいいなと思っています。そういう関わり方ができたら、自分の成長にもつながる気がするので。
宮﨑：役柄的にもお兄ちゃんだもんね。
綱：そうなんですよ（笑）。ちゃんとお兄ちゃんします。弟でもあり、次男坊でもあり……でも今回はしっかり“お兄ちゃん”として。
宮﨑：カンパニーの雰囲気も、これからどんどん温まっていきそうだよね。まだ初舞台のメンバーも多いし、きっとみんな緊張していると思うけど。
綱：そうですね。経験豊富な秋人さんが頼りにされすぎて、僕が寂しくならないように（笑）、僕も“頼られる側”でいられるように頑張ります。
宮﨑：いやいや、しっかり頼らせてもらいますよ（笑）。
家族のいる場所が、心からリラックスできる空間
――本作の“トー横”のように、お二人にとって“居心地のいい場所”はありますか？
綱：僕はやっぱり、家族と友人がいる場所ですね。僕にとっては家族のいる場所が本当にアットホームで、心からリラックスできる空間です。
あとは友人と一緒にいる時間も好きです。特にサウナが好きで、友人とサウナに行っているときが一番心が緩む瞬間ですね。俳優仲間とも地元の友人ともよく行きます。
――宮﨑さんはいかがでしょうか？
宮﨑：山梨県によく行きます。特別“山梨が好き”というよりも、よく行く場所がたまたま山梨が多いんです。お気に入りの温泉も蕎麦屋もキャンプ場も山梨にあって。気づけば一番肌になじむ場所になっていました。
――第二の故郷のような感じなのでしょうか？
宮﨑：そうですね。ちょっと住んでみたいなと思っています。車でも1時間半くらいで、電車でも行きやすい距離なので。そういう意味では“もうひとつの地元”みたいな感覚かもしれません。
――本作のタイトル「Too Young」にちなみ、ご自身が「自分は若いな」と感じる瞬間はありますか？
綱：そうですね……実際、若いんですけど（笑）。特に、「流行りは常に押さえておきたい」というマインドがあって。その気持ち自体が“若いな”と思います。やっぱり、どんなに年齢を重ねても、流行にちゃんと対応したいなと思うんですよ。
ただ、ここ数年でさらに若い世代には敵わないなと思う瞬間が増えました。そのたびにちょっと悔しくなるんですけど（笑）。でも、いつまでも“負けたくない”という気持ちはあるので、何歳になっても若い心は持ち続けたいです。
――逆に、「ついていけないな」と思う瞬間もありますか？
綱：ありますね、たまに（笑）。本当にたまにですけど。
――宮﨑さんはいかがですか？
宮﨑：うーん……「若いな」と思う瞬間は、ないですね（笑）。若く“ありたい”とは思っていますけど、「若いな」と感じることはあまりないです。 流行りもまったく分からないし、かといって「流行を知らない自分かっこいいでしょ？」っていうマインドでもないんです。知りたいんですけど、本当にわからなくて（笑）。この前やっと「BeReal」を教えてもらいました（笑）。
“リベンジのチャンス”があるのは舞台だけ
――改めて舞台のどんなところに楽しさや面白さを感じていますか？
宮﨑：僕が先に話すと綱が話しづらくなると思うので（笑）。
綱：優しい～！
宮﨑：いやいや、僕のほうが経験しているから（笑）。
綱：僕が感じるのは“毎回違うものができる”ということです。稽古場でもそうですが、特に本番はお客様が目の前にいる。映像作品だとカメラとスタッフさんしかいないので、生の反応を直接感じられるというのは舞台ならではだと思います。
お客様の反応が悪いときもあれば、すごく盛り上がるときもある。そうすると自分たちもどんどんテンションが上がって、作品が良くなっていく。その“生のやりとり”こそが舞台の醍醐味だと思います。今回も紀伊國屋ホールでどんな空気が生まれるのか、今から楽しみです。
――宮﨑さんはいかがでしょうか？
宮﨑：稽古をしていて思ったのですが、「今日やったシーンを明日もう一度できる」というのは映像とまったく違うところだなと感じます。演出家さんのフィードバックもあるし、自分でも反省して、また翌日に挑戦できる。そういう“リベンジのチャンス”があるのは舞台だけだなと。
もちろん「昨日より今日を良くしよう」と思っても、なかなか難しいんです。今日うまくいったことを明日も同じようにできるとは限らないし。そこが大変だけど面白いところでもありますね。
――日々変化していくところが魅力なのですね。
宮﨑：そうですね。ちょっとした違いが積み重なって、今の芝居になる。自分が何かを意識して変えたというより、自然とそうなっていく感覚が面白いです。
あとは……単純に“ご飯に行ける”のも楽しいです（笑）。舞台だと稽古も本番も毎日同じ時間を過ごすので、みんなでご飯に行く機会が多いんですよ。撮影だとスケジュールがバラバラで、なかなか一緒にいられないけれど、舞台は全員で同じ時間を共有する。そういう“一体感”があるのもうれしいですね。チームとして一緒にものづくりをしている感覚があって、それも舞台ならではの魅力だと思います。
――稽古や撮影でお忙しい日々を過ごされているかと思いますが、疲れたときのリフレッシュ方法やマイブームなどはありますか？
綱：僕はずっとサウナですね。もう何年も変わらずサウナ一筋です。行けるときは毎日でも行きたいくらいで。一人で行くというより、友人と一緒に行くことが多いので、スマホも触れないし、ただ同じ時間が過ぎていくのがすごく好きなんです。
普段はスマホをすぐ触ってしまうタイプなので、「スマホ依存症だな」と思う瞬間もあります（笑）。そういう意味でも、スマホを手放して“何もしない時間”を過ごせるのがすごく貴重で、心も体も整う感覚がありますね。
――友達とご飯に行くような感覚で、サウナに行く感じなのですね。
綱：まさにそうです。話しながらゆっくり汗をかいて、整って。最高のリフレッシュ時間です。
――宮﨑さんはいかがでしょうか？
宮﨑：僕はやっぱりキャンプですね。リフレッシュといえばキャンプ。休みの日になると行きたくなります。ソロキャンプもしますけど、事務所の先輩と2人で行くことも多いです。車にはいつでもキャンプ道具を積んでいます（笑）。
泊まってご飯を作って、昼からお酒を飲んで、日が暮れたら眠くなる――そんな時間が最高です。自然の中で過ごすことで、心がリセットされる気がします。
――では最後に、本作を楽しみにしている皆様へ、メッセージをお願いします。
綱：まだ稽古が始まって数日ですが（取材時）、ここからキャスト全員で魂を込めて作り上げていきます。作品では、トー横キッズだけではなく、大人たちの葛藤や悩み、そして成長も描かれています。観てくださる方が自分と重ね合わせて、「私も頑張ろう」と思えるような、何かを持ち帰っていただける作品になると思いますので、ぜひ一度といわず、二度三度と観に来ていただきたいです。紀伊國屋ホールでお待ちしています。
宮﨑：本作には、トー横キッズなども登場しますが、社会問題を扱ったドキュメンタリーのような堅い作品というよりも、すごく前向きなメッセージが詰まった舞台です。ちょっと疲れたなとか、人生の意味を考えたいなと思ったときに、ふらっと観に来てもらえたらうれしいです。新宿で上演される作品なので、劇場を出たあとに「新宿の景色がちょっと違って見える」――そんな体験をしてもらえる舞台にしたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文：THEATER GIRL編集部
撮影：梁瀬玉実
公演概要
舞台『Too Young』
日程：2025 年11 月13 日（木） ～ 11 月24 日（月・祝）
劇場：紀伊國屋ホール
脚本：古川健（劇団チョコレートケーキ）
演出：日澤雄介（劇団チョコレートケーキ）
美術：池宮城直美
照明：松本大介
音響：青木タクヘイ
衣裳：髙木阿友子
ヘアメイク：水﨑優里
演出助手：長町多寿子
舞台監督：荒智司
宣伝美術：菅原麻衣子
宣伝写真：金井尭子
宣伝衣裳：丁瑩
制作：大迫彩美、桑原涼大
プロデューサー：貝塚憲太、北原ヨリ子（ycoment）
エグゼクティブプロデューサー：渡辺ミキ
主催・企画・製作：ワタナベエンターテインメント
【出演者】
宮﨑秋人、綱啓永、伊礼姫奈、岡島遼太郎、大石愛陽／玉置孝匡、朝海ひかる
【公式ホームページ】
https://tooyoung.westage.jp/
【提携】
紀伊國屋書店
