アダム・クーパーインタビュー「劇場にいる3時間だけでも幸せを感じてもらえたら」『SINGIN’ IN THE RAIN～雨に唄えば～』（後編）

2021.11.21

INTERVIEW

ミュージカル『SINGIN’ IN THE RAIN～雨に唄えば～』が、2022年1月22日（土）から東京・東急シアターオーブにて、2022年2月18日（金）から大阪・オリックス劇場にて開幕します。

本作は、ミュージカル映画の傑作と言えるジーン・ケリー主演『雨に唄えば』を元に、2011年に英国のチチェスター・フェスティバル劇場で上演されました。主人公ドン・ロックウッド役を演じたのは、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』の出演でも知られるアダム・クーパーさん。その後の2014年、2017年の日本公演でも魅力あふれるドンを演じ、会場を熱気の渦に巻き込みました。

今回THEATER GIRLでは、アダム・クーパーさんにインタビューを敢行。後編では、10年間演じてきたドン・ロックウッドという役に対する新たな発見、日本公演のカンパニーの雰囲気、本作への意気込みなどをお話いただきました。またストーリーにちなんで、アダムさん自身が運命を感じた出会いについてもおうかがいしたので、ぜひお楽しみに。

インタビュー前編はこちら

ドンが深層心理で抱える弱さ、脆さも今回は追求していきたい

――10年間ドン・ロックウッドという人物をアダムさんは追求されてきたかと思うのですが、改めてドンの魅力や、最近新たに知ったドンの発見について教えてください。

ドンもこの10年でとても進化してきていると思っています。今回お稽古期間を長く取れたので、ある意味１から役作りに取り組めまして。ドンはハンサムで、女性にモテる……という映画スターが持っている性質をたくさん持っている魅力のある人物だと思うのですが、今回はドンの弱さ、脆さについてももう少し追求したいなと思ってやってきました。

彼はヴォードヴィルのパフォーマー出身で、それからスタントマンになり現在役者をやっている設定なので、演劇学校を経て役者になっている人とは違います。だから表では映画スターを演じながらも、深層心理では自分に自信がないところがあると思うんです。「ちゃんとした役者ではないのがバレてしまうかも……」と内心ではドキドキしていて。そこでキャシーに出会って「あなたは本物の役者じゃない」と言われるシーンはとても興味深い場面だと思っています。

表面では全てを持っているけれども、才能やキャリアがある周りの人が威厳を持ち始めると、ドンの弱さがすごく出てくるんですね。今回はそういったドンのより多面的なキャラクターが出ると思っているので、それが皆さんにも伝われば嬉しいです。

コズモとの関係でも同じようなことが言えますね。彼は親友のコズモをとても頼りにしていて、コズモが「うまいから大丈夫だよ」と彼に言ってくれるのを期待している。そこもドンの弱さが垣間見える部分だと思います。

劇場にいる3時間だけでも幸せを感じてもらえたら

――本作はサイレント映画からトーキー映画に移行していく様子を描いた作品ですが、現在もコロナ禍という時代の転換期ですよね。だからこそ今公演する意味を感じていらっしゃる部分もあるかと思います。作品を通じて、アダムさんが伝えたいメッセージなどがありましたら教えてください。

原作である映画が上演されたのが、ちょうど第二次世界大戦直後のことでした。当時の人々に、人生に対する希望や喜びを与えようとした目的で本作は描かれています。だからこの作品を今やることはとても重要なんです。

このご時世でいろいろなものをなくしてしまった人、病気になってしまった人、愛する人が亡くなってしまった人……たくさんいらっしゃると思うんですけれども、そういう人たちに希望や喜びを与えられる作品だと僕は思っています。たった3時間……劇場にいる3時間の間だけかもしれませんが、その時間だけは幸せを感じられる作品になっているのではないかなと。この作品を観たあとは、とても気分が良くなった状態で家に帰ってもらえるといいなと思っています。特にこの18ヶ月間、世界中で皆さん大変なときを過ごしたあとなので、皆さんに少しでも元気を与えられたらいいですね。