林翔太インタビュー『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』「この時代ならではの空気を共有できたら」(前編)
2026年1月2日(金)より東京・三越劇場、1月24日(土)より京都・南座にて『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』が上演されます。
令和での初上演では、劇団新派の演出家・齋藤雅文氏の補綴・演出により作品をさらに練り上げ、『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』と題して届けられます。笠置シヅ子を演じるのはキムラ緑子さん。様々な舞台や映像作品などで圧倒的な存在感を見せ、ミュージカルやライブにも出演経験があるキムラ緑子さんが“ブギの女王”に挑みます。
笠置シヅ子の数々の出会いや試練を乗り越えるドラマチックな人生を、「東京ブギウギ」をはじめ「ラッパと娘」「ジャングル・ブギー」など珠玉の名曲を織り交ぜて上演。
そして、早くからシヅ子の才能を見出し、シヅ子の生涯の友となった作曲家・服部良一役を松村雄基さん、周囲に反対されながらも愛をつらぬいた最愛の人・花森英介役を林翔太さんが演じます。
THEATER GIRLは、花森英介役の林翔太さんにインタビュー。前編では、本作への出演が決まった時のお気持ちや役柄の印象、主演のキムラ緑子さんの魅力など、たっぷりとお聞きしました。
緑子さんとまたお芝居ができることが楽しみ
――まずは、本作への出演が決まった時のお気持ちからおうかがいできますでしょうか。
誰もが知っている題材ですし、主演が(キムラ)緑子さんということで、「本当に僕でいいのだろうか」と思ったほどでした。やっぱりプレッシャーは感じましたね。
ただ、緑子さんと久しぶりに共演できますし、松村(雄基)さんとも再びご一緒できることがとても楽しみでした。また、演出の齋藤(雅文)さんは、僕が芝居を始めたばかりの頃に演出をしていただいた方なので、久々にお会いできる喜びもありますが、あれから何年も経っている分、成長した姿を見せなければというプレッシャーも感じました。
――プレッシャーを感じつつも、楽しみな気持ちもあったのですね。
そうですね。でも、やっぱり一番は、緑子さんとまたお芝居ができることが楽しみでした。プライベートでも偶然お会いすることがあったり、南座で緑子さんが出演されている舞台を観に行かせていただいたこともあったりと、ご縁を感じていたので。そんな中で、また恋人役としてしっかりとお芝居ができるのは、本当にうれしいですね。
――本作では、笠置シヅ子最愛の人・花森英介役を演じられますが、役柄についてはどのような印象をお持ちですか?
身分や立場に差のある中で生まれる恋になりますし、当時は今よりもずっと難しい時代だったと思います。ただ、そうした壁を乗り越えて一緒になる姿は、今の時代の方が見ても共感できる部分があるのではないのかなと。
戦後のお話でもあるので、その時代の空気感をきちんと伝えられるようにしたいですし、若いお客様にも届くようなエネルギーのある作品にしたいです。自分の役も、エネルギッシュで少し癖のある、印象に残る人物にできたらと思っています。
誰かが歌って踊っている場面を見ると踊りたくなる
――本作では、「東京ブギウギ」をはじめ、珠玉の名曲を織り交ぜて上演されるとのことですが、林さんご自身も歌唱やダンスシーンなどはあるのでしょうか?
僕は、歌ったりダンスをしたりする役ではないのですが、演出の齋藤さんが「踊っているところを見たい」とおっしゃってくださっていて、どうにかそういったシーンを入れられないか悩まれているようでした。僕自身は踊るのが好きなので、もし実現したらうれしいなと思っています。
ただ、ダンサーの皆さんもいらっしゃいますし、振付には前田清実さんが入られるので、もし実際にやることになったら、中途半端ではなく、汗をかくくらい思いきりやりたいですね。
――やはりご自身でも踊りたいというお気持ちなのですね。
踊りたいですね。ストレートプレイの舞台が続くと、歌やダンスのシーンがない分、普段はあまり意識しなくなるのですが、誰かが歌って踊っている場面を見ると、「自分もやりたい」と思ってしまいます。やっぱり、自然と踊りたくなりますね。

その姿を間近で拝見できるのは、役者として贅沢な経験
――「東京ブギウギ」をはじめ「ラッパと娘」「ジャングル・ブギー」など、多数の名曲が登場する本作ですが、音楽面での見どころについてもお聞かせいただけますでしょうか。
以前、緑子さんと共演した際は、緑子さんと渡辺えりさんの後ろで一緒に歌って踊らせていただく形でしたが、今回は緑子さんのオンステージになりますよね。ただ、曲数もかなり多くなると思うので、稽古は相当大変になるのではないかと思います。
それでも、稽古の段階からその姿を間近で拝見できるのは、役者として本当に贅沢な経験です。本番で舞台に立たれた時の、エネルギーに満ちあふれた姿を見ることができるのも、とても楽しみです。
――役者として、緑子さんのどんなところを尊敬されていらっしゃいますか?
一言で言うなら、天才ですね。その一言で片付けてしまっていいのか迷うほどですが、前回共演した時から、その凄さを間近で感じていました。当時の僕は右も左も分からない状態でしたが、今回は少し余裕を持って、改めて学ばせていただけるのではないかと思っています。そうした時間を過ごせることも含めて、今からとても楽しみです。
――以前、NHKの連続テレビ小説でも笠置シヅ子さんの物語である『ブギウギ』が放送されていましたが、そのときはご覧になっていらっしゃいましたか?
観ていましたが、今回の『わが歌ブギウギ』のお話をいただいたのは最近だったので、「あの役を演じるんだ」と思いながら観ていたわけではなかったんです。服部良一さんの知っている曲も多く、音楽としても純粋に楽しいなと感じていました。
――本作は、音楽面も大きな魅力ですが、もう一つの軸として「一生に一度の大恋愛」も描かれます。その部分を緑子さんと二人で作り上げていくことになりますね。
お相手が緑子さんなので、正直なところ怖さもあります。ただ、まったく知らない関係性ではないので、思いきってぶつかっていけるのではないかと思っています。
――遠慮せずに臨めそうですか?
はい。前回ご一緒してから、さまざまな先輩と共演させていただく中で、経験を重ねるごとに、芝居では遠慮をしなくなってきて。芝居の中では、自分自身ではなく「役」として存在できるので、思いきり表現できるようになったと感じています。なので、今回は緑子さんも驚くようなアプローチができたらいいなと思いますね。

自由に芝居ができるようになった
――さまざまな経験を経て、お芝居に対して変化があったとのことですが、普段からお芝居に対して意識されていることはありますか?
やっぱり、「芝居は一人ではできない」ということを強く感じています。もちろん、ある程度の準備は自分の中でしますが、それ以上に大切なのは、自由にやることだと思うんです。
以前、『陰陽師 生成り姫』という作品で演出家の鈴木裕美さんとご一緒した時のことが、特に印象に残っています。とても厳しく指導を受けたのですが、稽古初日に「これをやってきなさい」と宿題を出されて。台本の中で、相手のセリフを聞いた時に、自分の役がどう感じたのかを、すべてセリフとして書き込むという課題でした。
それをすべてやったうえで次の稽古に臨んだところ、最初のように言われることはなくなって、認めていただけた感覚がありました。もちろん細かな指摘はありましたが、その稽古でしっかりとベースを作れたことで、本番では自由に芝居ができるようになったと感じています。
――その経験がお芝居に変化をもたらしたのですね。
そうですね。初日の前には、わざわざ楽屋まで来てくださって、「今日からは自由に、調子に乗ってやっていい」と声をかけてくださいました。僕自身、どちらかというと真面目な性格で、言われたことをきちんとやろうとするタイプなので、そうした部分も理解してくださっていたのだと思います。
ほかの演出家の方や、これまでご一緒してきた皆さんからも、その点については信頼していただけて、「あとはどれだけ自由にできるかだと思う」と言ってもらえるようになりました。その言葉通り、調子に乗ってやってみようと思って(笑)。
そこから、型にはまりすぎず、相手のセリフを受け取って、感じたままに柔軟に返す芝居ができるようになってきた気がします。その場で生まれる空気を大切にすることは、今も強く意識していますね。
取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:遥南 碧
公演概要
わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-
作:小野田勇
補綴・演出:齋藤雅文
出演:
キムラ緑子、松村雄基、林翔太、桜花昇ぼる、曽我廼家寛太郎、一色采子、惣田紗莉渚、賀集利樹
【東京公演】
2026年1月2日(金)~20日(火)
三越劇場
【京都公演】
2026年1月24日(土)~2月1日(日)
南座
製作:松竹株式会社
チケット好評発売中
公式サイト:
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/mitsukoshi_2601/
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/20260124minamiza/
