翼和希インタビュー「レビュー夏のおどり」「夏の暑さに負けない、熱い舞台をお届けします」（前編）

2025.08.21

INTERVIEW

2025年8月22日（金）より新橋演舞場にて、OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり」が上演されます。

1922年に誕生したOSK日本歌劇団は、今年４月に劇団創立103年目を迎えた。脈々と受け継がれてきた伝統を守りながら歴史を受け継ぎ、1928年には東京進出を達成。2014年には新橋演舞場で初めての公演を行うなど東京でも多くの観客から愛され続けています。

今回は、待望の翼和希さんのトップスターお披露目公演となり、花柳寿楽さん構成・演出・振付の和物ショー、中村一徳さん（宝塚歌劇団）作・演出の洋物ショーの豪華２本立てでトップスター就任を寿ぎます。

THEATER GIRLは翼和希さんにインタビュー。前編では、トップスターお披露目公演への思い、和物と洋物の二部構成となる本作の見どころについてたっぷりとうかがいました。

インタビュー後編はこちら

劇団の玄関にならなければならない

――本作は、翼さんのトップスターお披露目公演になりますが、改めて公演への思いを伺えますでしょうか。

昨年9月に就任させていただいてから約8か月が経ち、こうしてお披露目公演をさせていただけることは大変ありがたいです。私個人のお披露目公演というだけでなく、新しい体制になったOSKのお披露目でもあると、中村一徳先生からもお言葉をいただきました。まさにその通りだと思っています。

歌劇は代が変わりながら歴史をつないできました。先輩たちの思いを受け継ぎつつ、新体制として一歩踏み出したOSKをお見せできる作品になっていると思います。その姿を皆様に楽しんでいただきたいという気持ちがあります。松竹座での10日間の公演を走り抜ける中で学んだことや、新しく見つけた自分への課題をしっかり消化した状態で、「レビュー夏のおどり」に挑みたいと思っています。

――トップスターになってから挑むお気持ちは、以前とは違った感覚がありますか？

舞台に対しては以前と変わらず、より良い舞台をお届けしたいという気持ちが強くなるばかりです。ただ、責任ある立場になったことで、劇団の玄関にならなければならないという意識は大きいです。そのため、自分の中で腹をくくった部分はあります。とはいえ、舞台への向き合い方自体は変わらずに臨めていると思います。

――背負っていくという思いは、ご自身の中でどのように受け止めていますか？

プレッシャーと感じるのではなく、良いプレッシャーとして捉えています。もっと良くしていきたい、そのためにはどうすればいいかというプラスの悩みを持てている状態です。そのためにも、自分の中で緊張感は必要不可欠だと思っています。その緊張感こそが、私にとっての「ピリッとした」感覚なのだと思います。

すべてが見どころです

――本作は「和」と「洋」の二本立て公演ということですが、それぞれの見どころを伺えますか。

和物の第一部は『翔～Fly High～』というタイトルで、“花鳥風月”四つの場面とフィナーレがあります。OSKの王道である“チョンパ”で幕を開けるのではなく、幕が開くと江戸の賑やかなお祭りが始まるという構成になっており、そこがまず見どころです。粋でいなせな、かっこいいオープニングだと思います。

私は今回、初めて“木遣り”に挑戦し、約10年ぶりに青天をつけて“かしら”を務めています。芸妓、手古舞など、さまざまな役が登場し、それぞれの役として踊る姿がとても粋でかっこいいです。同じ振付でも役によって所作が少しずつ違い、その違いが魅力的だと思います。

鳥の場面は、言葉を発さずに物語を伝えるところが日舞と親和性が高く、内容はファンタジーです。観ているだけで内容が理解でき、楽しめる場面になっていると思います。千咲が演じる姫様と私の鳥との恋模様も表現できたらと考えていますし、回り盆やせり上がりなどの舞台機構も加わるので見応えがあります。音楽とも相まって、ひとつの物語を観ているような感覚になる一場面です。

風の場面では、全員で和楽器を演奏し、お客様にもご参加いただくところがあります。松竹座公演のときには、その場を一緒に作り上げる一体感を強く感じました。ぜひ皆様にも参加していただき、一緒に盛り上げていただけたらうれしいです。

続く月の場面は、平安時代を舞台にした雅やかな構成で、ここでも言葉を使わず踊りだけで物語を伝えます。三組の恋模様が繰り広げられ、それぞれの所作に意味があります。観る方は関係性を想像しながら楽しめるのではないでしょうか。曲も非常に雅で、今回の中でも特に“和”の雰囲気を感じられる場面です。私自身、稽古場で観ていて大好きな場面なので、ぜひご覧いただきたいです。

一幕最後のフィナーレは、まさにOSKらしい日舞のフィナーレです。未来に向かって羽ばたいていく姿を描いており、一幕は終わりますが、これからも前へ進み続けていくという決意が見える場面になっています。すべてが見どころです。

――今回、下駄ップにも挑戦されるとのことですね。

私はタップが大好きで、OSKに入って嬉しかった理由の一つが、タップと日舞が学べることでした。下駄ップは、映画『座頭市』のタップシーンが大好きで、最後の場面を何度も観るほどでした。まさか今回、自分が挑戦できるとは思っていなかったので、本当にうれしかったです。お願いしたわけでもなく、偶然いただけた機会でした。

――これからご覧になるお客様も楽しみにされているかと思います。

タップは無条件に観ている方を楽しい気持ちにさせると思います。音が鳴ることでパフォーマンスとしても見応えがありますし、下駄を履いて行うタップは視覚的にも楽しめるはずです。ぜひご注目ください。

――第二部の『The Legendary!』についても見どころを伺えますでしょうか。

第二部は、OSKを心から愛してくださっている中村（一徳）先生が、8年ぶりにOSKの演出を手がけてくださいました。下級生一人ひとりに至るまでしっかりとピックアップし、目立つ場面をそれぞれに用意してくださいました。その結果、洋物のパートだけで70分という構成になり、全ての場面が見ごたえたっぷりです。

誰か一人が特別に目立つわけではなく、全員が大きな役割を与えられています。先生の一人ひとりへの深い愛情と、誰よりもOSKのことを見てくださっているお気持ちが伝わってきます。それは演じている私たちにも届き、お客様に届けたいという先生の思いを強く感じます。私たちもその思いをしっかり消化して、舞台からお客様へ届けたいと思っています。

さらに、耳馴染みのある楽曲がたくさん登場するので、歌劇をあまりご覧になったことがない方でも入りやすい作品です。出演者はずっと歌って踊っているので、何も考えずに純粋に観て楽しめる構成になっています。